ニューバリーのクラシック・トライアル
ニューバリー競馬場の春開催は金・土の二日間ですが、パターン・レースが組まれているのは土曜日だけ。3鞍をレース順に回顧して行きましょう。
最初は古馬のジョン・ポーター・ステークス John Porter S (GⅢ、4歳上、1マイル4ハロン5ヤード)。当ブログではずっとこのレース名で通していますが、現在では正式にはドバイ・デューティー・フリー・ファイネスト・サプライズ・ステークス Dubai Duty Free Finest Surprise S と呼ばれています。前者は伝統的な登録名。名前が長ったらしいこともあり、これからもジョン・ポーターで通します。
さてこの日のニューバリーは馬場状態が決め手になりました。発表は good to soft(所により) というもの。good は日本でいう「良」ではなく、馬場に相当量の水分が含まれた状態です。レースの映像を見れば納得されると思いますが、日本なら不良馬場に近い重馬場と見て良いでしょう。
そんなこともあり、 当初登録の7頭から有力視されていた2頭が取り消して5頭立て。一昨年のセントレジャー馬アークティック・コスモス Arctic Cosmos が出走してきましたが、重を苦手とするタイプということもあって2番人気(13対8)と評価を下げています。6対4の1番人気に支持されたハリス・トゥイード Harris Tweed は逆に重馬場を苦にしないタイプ、G戦未勝利ながら堅実にグレード戦で入着を重ねている実績が評価されていました。
ゲートインを控え、トム・クィーリー騎乗のアイ・オブ・ザ・タイガー Eye of the Tiger が騎手を振り落して逸走するハプニング、何とか馬を宥めてスタートが切られます。
レースはライアム・ジョーンズ騎乗のハリス・トゥイードが積極的に逃げ、アイ・オブ・ザ・タイガーが2番手追走。直線入口でハリス・トゥイードがテンポを上げると、先ずアイ・オブ・ザ・タイガーが脱落。続いてアークティック・コスモスも全く精彩を欠き、ウイリアム・ビュイック騎手は馬を追うのを止めてしまいます。(日本では考えられないことですが)
結局はハリス・トゥイードの逃げ切り勝ち。最後方から進んだアライド・パワーズ Allied Powers が一旦は勝馬に並び掛けようとしましたが、結局は差が縮まらず5馬身差の2着。更に3馬身差が開いて3着はブリッジ・オブ・ゴールド Bridge of Gold 。3着と4着アイ・オブ・ザ・タイガーの着差が99馬身、4着と追うのを諦めたアークティック・コスモスとの差も86馬身というのは、如何に馬場の巧拙が出たかの証拠でもありましょう。
ウイリアム・ハッガス師が調教するハリス・トゥイードは、意外にもパターン・レース初優勝。せん馬ということもあり、次走はヨークシャー・カップの予定。最終的には長距離G戦勝ちで出走権利を得たメルボルン・カップが目標だそうです。
続いては1000ギニーのトライアルとなるフレッド・ダーリング・ステークス Fred Darling S (GⅢ、3歳牝、7ハロン)。実はこのレースも正式にはドバイ・デューティー・フリー・ステークス Dubai Duty Free S に替っていますが、伝統的な登録名を使うことにしましょう。
9頭立て。5対2の1番人気は、クィーン・マリー・ステークス(GⅡ)とラウザー・ステークス(GⅡ)に勝ったベスト・タームズ Best Terms 。チーヴリー・パーク・ステークス(GⅠ、5着)の敗戦で無敗記録に終止符を打ちましたが、ここでは実力上位、7ハロンもギリギリ保つだろうという期待です。
レースはそのベスト・タームズがスタート良く飛び出して逃げましたが、残り2ハロンで一杯。スタンドから遠いコースを通ってレディオ・ガガ Radio Gaga が抜けた所に、最後方に待機して徐々に進出したジム・クロウリー騎乗の2番人気(7対2)ムーンストーン・マジック Moonstone Magic が更に外から急襲、レディオ・ガガに3馬身4分の3馬身差を付けて快勝しました。更に9馬身の大差が付いて3着にエレクトロレーン Electrolane 。ベスト・タームズは結局5着敗退です。
勝馬と3着馬は共にレイフ・ベケット調教師の管理馬。ベケット師はこのレース、2005年(ペンキンナ・プリンセス Penkenna Princess)、2010年(パフ Puff)に続いて3度目の優勝となりました。
大柄の馬体を持つムーンストーン・マジックは、2歳時は仕上がらずに未出走。今期初戦の4月13日にレスター競馬場の新馬戦(同様に重馬場、18頭立て)を2着に8馬身差で勝ったばかり。ベケット師によれば、師が管理した同馬の母も大柄で結局は仕上がらずに未出走で終わった由、馬場が重くならないと能力を出せない馬だそうです。
同馬は1000ギニーには登録が無く、仮に追加登録して走っても3連闘(3週間で3回走ること)となるため、ギニーに出走させる積りはないようです。クラシックを狙うとすればアイルランド1000ギニーになるでしょう。
一方、2着のレディオ・ガガには1000ギニー登録があります。リチャード・ハノン師が管理するベスト・タームズは、敗因が苦手の重馬場でも1000ギニーは断念。陣営は、今後は6ハロンを中心に短距離路線を歩む意向を明らかにしました。
最後はグリーナム・ステークス Greenham S (GⅢ、3歳、7ハロン)。これは現在でも同じレース名で開催されています。去年はフランケル Frankel が制してギニーでの主役の座を確立したレースですね。先日のクレイヴァン・ステークスとは違ってGⅡ以上の勝馬にペナルティーが課せられないことも、近年ではギニーの絶好のトライアルとなっている要因でしょう。
今年は残念ながら期待の2頭が出走を取り消してしまいました。スタウト厩舎のテイルズ・オブ・グリム Tales of Grimm 、チャールトン厩舎のトップ・オファー Top Offer 。共に1戦1勝、もちろん重馬場を嫌っての回避です。両馬はギニーに直行すると思われます。
結局5頭立てで行われた一戦、去年のようなスターは見当たりません。8対11の1番人気に支持されたのは、デューハースト・ステークス(GⅠ)4着のブロンテール Bronterre 。二日前のクレイヴァン・ステークスでデューハースト5着のトランペット・メイジャー Trumpet Major が快勝したことも人気の要因でしょう。スタウト厩舎が取り消したため、主戦のライアン・ムーアが予定していたダブス騎手と乗り替わったことも理由の一つ。
レースはスピリチュアル・スター Spiritual Star の逃げ、ブロンテールは2番手で機を窺う展開。逃げ馬がバテると先ずブロンテールが先頭に立ちますが、直ぐにブーメラン・ボブ Boomerang Bob が先頭を奪います。ここで3番手でマークしていた2番人気(3対1)のカスパー・ネッチャー Casper Netscher が思い切り良くスタンド側に進路をスイッチして一気に末脚を爆発。ブーメラン・ボブに1馬身差を付けて優勝しました。更に1馬身4分の3差で3着にブロンテール。その後は18馬身、更に18馬身と開いて、如何に馬場が重かったかを立証する結果になっています。
アラン・マッケーブ厩舎、シェーン・ケリーが騎乗したカスパー・ネッチャーは、2歳時にジムクラック・ステークス(GⅡ)、ミル・リーフ・ステークス(GⅡ)に勝った実績馬。その後ミドル・パーク・ステークス(GⅠ)5着、BCジュヴェナイル・ターフ(GⅠ)8着とGⅠ戦でも闘ってきた強豪です。BCでの敗因は明らかに重馬場で、決して重は得意ではありませんが、この日は実力が勝っていたということでしょう。
早速2000ギニーのオッズも、これまでの40対1から25対1に急上昇しました。
まとめteみた.【ニューバリーのクラシック・トライアル】
ニューバリー競馬場の春開催は金・土の二日間ですが、パターン・レースが組まれているのは土曜日だけ。最初は古馬のジョン・ポーター・ステークスJohnPorterS(G、4歳上、1マイル4ハロン5