2016オークス(優駿牝馬)馬のプロフィール

今週は書いておきたい記事が山積みで、やっと日本競馬に辿り着きました。と言っても日本はクラシック馬の血統だけに限っていますから、今回のオークスと来週のダービーが終われば秋まで出番はありません。

今回はオークスを1番人気で制覇したシンハライトを取り上げます。ところでシンハライト、海外での表記は「Sinhalite」となっており、母のシンハ Singha とは異なっているので注意が必要かも。
シンハライトは父ディープインパクト、母シンハリーズ Singhalese 、母の父ジングシュピール Singspiel という血統。

最初に父ディープインパクトですが、桜花賞は去年のミッキークィーンに続く連覇、2012年のジェンティルドンナを加えて3勝目となります。

父はこれだけにして母シンハリーズ(2002年 栗毛)に行きましょう。この牝系を遡りながら見て行くと、スプリンターとステイヤーが混在、配合される父馬の距離適性に影響されることが多い血統と思われます。
既に日本でも報道されていたと思いますが、シンハリーズはイギリスとアメリカで12戦3勝。アメリカのGⅠ戦デル・マー・オークスの勝馬です。
2歳の英国時代はジェイミー・オズボーン厩舎に所属し、4戦1勝。7月末にドンカスターの7ハロン戦でデビューして4着、続くノッティンガムの1マイル戦は3着でした。8月末の3戦目はニューマーケットの7ハロン戦で、この時はデットーリ騎乗で1番人気に支持されましたが又しても3着。9月初旬の4戦目、ドンカスターで17頭立て1マイルのナーザリー戦に優勝してシーズンを終えます。

3歳からはアメリカのジェームス・キャシディー厩舎に転出しますが、アメリカ競馬の一般戦に付いては情報入手が難しく、全レースの詳細は不明です。シンハリーズの名前が見出されるのは転厩してから4戦目、7月のことで、恐らくここまでに一般戦で3戦1勝だったと想像されます。
そのアメリカでの4戦目がハリウッド競馬場で行われたアメリカン・オークス(芝GⅠ)で、福永祐一騎乗のシーザリオが日米オークス連覇を達成したことで我が国にも大きく報道された一戦。この時の3着がシンハリーズで、仮にシーザリオ産駒のリオンディーズが東京優駿に勝てば、ライヴァルだった2頭が再び栄光を分かち合うというドラマが生まれることになります。果たして今週は・・・。

話が横道に逸れましたが、このあと名手マイク・スミスに乗り替わったシンハリーズは8月のデル・マーでデル・マー・オークス(芝GⅠ)に優勝して生涯の3勝目を記録。この後もスミス騎手とコンビを続け、アーリントン競馬場のパッカー・アップ・ステークス(芝GⅢ)で2着、キーンランドのクィーン・エリザベスⅡ世カップ(芝GⅠ)は7頭立ての7着でシーズンを終えます。
シンハリーズは翌年も現役に留まりましたが、この年は1戦(内容不明)のみ。5歳時も現役復帰を目指していましたが叶わず、繁殖牝馬として引退します。アメリカのブラッドホース誌でその引退を報ずる記事を見つけましたのが、こちらをご覧ください。↓

http://www.bloodhorse.com/horse-racing/articles/161525/grade-i-winner-singhalese-retired

繁殖に上がったシンハリーズの成績を何時もの様に一覧表に纏めると、
2008年 ポロンナルワ 栗毛 牝 父ラヒー Rahy 未出走。勝馬の母。
2009年 アダムスピーク 黒鹿毛 牡 父ディープインパクト 中央競馬で8戦3勝。ラジオ日経杯2歳でゴールドシップを破って優勝。皐月賞は18着、勝鞍は2000メートルで2勝、ダートの1600メートルで1勝。
2010年 シンハディーパ 黒鹿毛 牝 父ウォー・エンブレム War Emblem 中央競馬で11戦1勝。勝鞍は小倉の1200メートル。
2011年 リラヴァティ 黒鹿毛 牝 父ゼンノロブロイ 現役。中央競馬で現在まで21戦4勝。四国新聞杯(阪神2000メートル)、パールステークス(京都1800メートル)。フェアリーステークス(GⅢ)3着、チューリップ賞(GⅢ)3着、桜花賞9着、ローズステークス(GⅢ)3着、秋華賞8着、福島牝馬ステークス(GⅢ)2着。
2012年 アダムスブリッジ 鹿毛 牡 父ゼンノロブロイ 中央競馬で5戦2勝。若駒ステークス(京都2000メートル)、ダービー17着。
2013年 シンハライト

以上、2年目の産駒から5年連続で勝馬の母となり、ステークスに勝った馬が4頭、内G戦勝馬2頭は極めて優秀な繁殖成績と言えるでしょう。因みに2014年生まれはダイワメジャーを父に持つ栗毛の牝馬だそうで、ミリッサと命名された由。そのデビューは話題を集めること間違い無しでしょう。

2代母はベイズ Baize (1993年 栗毛 父エフィシオ Efisio)。この馬もシンハリーズ同様に英国でキャリアをスタートさせ、後にアメリカに移った馬。通算成績は資料によりバラつきがありますが、少なくとも24戦5勝としておきましょう。
2歳時は英国でジョンソン=ホートン師が管理し、2歳から3歳まで走って10戦2勝。デビューから5ハロン戦で2連勝し(ウォーリック競馬場とウインザー競馬場)、無敗で臨んだモールコム・ステークス(GⅢ)が3着。しかしこれが彼女の最も評価されている成績で、その後イギリスでは勝てず純粋なスプリンターでした。アメリカでの3勝は明細不詳ですが5ハロンと6ハロンでのもの、全て一般戦でしょう。

母としてのベイズは現在までに13頭の登録された産駒があり、少なくとも9頭が勝馬。シンハリーズはその4番仔で、他の勝馬では6ハロンから1マイルで勝ったマスターポイント Masterpoint 、2歳時に6ハロンに勝ってベルギーに輸出されたパターデイル Patterdale 、英国でリステッド戦に勝ったドックオブザベイ Docofthebay 、アメリカでラ・ホヤ・ハンデ(芝GⅡ)2着、オーク・トゥリー・ダービー(芝GⅡ)3着の芝コースのマイラー、キッド・エドワード Kid Edward などがいます。

3代母のバイヨンヌ Bayonne (1988年 栗毛 父ベイ・エクスプレス Bay Express)もスプリンターで、英国で3歳時のみ走って8戦2勝。ベイズ同様ジョンソン=ホートン師が管理し、ウォーリック競馬場とチェプトウ競馬場の5ハロン一般戦を連勝しています。
バイヨンヌの初産駒がベイズですが、2番仔でベイズの全妹に当たるベイリーフ Bayleaf は1勝馬だったもののフライング・チルダース・ステークス(GⅡ)で4着した他、リステッド戦でも二度入着。その仔フォリオ Folio も9勝したスプリンターで、2歳時にはベイズと同じくモールコム・ステークスで3着に入りました。
更にベイリーフの娘で未出走馬のメイリーフ Mayleef からは、ジュライ・カップ(GⅠ)とパレス・ハウス・ステークス(GⅢ)に勝ち、アベイ・ド・ロンシャン賞(GⅠ)でも2着したスプリンター、メイスーン Masoon が出現。このファミリーがスプリンター系との印象に大きく貢献しています。

4代母ランベイ Lambay (1978年 栗毛 父ローレンザッキオ Lorenzaccio)は2歳から4歳まで走り14戦1勝。勝鞍は2歳時に5戦目で記録した7ハロンでのもの。
5代母トレジャー・アイランド Treasure Island (1965年 栗毛 父ホイスリング・ウインド Whistling Wind)もまたスプリンターで、2歳から3歳まで走って11戦1勝。唯一の勝鞍は2歳時、3戦目で記録した5ハロン戦でのものでした。

以上見て来ると短距離馬ばかりが目立つ牝系ですが、6代母のマイ・トレジャー My Trasure はステイヤーで、更に上の7代母は名牝セレーヌ Selene の娘ニュー・ムーン New Moon に行き着きます。
ニュー・ムーンから出たGⅠ級、クラシック馬ではコロネーション・ステークスとナッソー・ステークスのヘイメーキング Haymaking 、愛2000ギニーとロッキンジ・ステークスのウォッスル Wassl 、スプリント・カップのトゥワイライト・サン Twilight Son など。

セレーヌは「シレーヌ」とも「セイリーン」とも読める馬名ですが、チーヴリー・パーク・ステークスとナッソー・ステークスに勝った馬で、ダービー/セントレジャーの二冠馬ハイペリオン Hyperion の母として競馬ファンは知っておかなければならない名前です。
セレーヌはハイペリオン以外にも優れた繁殖牝馬を出し、シンハライトに繋がるニュー・ムーンもその1頭。
ニュー・ムーンの妹オール・ムーンシャイン All Moonshine から広がるファミリーは更に繁栄しており、当ブログのクラシック馬プロフィールでも既に、2012年の仏1000ギニー馬ビューティー・パーラー Beauty Parlor で紹介したこともあります。最後の方でチョロッと出てきますので、こちらを↓

2012クラシック馬のプロフィール(3)

ファミリー・ナンバーは6-e。1869年生まれのフェネラ Fenella を基礎とする牝系です。

 

 

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