サラトガとデル・マーが同時に閉幕

連日紹介しているように、アメリカはレーバー・デイの祝日を含めて3連休、昨日はその祝日に4つの競馬場で合計6鞍のG戦が行われました。順次レポートして行きましょう。

2か月近く続いたサラトガ競馬場の夏開催も、愈々この日が最終日。千秋楽のG戦は2鞍で、先ずバーナード・バルーク・ハンデキャップ Bernard Baruch H (芝GⅡ、3歳上、8.5ハロン)から。firm の馬場に7頭が出走し、前走フォースターデイヴ・ハンデ(芝GⅡ)で強烈に追い込みながら首差届かず2着だったイロニコス Ironicus がイーヴンの1番人気。
2番人気(3対1)でドン・ハンデ(GⅠ)の勝馬、これが芝コース初挑戦となるコンスティテューション Constitution が逃げ、イロニコスは指定ポジションの最後方から。1枠発走を利してインコースで脚を矯めていたイロニコス、直線で持ち味の末脚を爆発させると、2番手追走から粘る最低人気(27対1)のグランド・ティート Grand Tito を1馬身4分の1差し切って快勝。ハナ差でブービー人気(13対1)のオール・インクルーディッド All Included が3着でした。勝時計1分38秒54は、24年振りとなるコース・レコード更新です。
これがこのレース4勝目となるクロード・マゴーヒー厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のイロニコスは、5月16日のプリークネス・ステークス当日にディキシー・ステークス(芝GⅡ)を制しており、G戦は2勝目で通算成績も11戦5勝。5勝全てが芝コースでのもので、芝の追い込み馬と言うスタイルも定着してきました。

そしてサラトガの掉尾を飾るのが、2歳牡馬のGⅠ戦ホープフル・ステークス Hopeful S (GⅠ、2歳、7ハロン)。1頭が取り消して7頭立て。このレースのトライアルとなるサンフォード・ステークス(GⅢ)で3着降着とは言え、事実上の勝馬だったマグナ・ライト Magna Light が2対1の1番人気。
そのマグナ・ライトが前走同様逃げ作戦で先頭に立ちますが、これを3番手で追走していた5番人気(6対1)のラリス Ralis が第3コーナーで2番手に上がり、直線では逃げる本命馬を外から一気に交わすと、直線は一方的に引き離し、マグナ・ライトに5馬身4分の3の大差を付けて圧勝。更に3馬身差で2番人気(5対2)のアンクル・ヴィニー Uncle Vinny (記録上のサンフォード勝馬)が3着でした。
勝ったラリスは、ダグ・オネイル師がカリフォルニアから遠征してきた馬で、騎乗したハヴィエル・カステラノはこの日のG戦ダブル。2戦目のサンタ・アニタで未勝利を脱し、前走デル・マーの一般ステークス(グラデュエイション・ステークス)では2着、通算成績は5戦2勝となります。着差が大きかったことから判断して相当な大物なのか、これまでの成績から判断してフロック勝ちなのかは評価が割れる所でしょうが、オーナーと調教師は2012年の2冠馬アイル・ハヴ・アナザー I’ll Have Another と同じ。その陣営が来年のクラシック向きと判断しているようですから、今後の動向に注目しましょう。

ところで騎乗したカステラノ騎手、今夏のサラトガ・リーディングではイラッド・オルティスに次ぐ2位でした。それでもGⅠ戦に6勝、中でもキーン・アイス Keen Ice で三冠馬を破ったトラヴァース・ステークスがハイライトと言えるでしょう。

続いてパークス・レーシング競馬場では2鞍のG戦、先ずグリーンウッド・カップ Greenwood Cup (GⅢ、3歳上、12ハロン)は8頭が出走し、13連敗中ながら復活の兆しが見える6歳の古豪ネックン・ネック Neck ‘n Neck が8対5の1番人気。
このレースは映像が入ってこないので結果レポートだけを紹介すると、逃げたマジェスティック・ハーバー Majestic Harbor を2番手で追走したネックン・ネックが期待に応えて抜け、マジェスティック・ハーバーに半馬身差を付けて優勝。5番手から追い込んだフォー・グレーター・グローリー For Greater Glory が2馬身半差で3着に入りました。
イアン・ウイルケス厩舎、パコ・ロペス騎乗のネックン・ネックは、3歳時にマット・ウイン・ステークス(GⅢ)、インディアナ・ダービー(GⅡ)、アック・アック・ハンデ(GⅢ)に勝った実力馬でしたが、クラーク・ハンデ(GⅠ)を目指しての調教中に骨折し、休養を余儀なくされていました。復帰した2013年は2レース、去年も3レースを使われただけでしたが、今年はこれが9戦目。勝利はアック・アック・ハンデ以来3年振りとなります。

もう一鞍は最短距離のターフ・モンスター・ハンデキャップ Turf Monster H (芝GⅢ、3歳上、5ハロン)。同じ競馬場のパークス・ダッシュと混同されることもあるレースですが、こちらは firm の馬場に9頭立て。このレース3勝目を目指す9歳馬のベンズ・キャット Ben’s Cat も参戦してきましたが、5対2で並んだ5頭の1頭。2対1の1番人気には前走サラトガでクレーミング戦に勝ったピュア・センセーション Pure Sensation が選ばれていました。
レースはスタートから5対1の1頭モンゴリアン・サタデイ Mongolian Saturday とピュア・センセーションの一騎打ちとなり、先手を取ったモンゴリアン・サタデイを本命馬が最後はハナ差捉えて優勝。1馬身差3着にも5対1のシャープ・センセーション Sharp Sensation が飛び込み、ベンズ・キャットは5着敗退で3度目のVは成りませんでした。
クリストフ・クレメント厩舎、ケンドリック・カームーシュ騎乗のピュア・センセーションは、これがG戦初勝利の4歳せん馬。3歳時にサラトガの一般ステークス(クイック・コール・ステークス)に勝っていて、ステークスは2勝目。前走サラトガは、8か月の休養明けでの勝利でした。通算成績は13戦4勝。

この日の3場目はペンシルヴァニア州のプレスク・アイル・ダウンズ競馬場。ここはタペタ・コースがメインで、プレスク・アイル・ダウンズ・マスターズ・ステークス Presque Isle Downs Masters S (GⅡ、3歳上牝、6.5ハロン)は、本命になるはずの1頭が取り消して8頭立て。前走カナダのタペタ・コースで現地のGⅢ戦(ロイヤル・ノース・ステークス)で2着(勝ったのは取り消したエイジレス Ageless)したレイ・コート Leigh Court が6対5の1番人気。
そのレイ・コートがスタートから先手を取って逃げ、直線も快調にゴールを目指しましたが、4番手で追走していた2番人気(2対1)のリヴィング・ザ・ライフ Living The Life が内ラチ沿いに追い上げ、最後は4分の3馬身差で本命馬を交わして優勝。1馬身半差の3着には3番人気(7対2)のミス・ミスチーフ Miss Mischief が追い込みました。
ゲーリー・マンデラ厩舎、ジョー・ブラーヴォ騎乗のリヴィング・ザ・ライフは、去年に続きこのレース2連覇。マスターズは未だ9年の歴史しかありませんが、2009-2010年のインフォームド・デシジョン Informed Decision 、2012-2013年のグルーピー・ドール Groupie Doll に続く3頭目の連覇馬となります。父にフットステップスインザサンド Footstepsinthesand を持つアイルランド産の5歳馬で、前走はロス・アラミトス競馬場のグレート・レディー・エム・ステークス(GⅡ)2着。アメリカのタペタ・コースでは4戦無敗の実績を誇ります。

最後にサラトガと同じく千穐楽を迎えたデル・マー競馬場から、最後のG戦はサラトガ同様2歳牡馬のGⅠ戦のデル・マー・フューチュリティー Del Mar Futurity (GⅠ、2歳、7ハロン)。去年はアメリカン・フェイロー American Pharoah が勝ったレースと言えば、注目しないわけにはいかないでしょう。2頭が取り消して6頭立て、前走トライアルに相当するベスト・パル・ステークス(GⅡ)を5馬身4分の1差で圧勝したナイクィスト Nyquist (前回は「ナイキスト」と表記しましたが、今回からより正確に改めることにしました)が1対2の断然1番人気。
ブービー人気(15対1)アニーズ・キャンディー Annie’s Candy の逃げを2番手で追走したナイクィスト、直線で楽々これを交わすと、最後方から追い込む3番人気(8対1)のスワイプ Swipe に3馬身4分の3差を付ける圧勝でした。最後はジョッキーが抑える余裕の楽勝ですから、最後まで追っていればもっと差は開いたでしょう。更に4馬身4分の1差で4番手を進んだ2番人気(5対2)のブレイムイットオンザロウ Blameitonthelaw が3着。
これで3戦無敗でGⅠ馬となったナイクィストは、ダグ・オネイル厩舎、マリオ・グティエレス騎乗。オネイル師と言えば、この日サラトガのホープフルをラリスで勝った調教師で、オーナーも何とラリスと同じレッダム・レーシング。同じ年にホープフルとデル・マー・フューチュリティーを制したのは、オネイル師が史上初の快挙です。これで東西の2歳チャンピオンには同じチームの馬が立ったことになり、来年のクラシックの見所の一つとなります。恐らく2頭の激突は、両馬が順調であれば本番のダービーまで持ち越されることになるでしょう。今年同様、早くも三冠の話題が生まれた夏競馬でした。

 

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