ターフ・フェスティヴァルのGⅠ2鞍

昨日の日曜日はハリウッド・パーク競馬場のターフ・フェスティヴァルのフィナーレ。最終日に相応しくGⅠ戦が2鞍行われましたが、その前にチャーチル・ダウンズから見ていきましょう。

チャーチル・ダウンズ競馬場は、この日が秋開催の千穐楽。こちらも芝コースでリヴァー・シティー・ハンデキャップ River City H (芝GⅢ、3歳上、9ハロン)が行われました。firm の馬場に12頭立て。去年と今年、ニッカーボッカー(芝GⅢ)とレッド・スミス(芝GⅡ)を2年連続で2連勝したボイステラス Boisterous が4対5の断然1番人気、芝のG戦3連勝に期待が掛かります。
レースはグローバル・パワー Global Power が引っ張り、2番枠スタートの本命ボイステラスは内々4番手に待機。そのままインコースを通ったボイステラスがラチ沿いに抜けましたが、それより先に後方2番手に付けていた10番人気(30対1)のキープ・アップ Keep Up が8頭分の外を回って内の馬群を一気に交わして先頭、混戦を抜けたボイステラスを半馬身差し切っていました。3着は頭差でスカイリング Skyring 、更に首差でスイフト・ウォリアー Swift Warrior の順。
アレックス・クラークソンが管理するキープ・アップは、これがステークス初出走でもちろんG戦も初勝利。去年4月に故障で戦線を離脱し、リハビリを経て今年7月に15か月ぶりに復帰。先週(11月16日)のアローワンス戦に勝ってから僅か10日間隔での挑戦でした。芝コースに適したタイプのようで、芝では3戦3勝の負け知らずです。騎乗したミゲル・メナは、前日のゴールデン・ロッド、ケンタッキー・ジョッキー・クラブに続いてのグレード戦3連勝。開催を最高の形で締め括りました。

そしてハリウッド・パーク競馬場のターフ・フェスティヴァル。祭典はフィナーレですが、開催そのものは未だ未だ続きます。GⅠ2連発の最初はメイトリアーク・ステークス Matriarch S (芝GⅠ、3歳上牝、8ハロン)。 firm の馬場に8頭立て、アイルランドのデルモット・ウェルド厩舎がパット・スマーレン騎乗でGⅠ(メイトロン・ステークス)馬エミュラス Emulous を送り込み、インターナショナルな雰囲気も漂います。8対5の1番人気は、今期5戦5勝の3歳牝馬デイアットザスパ Dayatthespa 。勝鞍の中にはGⅠのQEⅡ世チャレンジ・カップも含まれ、古馬との初対戦で6連勝を目指します。
ところが好事魔多し、意外な展開が待ち構えていました。ヨーロッパから遠征のエミュラスはスタートがやや悪く後方から。馬群がクラブ・ハウス・ターン(日本で言う第1コーナー)に差し掛かった時、先手を取ったサマー・ソワレー Summer Soiree (去年のこのレース2着馬)の2番手に付けようとした本命デイアットザスパが何かに驚いたようにズルッと後退。この時外から2番手を窺っていたフューチャー・ジェネレーション Future Generation との間に接触が無かったのかがレース後の審議となります。結果は、同馬が他馬に驚いてフェンスを飛び越えようとしたということで降着などの裁定にはなりませんでしたが、これが影響したのかデイアットザスパは5着に敗退してしまいました。
一方レースは、アクシデントの直後を走っていたブービー人気(35対1)のベター・ラッキー Better Lucky が事故を巧みに避けて3番手に上がり、5馬身以上離して逃げたサマー・ソワレーを捉えると、2着に追い込むティズ・フラーテイシャス Tiz Flirtatious を1馬身抑えての波乱となりました。逃げたサマー・ソワレーが2馬身4分の1差で3着。去年のメイトリアーク勝馬スター・ビリング Star Billing も出走していましたが、7着と大敗。スタートに失敗したエミュラスも6着と奮わず。ヨーロッパ馬はスタートで遅れることが多いものですが、この馬はスタートには問題が無かった馬、やはり環境の変化が微妙に影響したのかも知れません。
勝馬を管理するのは、オーナーであるゴドルフィンの馬を調教するトーマス・アルベルトラーニ師。ゴドルフィンは、2008年のココア・ビーチ Cocoa Beach に次ぐ2度目のメイトリアーク制覇となります。今回はエディー・カストロ騎乗(2008年はスロール厩舎、ラモン・ドミンゲス騎乗)。大穴を開けたベター・ラッキーは、ベルモントのサンズ・ポイント・ステークス(芝GⅡ)に続く二つ目のG戦優勝、前走QEⅡではデイアットザスパの3着でした。彼女も同様にこれが古馬との初対戦でしたが、去年に続いてこのレースの3歳馬優勝の立役者となっています。

最後にハリウッド・ダービー Hollywood Derby (芝GⅠ、3歳、10ハロン)。日没を過ぎて照明がコースを照らし出す中、フルゲートの14頭立てで行われました。枠の関係で1頭が出走除外になっています。ヨーロッパから英国のグランディア Grandeur 、フランスの仏オークス3着馬ルジワ Rjwa も参戦して国際色を添えていましたが、前走BC初日の最後に行われたトゥワイライト・ダービー(旧オーク・トゥリー・ダービー)を強烈な差し足で快勝したグランディアがわずかの差で1番人気(3対1)。前走も薄暮競馬での好走でしたから、ここでも期待が掛かります。一方のルジワはこれがアメリカでの初出走。
レースはマイ・ベスト・ブラザー My Best Brother の逃げ。前走ではウイリアム・ビュイックが騎乗したグランディアは、今回はギャレット・ゴメス鞍上で大きく離れた最後方からの競馬。第4コーナーを回る時点でも最後方の思い切った騎乗に、いくら何でもここからでは届くまいという展開。案の定、前半は後方4番手に待機した4番人気(7対1)のアンブライドルド・コマンド Unbridled Command が早目に進出し、2番手で直線に入って抜け出し安全圏内。グランディアも前走を髣髴させる鬼脚で6頭分の外から追い込みましたが、結局はアンブライドルド・コマンドを1馬身半捉え切るには至りませんでした。それでも2着を死守したグランディアと3着ラッキー・チャッピー Lucky Chappy との着差は頭差。ルジワも更に2馬身半差で4着に食い込んでいます。
トーマス・ブッシュ師が管理するアンブライドルド・コマンドは、9月2日サラトガのサラナック・ステークス(芝GⅢ)をG戦初挑戦で制覇し、グレード戦は2勝目。前走はベルモントの稍重馬場で一般ステークスに勝っており、ニューヨーク州を出て出張競馬に出走するのは初体験でした。騎乗したハヴィエル・カステラノは、メイトリアークではデイアットザスパで思わぬアクシデントに見舞われたばかり。ここでは全てが筋書き通りに運んでの快勝です。一方の本命馬に騎乗して届かなかったゴメス騎手は、直線に入った時に前を走っていた馬の蹄鉄が外れて飛び、止むを得ず進路を変えなければならなかった由。競馬にはアクシデントが付きもので、正に勝敗は時の運という言い回しを証明するような結果になったようですね。

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