年度代表馬、堂々の引退レース
先週までは静かな週末が続いていたアメリカ競馬ですが、1月の第4週からはG戦の数も増え、ここに来て2018年シーズンも本格化してきました。今週は土日共にG戦が組まれていますが、1月27日はニューヨークとフロリダで合計6鞍のG戦が行われています。
先ずニューヨークのアケダクト競馬場は、年末年始の寒波もようやく収まり、今年最初のG戦となるトボガン・ステークス Toboggan S (GⅢ、4歳上、7ハロン)。去年まで6ハロンでしたが、今年は距離が1ハロン延長されたようです。fast の馬場に6頭が出走し、去年のBCスプリントは10着ながらその前にヴォスバー・ステークス(GⅠ)を制しているタカフル Takaful が1対2の断然1番人気。
そのタカフルが得意の先行力を活かして逃げましたが、これに執拗に絡んだのが最低人気(21対1)ながら去年のカーター・ハンデ(GⅠ)勝馬のグリーン・グラット Green Gratto 。2頭かビッシリ競り合ったまま直線に向きましたが、流石にペースが速過ぎたか、一杯になった人気馬を外から一気に捉えたのが後方2番手で控えていた5番人気(11対1)のグレート・スタッフ Great Stuff で、同じく最後方から伸びた4番人気(7対1)のヴァルカンズ・フォージ Vulcan’s Forge に2馬身半差を付けるサプライズとなりました。何とか粘ったタカフルは半馬身差の3着。
デヴィッド・ジャコブソン厩舎、ディラン・デイヴィス騎乗のグレート・スタッフは、これがG戦もステークスも初勝利となる6歳牡馬。G戦経験は3才時のタンパ・ベイ・ダービー(GⅡ)5着と去年のフォール・ハイウエイト・ステークス(GⅢ)5着の2回だけで、前走1月8日ローレルの一般ステークス(デイヴズ・フレンド・ステークス)も3着に終わっていました。
そして南国フロリダ、ガルフストリーム・パーク競馬場からは5鞍のG戦。皮切りは芝コースのマラソン戦、ラ・プレヴォヤンテ・ハンデキャップ La Prevoyante H (芝GⅢ、4歳上牝、12ハロン)で、firm の馬場に7頭が出走し、10月のキーンランドでドウェイジャー・ステークス(芝GⅢ)を制して以来の競馬となるアップル・ベッティー Apple Betty が4対5の1番人気。
4番人気(5対1)のデアリング・ダッチェス Daring Duchess が逃げ、アップル・ベッティーは6番手、4番手、2番手と徐々に進出するもそこまで。前半は5番手で待機していた5番人気(7対1)のテクスティング Texting が直線で外から逃げ馬を捉えると、粘るデアリング・ダッチェスに4分の3馬身差を付けて優勝。3番手を進んだ6番人気(23対1)のタラレーナ Taralena が3馬身差の3着に入り、本命アップル・ベッティーは6着惨敗に終わりました。
チャド・ブラウン厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のテクスティングは、これまたステークスもG戦も初勝利となる5歳馬で、勝鞍も未だ3勝目。G戦は去年のロング・アイランド・ハンデ(芝GⅢ)に挑戦して3着になった事があるだけで、前走は同じガルフストリーム・パーク、12月30日の一般ステークス(ヴィア・ボルゲーゼ・ステークス)5着からの飛躍となりました。
ガルフストリーム2鞍目のG戦は、去年は3月初めに行われていたフレッド・W・フーバー・ステークス Fred W. Hooper S(GⅢ、4歳上、8ハロン)。fast の馬場に2頭が取り消しての9頭立てとなり、一昨年のこのレースの勝馬でもあるトミー・マチョ Tommy Macho が2対1の1番人気。
8番人気(20対1)のムーヴズ・ライク・アリ Moves Like Ali が思い切って逃げましたが、第3コーナーで早くも一杯。3番手に付けていた人気のトミー・マチョが先頭で直線に向くと、外から迫る6番手追走の7番人気(15対1)コンクェスト・ビッグ・イー Conquest Big E を再び内から突き放し、4分の3馬身抑えて人気に応えました。4番手に付けていた3番人気(4対1)のテール・オブ・サイレンス Tale of Silence が4馬身4分の1差の3着。
トッド・プレッチャー厩舎、ルイス・サエズ騎乗のトミー・マチョは、2016年に続き2度目のフレッド・W・フーバー・ステークス制覇。2015年のディスカヴァリー・ハンデ(GⅢ)、去年のハルズ・ホープ・ステークス(GⅢ)に加えて4つ目のG戦タイトル獲得となりました。前走はベルモント競馬場の9月、ケルソ・ハンデ(GⅡ)4着で、シーズン初戦を快勝し、今年はハルズ・ホープをパスし、初のGⅡ戦制覇に挑む計画とのことです。
続いては、ラ・プレヴォヤンテ・ハンデキャップの牡馬版に当たるW・L・マックナイト・ハンデキャップ W.L.McKnight H (芝GⅢ、4歳上、12ハロン)。こちらは9頭が参戦し、3走前にカナダに遠征してカナダ国際(芝GⅠ)を制しているバラーズ・アレー Bullards Alley が2対1で1番人気。
大外枠発走の5番人気(8対1)インフィニット・ウイズダム Infinite Wisdom が逃げましたが、4番手を追走していた3番人気(7対2)のオスカー・ノミネイテッド Oscar Nominated が第4コーナーで前2頭を外から交わし、熾烈な2着争いに半馬身差を付ける差し切り勝ち。2着争いは写真判定の結果、後方2番手から追い込んだ4番人気(6対1)のネッシー Nessy が入り、7番手から伸びたバラーズ・アレーはハナ差の3着惜敗となりました。
マイケル・メーカー厩舎、ホセ・オルティス騎乗のオスカー・ノミネイテッドは、本命バラーズ・アレーが勝ったカナダ国際では2着だった5歳せん馬。カナダ遠征の後はレッド・スミス・ステークス(芝GⅢ)8着でシーズンを終え、ここが今期初戦でした。3歳時にはスパイラル・ステークス(GⅢ)に勝って臨んだケンタッキー・ダービーで17着大敗。去年はカナダ遠征の前にケンタッキー・ターフ・カップ(芝GⅢ)に勝っており、これが3つ目のG戦勝ちとなります。
土曜日最後から2つ目のG戦は、ハリケーン・バーティー・ステークス Hurricane Bertie S (GⅢ、4歳上牝、7ハロン)。12頭の多頭数が揃い、去年の勝馬でBCフィリー・アンド・メア・スプリントにも出走(13着)したカーリンズ・アプルーヴァル Curlin’s Approval が8対5の1番人気。
6番人気(12対1)のアポロジャイノットアクセプテッド Apologynotaccepted が逃げ、2番手でマークした3番人気(7対1)スパイス・レディー Spice Lady が先頭で直線。その直線も戦闘が激しく入れ替わる大接戦となり、一旦は3番手に付けていた本命カーリンズ・アプルーヴァルが外から抜けたものの、更に外から後方2番で待機していた10番人気(59対1)の伏兵ジョーダンズ・ヘニー Jordan’s Henny が末脚を一気に爆発させ、本命馬を4分の3馬身捉える大波乱となりました。9番手から伸びた7番人気(18対1)のリッチ・モミー Rich Mommy が同じく4分の3馬身差で3着と、こちらも大穴。
マイケル・トムリンソン厩舎、タイラー・ガッファリオーネ騎乗のジョーダンズ・ヘニーは、この日3頭目の初ステークス、初G戦制覇となる4歳馬で、前走(9月23日)チャーチル・ダウンズのリステッド戦(ドッグウッド・ステークス)では3着でした。それでも去年、3歳時にはガルフストリーム・パーク・オークス(GⅡ)3着からケンタッキー・オークスに参戦(12着)しており、そのあとのアイオワ・オークス(GⅢ)でも3着の実績があります。
そして土曜日のメインが、去年創設されたペガサス・ワールド・カップ・インヴィテーショナル Pegasus World Cup Invitational (GⅠ、4歳上、9ハロン)。第1回の去年はアロゲート Arrogate が制し、続くドバイ遠征でワールド・カップも圧倒的な強さで連勝したのを記憶している方も多いでしょう。今年はそのドバイでは2着だったものの、その後不振が続いて引退したアロゲートに替わってチャンピオンに躍り出たガン・ランナー Gun Runner が今年の主役。アロゲートとは違ってこのレースで引退することが決まっている同馬は、強豪12頭が揃う今年のペガサスではイーヴンの1番人気。10番枠発走を不安視する向きもありましたが、引退レースを勝利で飾ることを期待したファンが大多数でしょう。
スタート良く先手を取ったのは、去年のBCクラシックでガン・ランナーの2着した4番人気(7対1)のコレクテッド Collected 、外から出たガン・ランナーも好ダッシュから直ぐに2番手に付けます。レースが動いたのは第3コーナーの手前、鞍上がゴーサインを出したわけでもなく、ガン・ランナーが逃げ馬に並び掛けると、あとは4番手から猛追する2番人気(7対2)ウエスト・コースト West Coast とのマッチレース。外からウエスト・コーストが捉えに掛かりましたが、内で再び足を伸ばした大本命、最後はライヴァルに同道2馬身半差を付けて、引退レースを鮮やかな勝利で飾りました。9番手から追い込んだ3着で5番人気(13対1)ガンナヴェーラ Gunnavera が2着から10馬身4分の3の大差を付けられていたことでも、ガン・ランナーの強さが証明できそうです。
スティーヴン・アスムッセン厩舎、フロラン・ジェルー騎乗のガン・ランナーに付いては改めて紹介することも無いでしょう。ドバイ2着から帰国した後は、GⅠ戦ばかり無傷の5連勝。一々挙げれば、6月にスティーヴン・フォスター、8月はホイットニー、9月にも同じサラトガでウッドワードを制し、去年の締めはBCクラシック。去年の年度代表馬にも選出され、その引退は惜しみて余りあるもの。
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