シガー・マイル・デイ

土曜日はハリウッドのターフ・フェスティヴァル二日目ですが、この日はむしろアケダクトのG戦シガー・マイルが全米の注目の的。この日はメインを含めて4つのG戦が組まれていましたから、先ずこちらからレポートして行きましょう。

そのアケダクト競馬場、最初はドモワゼル・ステークス Demoiselle S (GⅡ、2歳牝、9ハロン)。ニューヨークではシーズン最後の2歳牝馬戦で、fast の馬場に6頭が出走してきました。例年は既にG戦に優勝、または入着したメンバーが出揃うのが常ですが、今年はG戦経験馬は僅か1頭。そのストップチャージングマリア Stopchargingmaria が4対5の断然1番人気に支持されていました。3頭出しプレッチャー厩舎のヒロインです。
ペンウィズ Penwith が逃げ、2番手に上がったストップチャージングマリアは外から捉えに掛かります。一方後方を進んだ2番人気(5対2)のゴット・ラッキー Got Lucky が直線では内ラチ沿いを衝いて追い上げ、3頭の叩き合い。外のストップチャージングマリアが、最内のゴット・ラッキーを首差抑えて人気に応え、真ん中に挟まれたペンウィズが頭差粘っての3着。最後は経験が勝負を決めた形でした。プレッチャー厩舎のワン・ツー・フィニッシュ。
この日3勝目となるハヴィエル・カステラノ騎乗のストップチャージングマリアは、サラトガのデビュー戦に勝ったあとスピナウェイ・ステークス(GⅠ)2着、フリゼッテ・ステークス(GⅠ)3着と続けて、前走テンプテッド・ステークス(GⅢ)でG戦初勝利。これでG戦2連勝ですが、今回は9ハロンの距離を克服したことが重要でしょう。また2着のゴット・ラッキーはこれが2戦目。こちらにも期待が膨らんだプレッチャー師です。師はこのレース3連覇を含めて5勝目。去年の勝馬アンリミテッド・バジェット Unlimited Badget も、今年の勝馬と同じオーナーでもあります。

アケダクトの二つ目はカムリー・ステークス Comely S (GⅢ、3歳牝、9ハロン)。去年まではクラシック・トライアルの一つとして4月の春開催で行われきたレースで、距離も8ハロンだったもの。今年は秋に移行し、距離も1ハロン伸びての開催です。1頭が取り消して9頭立て。G戦はデビューながら3連勝中のウエディング・トースト Wedding Toast が3対5の1番人気。
今回は巧く出たウエディング・トースト、直ぐにハナを奪うと快調に飛ばし、直線では前半8番手から大外を通って追い込む最低人気(32対1)のトースティング Toasting を頭差抑えてG戦デビュー勝ちを飾りました。2頭は内外離れていましたが、最後は勝馬が外に膨れて競る様な形。それでも両馬の間に接触するような場面はありませんでした。5馬身4分の1の大差が付いてティーン・ポーリーン Teen Pauline が3着。
キアラン・マクローリン厩舎、6レースに続いてG戦ダブル達成のハヴィエル・カステラノが騎乗したウエディング・トーストは、デビュー戦こそスタート悪く2着でしたが、そのあと未勝利戦、クレーミング戦、一般ステークスと3連勝し、これで5戦4勝。生産者はダーレー、オーナーはゴドルフィンと超エリートの新星で、来年の活躍が楽しみな1頭です。

続いてがこの日の目玉、シガー・マイル・ハンデキャップ Cigar Mile H (GⅠ、3歳上、8ハロン)。1頭が取り消して10頭立てながら、GⅠ馬が4頭も登場する豪華版。BCダート・マイルに勝ったゴールデンセンツ Goldencents が距離適性からか3対1の1番人気に支持されていました。
しかしながらレースは複数のアクシデントに見舞われ、有力馬も何頭かが不利を被りました。ゴールデンセンツもその1頭で、スタートで他馬にぶつけられる不利があり、2番手を追走したものの7着と脚を失くします。逃げたのは大外枠発走のプライヴェイト・ゾーン Private Zone でしたが、直線に入る瞬間で2番手を進んでいたクリアリー・ナウ Clearly Now が逃げ馬に乗りかかるようにしてバランスを崩すアクシデント。この連鎖反応で直後を手応え良く追走していた3番人気(5対1)でBCフィリー・アンド・メア連覇を達成したグルーピー・ドール Groupie Doll が進路を外に回さざるを得ない不利。結局グルーピー・ドールもこれが堪えて4着に終わりました。
二つのアクシデントに巻き込まれなかったのが、5番手を追走していた4番人気(6対1)のフラット・アウト Flat Out 。逃げ切りを図るプライヴェイト・ゾーンを外から交わし、1馬身4分の1差を付けて優勝。2馬身差3着には、2番人気(7対2)のヴェラザーノ Verrazano が入り、不利に見舞われて外に回したグルーピー・ドールは首差届きませんでした。直線のアクシデントが審議の対象になりましたが、後ろの馬が前に突っかかったことが原因。着順通りで確定しています。
ウイリアム・モット厩舎、ジュニア・アルヴァラード騎乗のフラット・アウトは、一昨年と去年ジョッキー・クラブ・ゴールド・カップ(GⅠ、10ハロン)を2連覇した7歳馬。これが3つ目のGⅠとなりますが、1マイルでもメトロポリタン・ハンデ3着を初めとして実績は充分にありました。前走BCクラシックは8着と大敗していますが、嵌れば怖い1頭であることを証明した形です。モット師はこのレース、変更されたレース名の主であるシガー Cigar (1994年)、2011年のトゥー・オーナー・アンド・サーヴ To Honor and Serve に続き3勝目。

アケダクトの最後は、今期ニューヨーク最後の2歳G戦となるレムゼン・ステークス Remsen S (GⅡ、2歳、9ハロン)。やはり1頭が取り消して8頭立て。未だ3戦目ながら、ここまで末脚を活かしてきたオナー・コード Honor Code が4対5の1番人気。ナシュア・ステークス(GⅡ)勝馬のカイロ・プリンス Cairo Prince (8対5、2番人気)との一騎打ちと言う前評判でした。
実際レースも評判通り、逃げたマスター・ライトニング Master Lightning の2番手に付けたオナー・コードが抜け出した所、4番手に待機していたカイロ・プリンスが外から交わしてゴールへ。そのままカイロ・プリンスが勝ち切るかと思われた時、内ラチ沿いに一旦は交わされたオナー・コードが巻き返し、首を下げた所がゴール。ハナ差でライヴァルを差し返していました。3着は半馬身差でウイッケド・ストロング Wicked Strong 。
クロード・マゴーヒー厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のオナー・コードは、サラトガのデビュー戦は大きく離された最後方から圧巻の差し切り勝ち。2戦目のシャンペン・ステークス(GⅠ)でも後方から瞬発力を見せての惜しい2着した馬。これで3戦2勝2着1回として来年のクラシックに備えます。血統的にも名種牡馬エー・ピー・インディー A.P.Indy の最後の産駒として注目を集めそう。今年のダービーをオーブ Orb で制したマゴーヒー師、来年のダービー連覇が大きな夢になるでしょう。カステラノはこの日5勝目にしてG戦は三つ目。大当たりの1日となりました。オナー・コードは冬をフロリダで過ごし、そのフロリダかウッド・メモリアルがクラシックに向けた始動となる予定。また敗れたとは言え6ポンド重い負担重量でハナ差だったカイロ・プリンスも当然ながらマクローリン師のダービー候補。こちらもフロリダ→ウッド・メモリアルを予定し、2頭のライヴァル関係が続きそうですね。

次はターフ・フェスティヴァルのハリウッド・パーク競馬場に行きましょうか。土曜日は2歳のGⅡ戦2鞍というラインナップです。先に行われたジェネラス・ステークス Generous S (芝GⅢ、2歳、8ハロン)から。good の芝コースに6頭立て。デビューから2連勝、ステークス・デビューのパブロ・デル・モンテ Pablo Del Monte がイーヴンの1番人気。
しかし優勝は内から進出し、逃げたオントロジー Ontrogy を外から交わした2番人気(2対1)のグローバル・ヴュー Global View 、2着エアテオローア Aotearoa に1馬身4分の1差完勝でした。3着には4分の3馬身差でロイヤル・バンカー Royal Banker が入り、パブロ・デル・モンテは3番手追走も5着敗退。
トーマス・プロクター厩舎、ジョセフ・タラモ騎乗のグローバル・ヴューは、デル・マーのポリトラック・コースでのデビュー戦が4着。前走サンタ・アニタの芝コースで初勝利を挙げ、これで3戦2勝となります。

そしてもう一鞍が牝馬のためのミエスク・ステークス Miesque S (芝GⅢ、2歳牝、8ハロン)。こちらも6頭立てで、前走BCジュヴェナイル・フィリーズ・ターフでアメリカ初黒星を喫したクレノール Clenor が4対5の断然1番人気。
ラヴ・イン・ザ・デザート Love In The Desert が逃げましたが、直線は追い込み馬の競馬となり、最後方で我慢していたブービー人気(12対1)のフル・ランソム Full Ransom の大外からの末脚が爆発、先に先頭に立ったセイヴィングス・アカウント Savings Account をゴール寸前で頭差捉える波乱でした。1馬身半差でスシ・エンパイア Sushi Empire が3着、後方2番手から追い上げたクレノールは5着に終わっています。上位3頭はいずれも人気薄の大波乱。この時期の2歳戦、特に芝コースは未だ能力比較が定まらない印象です。
ジェームス・キャシディー厩舎、ヴィクター・エスピノザ騎乗のフル・ランソムは、ジェネラスのグローバル・ヴュー同様これがステークスのデビュー戦。デル・マーのデビュー戦4着のあと、サンタ・アニタの芝戦で初勝利を記録したのもグローバル・ヴューと同じ路線を歩んで来ています。

 
さてホーソン競馬場のホーソン・ゴールド・カップ・ハンデキャップ Hawthorne Gold Cup H (GⅡ、3歳上、10ハロン)を見てみましょう。去年は10月初めに行われていましたが、今年はこの時期の開催です。fast の馬場、1頭が取り消して8頭立て。前走BCクラシックでも5着した実力馬ラスト・ガンファイター Last Gunfighter が4対5の1番人気に支持されています。
去年のトラヴァース・ステークス勝馬で2番人気(5対2)のアルファ Alpha が逃げましたが、前半6番手に控えた本命ラスト・ガンファイターが直線で抜け、2着ミスター・マルティ・グラ Mister Marti Gras を1馬身抑えての貫録勝ち。3着には2馬身差でストリート・スパイス Street Spice が食い込み、アルファは4着。
チャド・ブラウン厩舎、ジョー・ブラーヴォ騎乗のラスト・ガンファイターは、これが今年エクセルシオ・ステークス(GⅢ)、ピムリコ・スペシャル(GⅢ)、フィリップ・H・イズリン・ステークス(GⅢ)に続く4つ目のG戦優勝。BCの他ジョッキー・クラブ・ゴールド・カップ5着のジーⅠ実績もあり、堅実味が魅力の古豪でしょう。

土曜日最後のレポートは、チャーチル・ダウンズ競馬場の2歳戦2鞍。先ずは牝馬のゴールデン・ロッド・ステークス Golden Rod S (GⅡ、2歳牝、8.5ハロン)から。馬場は fast 、10頭が出走し、ここチャーチルでデビュー勝ちしたバード・メイカー Bird Maker が3対1の1番人気に支持されていました。3頭出しイアン・ウイルケス厩舎の期待馬です。
レースはダディーズ・メモリー Daddy’s Memory が逃げ、バード・メイカーも5番手から追い上げましたが、3番手を追走した3番人気(7対2)のヴェックスト Vexed が早目に先頭に立った2番人気(並んで3対1)のストーンスタティック Stonestatic を捉えて優勝。1馬身差でバード・メイカーが2着をキープし、更に1馬身でストーンスタティックが3着。ここは比較的順当な結果で収まっています。
アルバート・ストール厩舎、シャウン・ブリッジモハーン騎乗のヴェックストは名門クレイボーン牧場の自家生産馬で、10月下旬に行われたチャーチル・ダウンズの一般ステークスで2着してしました。

愈々最後はケンタッキー・ジョッキー・クラブ・ステークス Kentucky Jockey Club S (GⅡ、2歳、8.5ハロン)。来春同じ競馬場で行われるダービーへのポイント対象レースでもあります。ここは1頭が取り消して9頭立て。5対2の1番人気には、ウイリアム・モット厩舎の新星ドブラ・ヒストリア Dobra Historia が選ばれていました。
レースは人気薄(19対1)ラディー・ボーイ Laddie Boy が逃げ、これを早々と2番手まで進出した2番人気(3対1)のタピチュア Tapitua が捉えると、あとは独走。ラディー・ボーイに4馬身4分の1差を付ける圧勝です。首差でオウサム・スカイ Awesome Sky が3着、ドブラ・ヒストリアは7着惨敗に終わりました。
勝馬を管理するスティーヴン・アスムッセン師にとっては、これが2005年のプライヴェイト・バウ Private Vow に続く同レース2勝目。騎乗したリカルド・サンタナは、これがチャーチル・ダウンズでのG戦初勝利となりました。ダービーに向け12ポイントを獲得したタピチュアは、何とこれが初勝利。それでも9月にはやはりチャーチルのイロコイ・ステークス(GⅢ)で3着した経験もあり、前走も同じチャーチルでの未勝利戦3着でした。

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