ジェラニモ、驚異のサン・ガブリエル3勝目
新年最初のアメリカ競馬レポートは、1月4日に行われた3場、4鞍から。今年はカレンダーの関係で、各競馬場とも第1土曜日にG戦が集中した形です。
最初に報告が入ってきたのは、ガルフストリーム・パーク競馬場。fast の馬場で行われたオールド・ハット・ステークス Old Hat S (GⅢ、3歳牝、6ハロン)は、明け3歳最初のG戦で、牝馬の短距離戦。もちろんスプリンターというより、これから距離を伸ばしてクラシックを窺おうというメンバーが揃いました。6頭立ての1番人気(8対5)は、前走メイトロン・ステークス(GⅡ)2着のスイート・ウイスキー Sweet Whiskey 。9月29日以来、ほぼ3か月の休養明けです。
1番枠スタートのスイート・ウイスキー、やや出遅れたこともあって4~5番手からの競馬。2頭のハナ争いからマイラム Milam が逃げる展開です。直線、大外から後方に付けていた4番人気(5対1)のコー・コーラ Co Cola が捲るように先頭に立ちましたが、内ラチ沿いに我慢していたスイート・ウイスキーが内からスルスル抜けると、コー・コーラに2馬身4分の3差を付けて見事期待に応えました。更に4馬身4分の3差でオーレリアズ・ベル Aurelia’s Belle が3着に入りましたが、一旦3番手に上がったサイド・ストリート Side Street がゴール直前で落馬。審議になりましたが、同馬は骨折を発症したのが原因で、結果には影響していません。残念ながら安楽死の処分がなされ、新年から悲しい結末になってしまいました。
1・2着は共にトッド・プレッチャー師の管理馬。プレッチャー師自身も、この日の朝の調教でG戦4勝馬のカイシャ・エレトロニカ Caixa Eletronica を事故で失っており、サイド・ストリートのグレイ調教師と悲しみを分け合っています。勝利騎手はハヴィエル・カステラノ。スイート・ウイスキーは昨夏のサラトガでデビュー勝ち、続くスピナウェイ・ステークス(GⅠ)では4着。2歳最後のメイトロン2着を経てステークス、G戦とも初勝利。4戦2勝でクラシック戦線に名乗りを挙げました。
続いてはマーシュアズ・リヴァー・ステークス Marshua’s River S (芝GⅢ、4歳上、8.5ハロン)。firm の馬場に2頭が取り消しての10頭立て。前走チャーチル・ダウンズでカーディナル・ハンデ(芝GⅢ)に勝ったアバコ Abaco が5対2の1番人気。
レースは3番人気(5対1)のシルヴァレット Silverette が逃げ、アバコは後方3番手からの追い込み策。直線、逃げるシルヴァレットを捉えてソマリ・レモネード Somali Lemonade が先頭に立った所にアバコが大外から追い上げましたが、前半6番手に控えていた5番人気(8対1)のネイプルズ・ベイ Naples Bay が巧くインコースを衝いて抜け出し、ソマリ・レモネードを1馬身差し切っての逆転劇。頭差でアンジェリカ・ザパタ Angelica Zapata が3着に粘り込み、アバコの追い上げは4着まで。
クリストフ・クレメント厩舎、ジョー・ブラーヴォ騎乗のネイプルズ・ベイは、これで引退が決まっている6歳牝馬。去年は5戦して未勝利、勝鞍は4歳時にベルモント競馬場でノーブル・ダムゼル・ステークス(芝GⅢ)以来7レース振りのことでした。GⅠ3勝の他ベルモント・ステークスで2着、BCクラシックでも2度2着して種牡馬としても成功しているメダリア・ドロ Medaglia d’Oro の半妹という良血で、初年度の種付けは彼のフランケル Frankel 。競走馬としてよりも、繁殖牝馬としての期待の方が高いネイプルズ・ベイの引退レースでした。
一方、ニューヨークのアケダクト競馬場も去年に続きジェローム・ステークス Jerome S (GⅡ、3歳、1マイル70ヤード)が幕開け。競馬場の周りは積雪が映し出されていましたが、内のダート・コースは fast 。8頭が出走し、前走11月のナシュア・ステークス(GⅡ)では不利を克服して3着に食い込んだノーブル・ムーン Noble Moon が4対5の1番人気。
好スタートから先手を奪ったのはピン・アンド・ウイン Pin and Win でしたが、これをピタリと2番手に付けたノーブル・ムーン、向正面中程で先頭を奪うと、そのまま押し切り、2着2番人気(7対2)のクラシック・ジアックンロール Classic Giacnroll に2馬身差を付けての快勝です。更に2馬身半差で3番人気(6対1)のスコットランド Scotland が3着。
リア・ジャルマーティ厩舎、これが初コンビとなるイラッド・オルティス騎乗のノーブル・ムーンは、9月にベルモント競馬場で新馬勝ち。2戦目のナシュア・ステークスを経て、これが3戦目。もちろんステークスもG戦も初勝利で、このあとはガッサム・ステークス(GⅢ)に向かう由。
昨年末から開催がスタートしたカリフォルニアのサンタ・アニタ競馬場は、サンタ・イネズ・ステークス Santa Ynez S (GⅡ、3歳牝、6.5ハロン)からスタート。僅か4頭立てと寂しいメンバーになり、4対5の1番人気に支持されたのは、12月8日にハリウッドのデビュー戦を5馬身4分の1差で圧勝したバファート厩舎のクラッシュド・ヴェルヴェット Crushed Velvet 。差のない2番人気(6対5)にはハリウッド・スターレット(GⅠ)2着のテイスト・ライク・キャンディー Taste Like Candy が推され、両馬の一騎打ちという前評判でした。
スタート・ダッシュが良かったのは3番人気(5対1)のオウサム・ベビー Awesome Baby 。これをピタリとマークするようにテイスト・ライク・キャンディーがマークし、クラッシュド・ヴェルヴェットはやや離れた3番手。直線、本命馬が前との差を縮めに掛かりましたが、前2頭の脚色は衰えず、結局はオウサム・ベビーが半馬身差で逃げ切り、テイスト・ライク・キャンディーとクラッシュド・ヴェルヴェットの差も2馬身分の3差まで。所謂行った行ったの結果に終わりました。
勝馬は、本命馬と同じボブ・バファート厩舎、マイク・スミス騎乗。デル・マーでデビュー勝ちしたあと1番人気で臨んだデル・マー・デビュタント(GⅠ)では8頭立て7着と惨敗。続いてもGⅠのシャンデリア・ステークスで5着に敗れ、今回は3ヶ月ぶりの雪辱戦でした。バファート師はサンタ・イネズ3勝目。
最後はサン・ガブリエル・ステークス San Gabriel S (芝GⅡ、4歳上、9ハロン)。firm の芝コースに、4頭が取り消して7頭立て。既にこのレースを2回も制しているジェラニモ Jeranimo が6対5の1番人気。騎乗するラファエル・ベハラノ騎手には6連覇が掛かるという注目の古馬芝戦です。
スタートから先手を取ったのは、1番枠スタートで2番人気(2対1)のスリム・シェイディー Slim Shady 、好ペースで逃げ切りを図ります。前半余裕の最後方待機策に出たジェラニモ、直線では大外一気の瞬発力を爆発させると、逃げるスリム・シェイディーを1馬身4分の1差切って捨てる絵に描いたような差し切り勝ち。更に1馬身半差で3番手追走のアーティック・ノース Artic North が3着に入りました。
マイケル・ペンダー厩舎、期待通りこのレース6連覇を達成したベハラノ騎乗のジェラニモは、去年、そして2010年12月版のサン・ガブリエルに続き、このレース3勝目。一昨年は2着でしたから、4回の挑戦で3勝2着1回というレースの新記録更新です。6歳時のシューメーカー・マイル、去年(7歳)のエディー・リード・ステークスと二つのGⅠを含め、G戦は8勝目となる8歳馬。前走はBCターフ・スプリント(芝GⅠ)に挑戦して7着に終わりましたが、ここではトップ・ハンデ(123ポンド)をモノともせず実力の違いを見せ付けました。
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