2014サラトガの閉幕
9月1日はレイバー・デイの休日、アメリカではこの日も4つの競馬場でG戦が行われました。特にニューヨーク州のサラトガ競馬場はこの日がグランド・フィナーレ、夏を締め括ったのはどんな馬たちだったのでしょうか。
ということでサラトガ競馬場の2鞍、先に行われたのは夏の2歳チャンピオンを選ぶホープフル・ステークス Hopeful S (GⅠ、2歳、7ハロン)です。前日の雨の影響が残り、馬場は good 。7頭が出走し、前走のトライアルであるサラトガ・スペシャル(GⅡ)に勝ったアイ・スペント・イット I Spent It を抑えて3対5の1番人気に支持されたのは、デビュー戦を圧勝したコンペティティヴ・エッジ Competitive Edge 。アイ・スペント・イットは8対5の2番人気で続きます。
レースは3番人気(12対1)のシグナチュア・キャット Signature Cat が逃げ、これにアイ・スペント・イットが執拗に並び掛ける展開。これを3番手で見ていたコンペティティヴ・エッジが最終コーナー手前でスパートして抜き去ると、後は独走でアイ・スペント・イットに5馬身4分の3差を付ける圧勝でした。更に9馬身差で5番手から伸びたシャーム Sharm が3着。
トッド・プレッチャー厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗コンペティティヴ・エッジは、7月26日にサラトガの新馬戦を10馬身4分の1差で鮮烈デビュー。これで2戦2勝となります。同馬の父スーパー・セイヴァー Super Saver はプレッチャー師が手掛けた2010年のケンタッキー・ダービー馬で、今年の2歳が初産駒。実は2着のアイ・スペント・イットも同馬の産駒で、スーパー・セイヴァー産駒のワン・ツー・フィニッシュでもありました。前途洋々たる新種牡馬と言えるでしょう。
コンペティティヴ・エッジは、このあともう一戦してからBCジュヴェナイルに向かう予定。一方敗れたアイ・スペント・イットは、この日は全てのリズムが悪い方に向かっていたようで、これで終わる馬ではないでしょう。なおプレッチャー師はこれが通算でステークス999勝に当たるそうで、11回目となる開催リーディング・トレーナーを確実にしました。
サラトガを締め括ったG戦はサラナック・ステークス Saranac S (芝GⅢ、3歳、9ハロン)。good の馬場に3頭が取り消して7頭立て。3月にタンパ・ベイ・ダービー(GⅡ)に勝っているリング・ウィークエンド Ring Weekend が3対2の1番人気。前走芝の一般ステークスで2着しており、芝への適性も充分と見做されていました。
ブービー人気(15対1)のスムース・ダディー Smooth Daddy が逃げ、リング・ウィークエンドは3番手追走。直線では粘る逃げ馬を外から追い上げ、最後はスムース・ダディーに2馬身4分の3差を付けて優勝。更に4馬身4分の3差で4番人気(6対1)のカボ・キャット Cabo Cat が3着に入りました。
グレアム・モーション厩舎、最終日のG戦ダブルを達成したジョン・ヴェラスケス騎乗のリング・ウィークエンドは、2歳時は未勝利。今年2月に5戦目でガルフストリームのダート・コースで初勝利を挙げ、タンパ・ベイ・ダービーに連勝していました。その後プリークネスに挑戦して5着、芝コースにも適性を見せていたことから、前走に続いて芝を使い、二つ目のG戦勝利に繋げています。
以上でサラトガは閉幕、ニューヨークの秋は9月5日からベルモント競馬場が開幕する予定です。
次にペンシルヴァニア州のパークス・レーシング競馬場から。レーバー・デイには3鞍のG戦が組まれており、最初はアメリカでは数少ない長距離戦のグリーンウッド・カップ Greenwood Cup (GⅢ、3歳上、12ハロン)。fast の馬場に10頭が出走し、長距離のスペシャリストと言えるマイクロマネッジ Micromanage がイーヴンの1番人気。
レースは2番人気(2対1)のエイブラハム Abraham が逃げ、マイクロマネッジは後方から。前半4番手から徐々に順位を上げた5番人気(10対1)のエヴァー・ライダー Ever Rider が先頭で直線に入りましたが、前半7番手の内に付けていた9番人気(25対1)の伏兵キャリー・ストリート Cary Street が内ラチ沿いにスルスルと抜け出し、エヴァー・ライダーに1馬身差を付ける番狂わせ。マイクロマネッジも外から追い上げましたが、2着馬から5馬身差の3着まででした。
ブレンダン・ウォルシュ厩舎、ミゲル・メナ騎乗のキャリー・ストリートは、これがステークス・デビュー。前走は6月末のチャーチル・ダウンズのアローワンス戦2着で、その前には同じチャーチル・ダウンズで9ハロンのアローワンスに勝っていました。通算では17戦5勝2着4回3着2回となるスマーティー・ジョーンズ Smarty Jones 産駒の5歳せん馬です。
そのキャリー・ストリートの父に因んだのがスマーティー・ジョーンズ・ステークス Smarty Jones S (GⅢ、3歳、8.32ハロン)。1頭が取り消して9頭立て。ペガサス・ステークス(GⅢ)の勝馬で、ハスケル・インヴィテーショナル(GⅠ)でも2着したアルバーノ Albano が7対5の1番人気。
レースは5番人気(12対1)のエイント・ゴット・タイム Ain’t Got Time が逃げましたが、4番手を進んだアルバーノが直線で一旦は先頭。しかし内から6番人気(13対1)のクラシック・ジャックンロール Classic Giacnroll が抜けて勝ったかと思われた時、前半6番手を進んでいた3番人気(7対2)のプロトニコ Protonico が馬群を割るように末脚を爆発させ、クラシック・ジャックンロールを半馬身捉えて快勝。1馬身4分の3差でアルバーノは3着に終わりました。
ジョー・ブラーヴォが騎乗したプロトニコは、サラトガでステークス1000勝に王手を掛けていたトッド・プレッチャー師の管理馬。史上二人目となる1000勝調教師誕生をアシストしました。因みに最初の1000勝調教師は、プレッチャーの師でもあるウェイン・ルーカス師。現在1076勝で首位を走っています。プロトニコは今年からプレッチャーの元に移籍してきた馬で、6月にベルモントのアローワンス戦に勝ち、前走はサラトガの一般ステークスで頭差の2着。この時勝ったのがトラヴァース覇者ヴィ・イー・デイ V.E.Day ですから、この馬も相当な器であることが類推できましょう。
パークスのG戦3鞍目はターフ・モンスター・ハンデキャップ Turf Monster H (芝GⅢ、3歳上、5ハロン)。芝コースは good 、11頭が出走してきました。2011年と2012年にこのレースを制しているベンズ・キャット Ben’s Cat が2対1の1番人気。去年は3着でしたが、今年はトライアルとなるパークス・ダッシュ(芝GⅢ)で3連覇を達成して絶好調、3度目の勝利に期待が掛かります。
各馬一斉のスタートから伏兵(80対1)のベルリーノ・ディ・タイガー Berlino di Tiger が飛び出しましたが、5番手に付けた6番人気(16対1)のシャープ・センセーション Sharp Sensation が直線で前を捉え、前半7番手で控えたベンズ・キャットの急襲を首差凌いでの逆転勝ち。本命馬は仕掛け所で一瞬バランスを崩したのが惜しまれます。1馬身半差で3番人気(3対1)のタイトゥンド・タッチダウン Tightened Touchdown が3着。
リード・ベイカー厩舎、デヴィッド・モーラン騎乗のシャープ・センセーションは、6月にプレスク・アイルの5.5ハロン(タペタ)でレコード勝ち、続いて一般ステークス(カール・ボーイズ・メモリアル)でステークス初勝利を記録していた4歳せん馬です。
祝日3つ目の競馬場は、モンマス・パーク競馬場。ボイリング・スプリングス・ステークス Boiling Springs S (芝GⅢ、3歳牝、9ハロン)は去年は施行されませんでしたが、1年の空白で戻ってきました。今年も8月30日に予定されていましたが頭数が揃わず、急遽レイバー・デイに延期して何とか開催に漕ぎ着けた経緯もあります。firm の馬場に1頭が取り消して8頭立て。フランスから移籍してこれがアメリカでの4戦目となるリトル・ジャーニー Little Journey が7対5の1番人気。前走レイク・ジョージ・ステークス(芝GⅡ)では7着と奮いませんでしたが、その前にアメリカン・オークス(芝GⅠ)で2着した実績があります。
レースは伏兵(11対1)スンバ・サンセット Sumba Sunset が逃げ、そのまま快調に飛ばしてあわや逃げ切りかと思われましたが、前半最後方で待機していた2番人気(7対2)のムニラー Munirah が直線で内ラチ一杯を衝き、ゴール寸前で頭差抜けての優勝。半馬身差でシーズ・ノット・ヒア She’s Not Here が3着に入り、リトル・ジャーニーは4番手追走も伸び脚を欠いて5着敗退。
グレアム・モーション厩舎、トレヴァー・マカーシー騎乗のムニラーは、未だ今回が3戦目。今年6月にプレスク・アイル競馬場のタペタ・コースでデビュー勝ちし、前走デラウエア・パークの芝アローワンス戦が2着。G戦はもちろん、ステークスも初挑戦での初勝利となりました。
最後は、残りわずかとなったカリフォルニアのデル・マー競馬場からイエロー・リボン・ハンデキャップ Yellow Ribbon H (芝GⅡ、3歳上牝、8.5ハロン)。firm の馬場に1頭が取り消して8頭立て。サンタ・アニタでロイヤル・ヒロイン・ステークス(芝GⅡ)とウイルシャー・ステークス(芝GⅢ)に勝っているパランダ Parranda が9対5の1番人気。
レースはブービー人気(17対1)のニード・ユー・ナウ Need You Now が逃げ、パランダは5番手追走。直線、パランダも伸びましたが、前半後方2番手で控えていた2番人気(9対2)のミス・セレンディピティー Miss Serendipity が大外から瞬発力を爆発させ、パランダに1馬身4分の1差を付けて優勝。首差で3番人気(9対2)のコージ・アップ・レディー Cozze Up Lady が3着とほぼ順当に収まりました。
ロナルド・マッカナリー厩舎、ブライス・ブラン騎乗のミス・セレンディピティーは、前走ジョン・C・マビー・ステークス(芝GⅡ)で1番人気に支持されながら最下位6着に敗退していたアルゼンチン産馬。その前5月にはゲイムリー・ステークス(芝GⅠ)に勝っています。
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