女王に熱い視線

ドンカスター競馬場のセントレジャー開催、3日目のG戦は3鞍、good 、所により good to firm とより乾燥した馬場で行われました。

最初は2歳短距離のフライング・チルダース・ステークス Flying Childers S (GⅡ、2歳、5ハロン)。1頭が取り消して14頭立て。ここまでカラーのリステッド戦を含めて2戦2勝のアイルランド馬、アイニッペ Ainippe が7対2の1番人気に支持されていました。

レースは、スタートから先手を奪ったモールコム・ステークス(GⅢ)勝馬で3番人気のコタイ・グローリー Cotai Glory の独壇場。スピードの違いを見せ付けて逃げ切り勝ち目前でした。しかし最後の1ハロン、コタイ・グローリーは物見をしたためか突然スタンド側に寄れ、ジョージ・ベイカーの懸命な制御にも拘らず鞍づれを起こして落馬してしまいます。
勝負はこのアクシデントには無関係の外を追い上げた2頭の争い、5番人気(8対1)のビーコン Beacon が12番人気(50対1)の伏兵アストロフィジックス Astrophysics を頭差抑えての優勝です。半馬身差で4番人気(15対2)のアクセプテッド Accepted が3着、アイニッペは5着敗退。そう言っては失礼ですが、勝った馬はラッキーだったことは間違いないでしょう。コタイ・グローリーは故障したわけではなく、人馬ともに無事だったことは何よりでした。

リチャード・ハノン厩舎、ウイリアム・ビュイック騎乗のビーコンは、2戦目の初勝利からサンダウンのリステッド戦まで3連勝。そのあとモールコム・ステークス(GⅢ)がコタイ・グローリーの3着、前走ジムクラック・ステークス(GⅡ)は6着に終わっていました。同馬はGⅠに3勝したパコ・ボーイ Paco Boy の初産駒で、最初のG戦勝馬、父を代表する1頭と言えるでしょう。

続いては、GⅡながら長距離三冠の第3弾として知られるドンカスター・カップ Doncaster Cup (GⅡ、3歳上、2マイル2ハロン)。12頭が出走し、去年のゴールド・カップを制したエリザベス女王のエスティメイト Estimate が11対8の1番人気。今年のゴールド・カップは感動を呼ぶ2着でしたが、その後レース後の検体から薬物が検出されて世界中の話題になったことは記憶に新しい所。まだ最終結論が出ていないためゴールド・カップ2着が剥奪される可能性はありますが、馬もレースも関係ないことで、ここでの復権に期待が掛かります。

レースはヴェリー・グッド・デイ Very Good Day の逃げで始まりましたが、早目先行から抜け出したエスティメイト、後続に詰め寄られる場面もありましたが、最後は二の脚を使ってグイと伸び、3番人気(13対2)のウィッブラッシュ・ウィリー Whiplash Willie に1馬身4分の1差を付けて二冠達成です。首差で10番人気(80対1)のカラン Kalann が3着。3連覇が掛かった2番人気(9対2)のタイムズ・アップ Times Up は8着と、今年は残念な結果に終わりました。
御存知サー・マイケル・スタウト厩舎、ライアン・ムーア騎乗のエスティメイトは、今年はアスコット・ゴールド・カップから始動。三冠のもう一鞍グッドウッド・カップは距離が短く(2マイル)8着の凡走でしたが、前走ロンステール・カップは追い込むも距離が一つ足りずに2着。ここでは最後の2ハロンが効果を上げての快勝です。意外にもスタウト師はドンカスター・カップ初制覇。長距離2冠は半兄エンゼリ Enzeli と並びました。
懸案の薬物問題は9月25日、オーソリティーによる事情聴取を経て採決が下る予定。どうも飼葉に薬物が混入していたのが原因のようですが、ルールはルール、結果はたとえ女王でも厳粛に受け入れることになるでしょう。このあとのエスティメイト、可能性としてはアスコット(長距離チャンピオン)、パリ(カドラン)、メルボルン・カップが考えられますが、最終決定は女王と、その競走馬責任者が決めること。ただオーストラリアからは是非女王の馬に参戦してもらいたいという要望が殺到しているのも事実で、女王にとっては暫く苦慮の日々が続きそうですね。

三日目の最後は2歳牝馬のマイル戦、メイ・ヒル・ステークス May Hill S (GⅡ、2歳牝、1マイル)。直線コースで行われるレースで、8頭立て。前走スイート・ソレラ・ステークス(GⅢ)に勝ったムラーカバ Muraaqaba が13対8の1番人気。

レースは3番人気(13対2)アロンソア Alonsoa の逃げで始まり、最後方に待機した2番人気(11対4)のアグネス・スチュワート Agnes Stewart が先に抜けた本命ムラーカバを1馬身4分の1差捉えて優勝。首差で6番人気(14対1)のシャガー Shagah が3着に入りました。
アイルランドのエドワード・ライナム厩舎、ウイリアム・リー騎乗のアグネス・スチュワートは、フェアリーハウスで新馬勝ち、前走2戦目のシルヴァー・フラッシュ・ステークス(GⅢ)は2着で、ここで勝つにはもう一段の成長が必須と考えられていた存在です。しかしマイル戦初挑戦でそれを達成した今、1000ギニーには16対1のオッズが出されました。今期はフィリーズ・マイル(GⅠ)に挑戦して来年に備えたいとのこと、次走が真の試金石となるでしょう。

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