帰ってきたスピード・サミット

日曜日はG戦の少ないアメリカですが、昨日は二つの競馬場で合計6鞍のG戦が行われました。取り急ぎレポートして行きましょう。

先ずはガルフストリーム・パーク競馬場。恐らくこの開催そのものが新規?ではないかと思われますが、一昨年一杯で閉鎖されたカルダー競馬場で行われていたG戦が揃って復活しました。全てが6ハロンと7ハロンで行われるため、名付けて「サミット・オブ・スピード」開催。
全部で4鞍の短距離G戦が並びましたが、ブリーダーズ・カップへの優先出走権が与えられるレースあり、かつてはGⅠだったレースありと、忙しい中にも注目すべきスプリントが揃いました。

最初はアザレア・ステークス Azalea S (GⅢ、3歳、7ハロン)。fast の馬場に9頭が出走し、前走同じ競馬場で行われた一般ステークス(タンジェロ・ハンデ)に勝ったウアスカ Huasca が3対2の1番人気。
短距離戦ということでスタートから激しいハナ争いが演じられましたが、2番人気(3対1)のドッグウッド・トレイル Dogwood Trail が先手を取り、ウアスカは6番手から。直線猛追した本命馬でしたが、結局はドッグウッド・トレイルがウアスカに1馬身4分の1差を付けて逃げ切り勝ち。更に2馬身4分の3差で5番人気(9対1)のアイム・ア・ルッカー I’m a Looker が3着。
スタンレー・ゴールド厩舎、ヘスス・リオス騎乗のドッグウッド・トレイルは、これがステークスそのものも初勝利。前走タンジェロ・ハンデでは本命ウアスカの2着していた馬で、これで通算成績は6戦3勝2着2回。3月にはやはりガルフストリームの一般ステークス(エニー・リミット・ステークス)でも2着していました。

二つ目の3歳7ハロン戦は、牝馬によるキャリー・バック・ステークス Carry Back S (GⅢ、3歳牝、7ハロン)。10頭が出走し、休養明けのバルベイドス Barbados が6対5の1番人気。去年から今年の初めにかけてハッチェソン・ステークス(GⅢ)を含めて3連勝した馬ですが、軽度の骨折のためそれ以来休養を余儀なくされていました。
これも激しい先頭争いから抜け出したのは5番人気(8対1)のブルーグラス・シンガー Bluegrass Singer 、バルベイドスは5番手で待機。2番手を追走していた2番人気(5対1)のグランド・ビリ Grand Bili が第4コーナー手前で逃げ馬を捉えると、そのまま直線で追い上げるバルベイドスに1馬身差を付けて優勝。4馬身半差の3着には、これも休養明けの7番人気(15対1)フアン・アンド・ビナ Juan and Bina が最後方から追い込みました。2・3着は敗れたとは言え休み明けのレース、共に次は狙い目でしょうか。
3着馬も管理するグスターヴォ・デルガド厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のグランド・ビリは、デビュー戦に勝った後アローワンス戦と二つの一般ステークスで3連敗。しかし前走は2着(ビッグ・サイプレス・ステークス、7ハロン)しており、使われて良くなってきたスプリンターと言えそうです。

二つの7ハロン戦のあとは、更に1ハロン短い6ハロン戦が続きます。プリンセス・ルーニー・ハンデキャップ Princess Rooney H (GⅡ、3歳上牝、6ハロン)は一昨年までカルダー競馬場で行われていたGⅠ戦。今年から場所を移し、GⅡに格下げされての一戦となりましたが、勝馬にはBCフィリー・アンド・メア・スプリントへの優先出走権が付与されます。10頭が出走し、既にGⅢを3勝しているメリー・メドウ Merry Meadow が7対5の1番人気。
先手を取ったのは3番人気(9対2)のフラッターバイ Flutterby 、メリー・メドウは指定席の2番手でこれをマークします。直線に向いて外から逃げ馬を捉えたメリー・メドウ、そのままフラッターバイを1馬身4分の3差引き離して人気に応えました。更に2馬身半差で4番人気(7対1)のキス・トゥ・リメンバー Kiss to Remember が後方2番手から追い込んで3着。
マーク・ヘニング厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のメリー・メドウは、11戦目で漸く初勝利を挙げた5歳馬ですが、去年はヴァグランシー・ハンデ(GⅢ、6.5ハロン)、シュガー・スワール・ステークス(GⅢ、6ハロン)に勝ち、今期も2月にハリケーン・バーティー・ステークス(GⅢ、6.5ハロン)に優勝。前走3月のインサイド・インフォメーション・ステークス(GⅡ)では距離が7ハロンと伸びたこともあってか、1番人気に支持されながらも6着に敗退していました。ここで暫く休養を取り、得意の6ハロンで再び快勝。今年のBC出走権を取得しました。

スピード・サミットの最後はスマイル・スプリント・ハンデキャップ Smile Sprint H (GⅡ、3歳上、6ハロン)。これも勝馬にはBCスプリントへの出走権が与えられる注目の一戦です。9頭が出走し、去年のBCスプリント覇者ワーク・オール・ウィーク Work All Week が4対5の断然1番人気。
発走直前、5番人気(11対1)のフォーリング・スカイ Falling Sky がゲートをこじ開け、再びゲートインをやり直すアクシデント。仕切り直しから先手を奪ったのは1番枠発走の4番人気(7対1)フェイヴァリット・テール Favorite Tale で、ワーク・オール・ウィークは3番手から。直線、逃げるフェイヴァリット・テールに追い縋った本命馬でしたが、結局その差は4馬身4分の1差まで広がり2着まで。1馬身4分の1差3着には、2番手を追走した3番人気(6対1)のワイルドキャット・レッド Wildcat Red の順。なおワーク・オール・ウィークはスタートのアクシデントの煽りを受け、出血こそ無かったものの顔面に軽傷。レースに影響が無かったは言えないでしょう。
ガダルーペ・プレシアード厩舎、エドガー・ザヤス騎乗のフェイヴァリット・テールは、去年のBCスプリントには権利が無く参戦できなかったペンシルヴァニア産の4歳せん馬。G戦は去年9月の地元、パークス・レーシングでギャラント・ボブ・ステークス(GⅢ)に勝って以来の2勝目。前走ベルモントのトゥルー・ノース・ステークス(GⅡ)は5着でしたが、今年は確実にBC出走権を獲得し、この後は地元のレースを使って本番に向かう予定です。

昨日のもう一箇所はモンマス・パーク競馬場。ここはGⅠを含むG戦2鞍で、最初はサルヴァトーレ・マイル・ステークス Salvator Mile S (GⅢ、3歳上、8ハロン)。fast の馬場に3頭が取り消して7頭立て。オークローン・ハンデ(GⅡ)とレイザーバック・ハンデ(GⅢ)に連勝中のレース・デイ Race Day が4対5の断然1番人気。
レースは最低人気(50対1)のファビュラス・キッド Fabulous Kid が逃げましたが、本命レース・デイはスタートで他馬と接触する不利があり後方から。そのまま勝負に絡むことなく6着でレースを終えてしまいました。一方2番手を追走したジョイント3番人気(6対1)のブレイドスター Bradestar 、向正面中程で早くも先頭を奪うと、後方から追い込む2番人気(2対1)のレッド・ヴァイン Red Vine に2馬身差を付ける快勝。1馬身4分の1差で早目に2番手に押し上げたジョイント3番人気のヴァリッド Valid が3着でした。
エディー・ケナリー厩舎、コーリー・ラヌリー騎乗のブレイドスターは、去年のこのレースの2着馬。去年は2月にフェア・グラウンズでマインシャフト・ハンデ(GⅢ)、9月にはチャーチルでアック・アック・ハンデ(GⅢ)に勝った5歳馬で、3月のドバイ遠征ゴドルフィン・マイル(地元GⅡ)では着外に終わっていました。今期は5月にクレーミング戦3着からアメリカに復帰、三つ目のG戦タイトルを獲得しています。

昨日の最後はユナイテッド・ネイションズ・ステークス United Nations S (芝GⅠ、3歳上、11ハロン)。勝馬にはBCターフへの優先出走権が与えられます。firm の馬場に9頭立て。去年の勝馬で芝チャンピオンに選ばれたメイン・シークエンス Main Sequence が8対5の1番人気。去年はユナイテッド・ネイションズからBCターフまで芝のGⅠ戦に4連勝していましたが、シーマ・クラシック(GⅠ)7着からの巻き返しに期待が掛かります。
レースは最低人気(99対1)のシャイニング・クーパー Shining Cooper が捨て身の大逃げ。詰め寄られながらも直線まで何とかリードを保っていましたが、前半7番手を追走していた2番人気(4対1)のビッグ・ブルー・キッテン Big Blue Kitten が外から急襲、同じく最後方から大外を追い込むスランバー Slumber に1馬身半差を付ける鮮やかな差し切り勝ちです。混戦の2着争いでしたが、首差で3番人気(9対2)のトゥワイライト・エクスプレス Twilight Eclipse が3着、ハナ差でシャイニング・クーパーが4着に粘る接戦。人気のメイン・シークエンスはこの日はオフだったようで、7着敗退に終わりました。
1・2着でワン・ツー達成のチャド・ブラウン厩舎、ジョー・ブラーヴォ騎乗のビッグ・ブルー・キッテンは、一昨年のユナイテッド・ネイションズ勝馬で、GⅠはこれが3勝目となる7歳馬。今期は5月にフォート・マーシー・ステークス(芝GⅢ)に勝ってシーズン・デビューを快勝、これでG戦2連勝とし、秋のBCを目指します。

 

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