これぞ女傑の走りだ!

8月も4週目を迎え、アメリカ夏競馬も折り返し点を通過した感じがします。今週はサラトガとデル・マーに加えてモンマス・パーク、そして土曜日はシカゴでもG戦が行われました。

例によってサラトガ競馬場のアラバマ・ステークス Alabama S (GⅠ、3歳牝、10ハロン)から。夏場の3歳牝馬GⅠ戦とあって fast の馬場に7頭立て。ケンタッキー・オークス馬ラヴリー・マリア Lovely Maria が出走してきましたが、3対1の2番人気。これを抑えて2対1の1番人気に支持されたのは、エイコーン・ステークス(GⅠ)、CCAオークス(GⅠ)を含めて4連勝中のカーラライナ Curalina でした。
レースは5番人気(6対1)のエンべリッシュ・ザ・レース Embellish the Lace の逃げで始まり、カーラライナは2番手、ラヴリー・マリアも3番手を追走。この順位のまま直線に入り、人気の2頭が交わすかと思われましたが両馬とも動きが鈍く、エンべリッシュ・ザ・レースまんまの逃げ切り勝ち。1馬身4分の1差2着にも4番手追走の4番人気(9対2)アイム・ア・チャッターボックス I’m a Chatterbox が食い込み、3馬身半差で漸くカーラライナが3着。ラヴリー・マリアは6着大敗です。人気2頭には春の疲れが出たのでしょうか。
アンソニー・ダトロウ厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のエンべリック・ザ・レースは、これがG戦初勝利。ダトロウ師にとってもアラバマは初制覇となります。同馬は去年の暮と今年初めに一般戦を大差勝ちしましたが、マザー・グース・ステークス9着の後暫く休養していた馬で、秋への余力は十分。夏を境に本格化しそうな雰囲気を持っています。

続いてモンマス・パーク競馬場のモンマス・オークス Monmouth Oaks (GⅢ、3歳牝、8.5ハロン)。fast の馬場に11頭が出走し、クラシック路線を使われてきたエスケンフォーマネー Eskenformoney が5対2の1番人気。その他の詳しい人気は判りません。
10対1のレディー・セリーナ Lady Serena が逃げましたが、同じ10対1のホワイト・クローヴァー White Clover が先頭に立って直線。これを追った馬の中から2番人気(3対1)のディライトフル・ジョイ Delightful Joy が抜け出し、内ラチ沿いに追い込む本命エスケンフォーマネーに1馬身4分の3差で優勝。更に半馬身差でホワイト・クローヴァーが3着に粘りました。
チャド・ブラウン厩舎、パコ・ロペス騎乗のディライトフル・ジョイは、前走ベルモントのアローワンスに勝ってのステークス初挑戦。これで通算成績は5戦3勝3着1回となります。

この日三つ目は、アーリントン・パーク競馬場のアーリントン=ワシントン・フューチュリティー Arlington-Washington Futurity (GⅢ、2歳、7ハロン)。去年は9月初めに行われていましたが、今年は8月中の開催です。ポリトラック・コースに2頭が取り消して11頭立て。出走馬中唯一のステークス勝馬(トレモント・ステークス)であるクックド・アンド・ローデッド Cooked and Roaded が6対5の1番人気。ここも詳しい人気は不明です。
レースは2番人気(2対1)のショーグッドShogood が先手を取り、そのままの逃げ切り勝ち。2馬身半差の2着には46対1の伏兵ヴァン・ダム Van Damme が入り、同じく2馬身半差で8対1のミサイル・ボム Missile Bomb が3着。人気のクックド・アンド・ローデッドは3番手追走も5着に終わっています。
スコット・ベッカー厩舎、クリストファー・エミー騎乗のショーグッドは、6月19日にアーリントンのデビュー戦で2着したあと現在のチームに転売され、前走7月16日に同じアーリントンで2着以下に7馬身以上の差を付けて逃げ切り勝ち。今回がステークス・デビューで、通算成績も3戦2勝となります。未だ未だ成長が見込めるレース内容でした。

最後にカリフォルニアのデル・マー競馬場から3鞍。何れも勝馬にはブリーダーズ・カップの優先出走権が付与されるレースで、有力各馬が秋を目指す重要なステップ・レース。最初のパット・オブライエン・ステークス Pat O’Brien S (GⅡ、3歳上、7ハロン)は1頭が取り消して僅かに4頭立て。BCの対象はもちろんダート・マイルです。ここ3戦2着惜敗が続いているアピーリング・テイル Appealing Tale が、GⅠ馬のワイルド・デュード Wild Dude を抑えて6対5の1番人気。
そのアピーリング・テイルがスタートから先頭に立ち、最後は2番手を追走していた2番人気(2対1)ワイルド・デュードとの一騎打ちになりましたが、最後は半馬身差のリードを保ってマッチレースを制しました。3着も3番手を追走していた4番人気(7対1)のインデクシカル Indexical で、スタート直後の順位のまま。
ピーター・ミラー厩舎、ジョセフ・タラモ騎乗のアピーリング・テイルは、上記の様に今期サン・パスカル・ステークス(GⅡ)、トリプル・ベンド・ハンデ(GⅡ)、そして前走サン・ディエゴ・ハンデ(GⅡ)とGⅡ戦での2着が続き、これがG戦初勝利となる5歳せん馬。

デル・マーの二つ目はデル・マー・ハンデキャップ Del Mar H (芝GⅡ、3歳上、11ハロン)。BCターフへの出走権を掛けたレースで、firm の馬場に1頭が取り消して8頭立て。サンタ・アニタでチャールズ・ウィッティンガム・ステークス(芝GⅠ)を制したアシュレーラヴズシュガー Ashleyluvssugar が9対5の1番人気。
レースは長距離とあって、5番人気(11対1)リトル・ジェリー Little Jerry がスローに落す淡々としたペース、全馬が7馬身程の中に入るコンパクトな流れ。前半は最後方で待機していた2番人気(2対1)のビッグ・ジョン・ビー Big John B が勝負所と見て第3コーナーで一気にスパート、3番手で直線に入ると、4番手から一旦は先頭に立った本命アシュレーラヴズシュガーに1馬身半差を付ける鮮やかな捲り勝ちです。更に1馬身差で2番手を追走した3番人気(4対1)のガネッシュ Ganesh が3着。
フィリップ・ダマト厩舎、ラファエル・ベハラノ騎乗のビッグ・ジョン・ビーは、去年に続きデル・マー・ハンデ2年連続制覇。前走メイン・コースのクーガー・ハンデ(GⅢ)を含む3連勝で、馬場状態に左右されない6歳せん馬としてBCターフの出走権を獲得しました。

そして最後はBCクラシックを掛けるパシフィック・クラシック Pacific Classic (GⅠ、3歳上、10ハロン)。10頭が出走してきましたが、何と言っても注目はこれが初めて牡馬相手の競馬となる女傑ビホールダー Beholder の挑戦で、GⅠクラスの男馬が相手でも2対1の1番人気。初挑戦の1マイル4分の1を克服できるかも注目です。
スタートで先手を奪ったのは2番人気(7対2)のバイエルン Bayern 、これに8番人気(23対1)のミッドナイト・ストーム Midnight Storm が競り掛け、ビホールダーは、2頭からやや離れて絶好の3番手で待機。第3コーナー、一気にビーホールダ―がスパートしてあっという間に後続との差を広げると、スタンドからは大歓声。直線、鞍上ゲーリー・スティーヴンスはほぼ持ったままの馬なりで独走態勢に持ち込むと、5番手から伸びた5番人気(7対1)のキャッチ・ア・フライト Catch a Flight に何と8馬身4分の1の大差を付ける衝撃的な圧勝劇。1馬身差で3番人気(9対2)のレッド・ヴァイン Red Vine が3着に入り、リチャード・マンデラ師のワン・ツー・フィニッシュ。
このレースを牝馬が制したのは、このレース25年の歴史で初めてのこと。また着差の8馬身4分の1は、2013年にゲーム・オン・デュード Game On Dude が付けた8馬身半に次ぐ2番目の大きな着差となります。これを馬なりで記録したのですから、ビーホールダ―のスーパー牝馬振りが判ろうというもの。
5歳馬ビホールダーに付いて改めて紹介することも無いでしょうが、これがGⅠ戦8勝目。BCはジュヴェナイル・フィリーズと、3歳時にディスタッフ(当時はレディーズ・クラシックと呼んでいた)を制しており、これで19戦14勝2着3回。敗戦と呼べるものはデビュー戦の4着、去年のオグデン・フィップス4着の2度だけで、ケンタッキー・オークス2着も華麗なる負けの一つ。果たして今年のBCは権利を得たクラシックで再度牡馬に挑むかは未定ですが、三冠馬アメリカン・フェイロー American Pharoah に土を付けるとすれば、彼女しかいないでしょう。果たして世紀の対決が見られるか?

 

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