読売日響・第553回定期演奏会

11月の定期が無かった読響、昨日は今年最後の12月定期をクリスマス電飾も眩しいサントリーホールで堪能してきました。
指揮者は、読響登場では少し間が開いた感のあるオスモ・ヴァンスカです。シベリウス生誕150周年を締め括るコンサートに相応しいプログラム。

シベリウス/交響曲第5番
     ~休憩~
シベリウス/交響曲第6番
シベリウス/交響曲第7番
 指揮/オスモ・ヴァンスカ
 コンサートマスター/萩田尚子(ゲスト)
 フォアシュピーラー/長原幸太

今回のコンマスは細身の女性がゲストで、後ほど調べたところではケルン放送交響楽団のコンサートマスターを務めている方だそうです。

さて私がヴァンスカの実演を初めて聴いたのが正にこの読響定期でのこと。古い記録を繰って見ると、2002年1月28日の第401回定期で、曲目も今回と同じオール・シベリウス・プロ。第4・第5の二つのシンフォニーの後にフィンランディアが凄まじい響きを立てていました。
当時私は読響からは大分長い間遠ざかっていましたが、世評を耳にして一度聴いてみようと思ったのが切っ掛け。何しろ下手糞時代の苦い記憶の方が多かったオケでしたから、この演奏会での見違えるようなサウンドに驚き、その4月から定期会員に復帰したのでしたっけ。ですからヴァンスカは読響再発見の恩人。今回も充足度は相当なレヴェルです。

この間の記録はあったり無かったりで記憶だけが頼りですが、先ずニールセンの交響曲全曲シリーズを鮮明に思い出します。初体験の作品も多く、私のニールセン感はヴァンスカによって育まれました。
続いてはベートーヴェンでしょうか。数年かけて全9曲を取り上げましたが、第7の様に圧倒されたものもあれば、第4の様に楽しめなかったものもありました。彼のアグレッシヴなスタイルが、全てには満足できなかったことを思い出します。
あとはアホの作品群。作曲自身が来日したこともありましたし、私にとっては初めてだった作曲家を識る絶好の機会だったことは間違いナシ。

ここまで聴いてきたヴァンスカ、私はテッキリ次の首席指揮者かと予想していましたが、結果は現在の通り。それ以後ヴァンスカを聴く機会が減ってしまったのは誠に残念。という意味でも、懐かしくマエストロのシベリウスを楽しんできました。
実は今回の3曲、ヴァンスカは今年のプロムスでも全く同じプログラムをロンドン交響楽団と演奏していました。今回も印象は全く同じで、敢えて付け加えることもありません。
御存知の様にヴァンスカはラハティ響とシベリウス全集を完成させていますし、同じレーヴェル(BIS)に手兵ミネソタ管弦楽団ともSACD盤によるシベリウス・チクルスをスタートさせています。5番に限れば初稿を含めて3種類の録音があるほどで、自家薬篭中の作品と言って良いでしょう。

その第5交響曲、プロムスの感想に何を書いたのか忘れていましたが、帰ってから読み返してみると、聴いてきたばかりの読響の演奏と全く同じ個所に惹かれていたことが判って苦笑。第2楽章のコントラバスの扱いは、ネット中継でも特に耳に残った箇所でした。

http://merrywillow.com/?p=5266

もう一箇所指摘しておくと、第3楽章の練習記号I。ミステリオーソと指示された弦の ppp によるトレモロを聴こえるか聴こえないかスレスレの弱音に落とします。ヴァンスカはダイナミクスの幅を最大限に活かし、緻密な譜読みでシベリウスの世界を立体的に構成して行く。言わば「剛」のシベリウスと呼べるでしょうか。
ミネソタとの最新録音(2011年)と比較しても印象は全く同じで、違っているのは今回の弦が対抗配置では無かったことくらい。ホルンを通常の様に下手に纏めるのではなく、3列目の木管楽器として横並びに配置していたこともヴァンスカの指示なのでしょう。

後半の2曲、特に第6番は最後に拍手を必要としない作品だということを改めて思いました。インキネンの2曲を休みなく続けた演奏の記憶が新しいだけに、6番の後の拍手が儀礼的に感じられます。読響会員の拍手も何か間が悪そう。
それでもヴァンスカがスコアを知り尽くした第7番の圧倒的な名演に、最後は盛大な拍手・歓声がホールを包みました。

ところで今回ヴァンスカ・読響は名曲シリーズやマチネーなどでもシベリウスの1番と2番を取り上げていました。残るは3番と4番のみ。折角マエストロがシベリウス・イヤーに来日したのですから、ここは思い切って全7曲を一気に取り上げるべきではなかったでしょうか。
私が企画担当だったら、「3番+ヴァイオリン協奏曲+1番」、「4番+2番」、「5番+6番+7番」をセット券で販売するよう提案しますね。それじゃお客が来ないよ、と没になること間違いなし??
次にヴァンスカが聴けるのは何時になるのでしょうか。

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