サンタ・アニタの新シーズンが開幕

愈々アメリカ競馬も今年最後の週末を迎えました。新年は未だ先ですが、12月の最終週は南国カリフォルニアに位置するサンタ・アニタ競馬場の冬競馬の幕開けでもあります。
12月26日の土曜日、同じく南のフロリダにあるガルフストリーム・パークとG戦競演が行われましたので、順にレポートして行きましょう。

先ずガルフストリーム・パーク競馬場は今年を締め括る3鞍のG戦(と言っても開催そのものは来年6月まで続く長丁場です)。牝馬の短距離戦シュガー・スワール・ステークス Sugar Swirl S (GⅢ、3歳上牝、6ハロン)は7頭が出走し、去年のサラトガでプライオレス・ステークス(GⅡ)に勝ち、前走BCフィリー・アンド・メア・スプリントで8着だったストーンスタティック Stonestatic が1対5の断然1番人気。
先行タイプのストーンスタティックを叩いてハナを切ったのは3番人気(8対1)のドグウッド・トレイル Dogwood Trail 、5番枠発走から内に切れ込む際にストーンスタティックが馬を抑える場面もありましたが、本命馬は3番手に控えます。逃げ馬を2番手でマークした2番人気(5対1)のベスト・ビヘイヴィアー Best Behavior が持ったまま第4コーナーでドグウッド・トレイルに並び掛けると、追い上げるストーンスタティックに2馬身差を付ける快勝。後方2番手から4番人気(10対1)のユー・ボート・ハー You Bought Her が追い上げ、ハナ差で3着に食い込みました。
マーチン・ウルフソン厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗のベスト・ビヘイヴィアーは、これがG戦初勝利となる5歳馬。去年のガルフストリームで一般ステークス(グラス・スリッパー・ステークス、8ハロン)に勝っており、ステークスは2勝目となります。今年初めは4回連続で2着となり、その後5か月ほど休養。これが馬をリフレッシュさせたようで、前走12月12日のランパート・ステークス(GⅢ)では同厩のカリ・スター Cali Star の2着し、調子の良さでG戦初タイトルを手にしました。通算成績は28戦9勝2着9回3着6回。

このあとの2鞍は何れも芝の12ハロンというアメリカでは長距離に分類されるG戦。先に行われた牡馬による第49回W.L.マックナイト・ハンデキャップ W.L.McKnight H (芝GⅢ、3歳上、12ハロン)は、firm の馬場に3頭が取り消して9頭立て。前走BCターフ6着から巻き返しを図るダ・ビッグ・ハース Da Big Hoss が7対5の1番人気。
スタートからハナを切ったのは最低人気(40対1)のビヨンド・スマート Beyond Smart でしたが、1週目のスタンド前で2番人気(3対1)のウォー・ダンサー War Dancer が交わして先頭に立ち、レースを引っ張ります。人気のダ・ビッグ・ハースは5番手に待機していましたが、3番手を進んだ4番人気(9対2)のチャーミング・キッテン Charming Kitten が向正面中程で2番手に上がると、第4コーナーを先頭で直線。ここで6番手に付けていた3番人気(7対2)のカイグン Kaigun が外から一気に追い上げてチャーミング・キッテンとの叩き合いとなりましたが、チャーミング・キッテンも譲らず、ゴールではカイグンに首差を付けて優勝。人気のダ・ビッグ・ハースも追い上げましたが、3馬身4分の1差の3着に終わりました。
トッド・プレッチャー厩舎、シュガー・スワールに続くG戦ダブルとなったジョン・ヴェラスケス騎乗のチャーミング・キッテンは、意外にもこれがG戦初勝利となる5歳馬。今期は初戦の6月にベルモントのアローワンス戦に勝って以来の2勝目ですが、10月半ばのシカモア・ステークス(芝GⅢ)では2着しており、去年4歳時にはベルモント・ゴールド・カップ・インヴィテーショナル(一般ステークス、16ハロン)にも勝っているステイヤー。これで通算成績は26戦7勝2着7回3着2回となりました。

今年最後のガルフストリームG戦は、牝馬の長距離戦ラ・プレヴォヤンテ・ハンデキャップ La Prevoyante H (芝GⅢ、3歳上牝、12ハロン)。1頭が取り消して11頭立て。前走アケダクトでロング・アイランド・ハンデ(芝GⅢ)を逃げ切った距離得意のゴールディー・エスポニー Goldy Espony がイーヴンの1番人気。
そのゴールディー・エスポニー、予想通りスタートから先頭に立つと、3番手を追走した9番人気(35対1)の伏兵マクシモヴァ Maximova に1馬身半差を付けるまたもや逃げ切り勝ち。展開は判っていても後続は手の打ち様も無い作戦勝ちでした。4番手追走から早目に仕掛けて勝負を挑んだ3番人気(8対1)のロザリンド Rosalind でしたが、やはり最後は力尽きてか首差の3着。凱旋門賞2連覇のトレーヴ Treve の妹トロフェー Trophee が出走していましたが、最後方から追い込んで5着と、姉を連想させるシーンもありました。
チャド・ブラウン厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のゴールディー・エスポニーは、前回もプロフィールを紹介したようにフランスからアメリカに転じた4歳馬で、今期3つ目のG戦勝ち。何れも芝の1マイル半での勝利で、多くのヨーロッパ出身馬と違って前で競馬するタイプがアメリカ競馬に適していると言えそうです。

一方、初日を迎えたサンタ・アニタ競馬場はG戦4鞍。内2レースがGⅠ戦で、これが今年最後のGⅠでもあります。開催は来年4月12日まで続く長丁場です。
その最初がデイトナ・ステークス Daytona S (芝GⅢ、3歳上、約6.5ハロン)、去年の最終G戦でもありましたが、今年は1日前のプログラム。サンタ・アニタ独特の丘の下りを利用した芝コースは firm 。2頭が取り消して12頭が出走し、BCターフ・スプリント6着のノー・サイレント No Silent が4対1で混戦の1番人気に支持されていました。
レースはジョイント10番人気(40対1)の伏兵ロケット・ヒート Rocket Heat が後続を離して思い切った逃げに出ましたが、最後は後方集団が一斉に追い上げる激しい展開。結局後方2番手から大外を突き抜けた8番人気(21対1)のトゥーウインディートゥーホールロックス Toowindytohaulrox が、首差で8番手から連れて追い込んだ最低人気(50対1)のコーストライン Coastline を抑えて優勝。同じく首差3着に逃げたロケット・ヒートが3着に粘るという大波乱になりました。人気のノー・サイレントは3番手追走も7着敗退。
フィリップ・ダマト厩舎、ティアゴ・ホセ・ぺレイラ騎乗のトゥーウインディートゥーホールロックスは、G戦3度目の挑戦で初勝利を掴んだ4歳牡馬。10月のサンタ・アニタではエディー・D・ステークス(芝GⅢ)でノー・サイレントの3着、11月のデル・マーでもシービスケット・ステークス(芝GⅡ)で3着と入着を果たしており、三度目の正直と言った所でしょう。

続いても芝コースのマチス・ブラザーズ・マイル Mathis Brothers Mile (芝GⅡ、3歳、8ハロン)。1頭が取り消して11頭立て。2歳時には三冠馬アメリカン・フェイロー American Pharoah を破ったこともあるGⅡ馬オム Om が同じ3歳馬相手では負けられないということもあって6対5の1番人気。
逃げる7番人気(18対1)アクセプタンス Acceptance を2番手でマークしたオム、第4コーナーで逃げ馬を外から捉えると、追い込む8番人気(23対1)パーフェクトリー・マジェスティック Perfectly Majestic に1馬身4分の3差を付ける横綱相撲で堂々人気に応えました。4馬身4分の3差が開いた3着には、4番人気(8対1)のヴィジランテ Vigilante の順。
ダン・ヘンドリックス厩舎、ゲーリー・スティーヴンス騎乗のオムは、デル・マー・ダービー、トゥワイライト・ダービーに続き今期3つ目のGⅡ戦勝利。前走ハリウッド・ダービー(芝GⅠ)では1番人気に支持されながら3着に終わりましたが、来年3月のフランク・キルロー・マイルで改めてGⅠ獲りに挑む予定だそうです。

そして残る2鞍が今年最後のGⅠ戦。先ず3歳牝馬のラ・ブレア・ステークス La Brea S (GⅠ、3歳牝、7ハロン)は1頭が取り消して9頭立て。既にGⅠ戦を2勝し、BCフィリー・アンド・メアでも4着したカヴォーティング Cavorting が7対5の1番人気。
レースは3番人気(7対2)のホット・シティー・ガール Hot City Girl が逃げ、そのまま快調に飛ばして逃げ切るかと見えましたが、前半最後方で待機していた5番人気(10対1)のバードアットザワイア Birdatthewire が大外を回って追い込み、内外大きく離れたゴール前の激戦を半馬身差し切っての鮮やかな逆転劇です。1馬身4分の1差の3着に、5番手から伸びたカヴォーティングが入りました。
デール・ロマンス厩舎、名手マイク・スミス騎乗のバードアットザワイアは、3歳初戦の1月にフォワード・ギャル・ステークス(GⅡ)に勝ち、2走後にはガルフストリーム・パーク・オークス(GⅡ)にも勝って二つ目のG戦。ケンタッキー・オークス5着のあと休養し、11月に復帰してからはチルッキ・ステークス(GⅡ)5着、フォールズ・シティー・ステークス(GⅡ)を4着と徐々に調子を上げ、遂に今年最後のレースで念願のGⅠ初制覇を果たしました。父サマー・バード Summer Bird は2009年のベルモント・ステークス馬で、父にとっても産駒のGⅠは初制覇となります。

最後はマリブー・ステークス Malibu S (GⅠ、3歳、7ハロン)。7頭が出走してきましたが、今年のBCスプリントを制してチャンピオン・スプリンターは間違いなしと言われるランハッピー Runhappy が1対2の断然1番人気に支持されていました。
そのランハッピー、好スタートから先手を取っての逃げ。2番人気(9対2)のマーキング Marking が競り掛ける気合を見せましたが、深追いすれば潰れると判断して2番手に控えます。結局そのままランハッピーがマーキングを3馬身半突き放して堂々の圧勝。4番手を追走した3番人気(7対1)のロード・ネルソン Lord Nelson が3着に上がって極めて順当な結果で今年のGⅠ戦線を終えました。
前走BCスプリントはマリア・ボレル厩舎、エドガー・プラード騎乗のコンビでしたが、ボレル調教師は金銭の絡む不名誉な起訴(窃盗疑惑)によって謹慎中。当初管理していたローラ・ヴォーラース女史が元に戻った形で調教しています。またプラードは落馬事故により入院中で、今回はゲーリー・スティーヴンスが乗り替わっての初騎乗でした。ランハッピーはキングズ・ビショップ・ステークスも含めて三つ目のGⅠ制覇となりますが、ヴォーラース師にとっては初めてのGⅠ勝利となります。

 

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください