泥んこ馬場のアケダクト

4月9日はダービー・オークスの丁度1か月前、全米でクラシックに向けたトライアル戦が一斉に行われ、1年のシーズンを通しても最も忙しい一日となりました。トライアルが分散するアメリカでは、クラシック・レース当日よりもG戦が多い程で、当ブログでも3部構成でレポートして行きましょう。

最初はニューヨークのアケダクト競馬場から。この日はトライアルの他に短距離GⅠも含めてG戦は5鞍。レース順に行きます。朝から雨が落ち始め、一日を通して寒いという生憎のコンディションでした。ダート・コースは fast で始まったものの最後は muddy にまで悪化しています。
先ず第3レースに組まれていたエクセルシオ・ステークス Excelsior S (GⅢ、4歳上、10ハロン)。去年は4月最終週に行われていましたが、今年はこの日のアンダーカード。未だ fast だった馬場に5頭が出走し、3歳時にトラヴァース・ステークス(GⅠ)で4着したこともあるキッド・クルーズ Kid Cruz が3対2の1番人気。
2番人気(9対5)のメイドフロムラッキー Madefromlucky が逃げ、キット・クルーズは3番手でマーク。徐々に先行馬との差を詰めた本命馬、第4コーナーでメイドフロムラッキーに外から並び掛けると、そのまま半馬身差を付けて優勝、人気に応えました。3着は6馬身4分の3の大差が付いて、最後方から追い込んだ最低人気(7対1)のターコ・ブラーヴォ Turco Bravo の順。
リンダ・ライス厩舎、ホセ・オルティス騎乗のキッド・クルーズは、これで19戦7勝となる5歳牡馬。G戦は3歳時のドワイヤー・ステークス(GⅢ)に続く2勝目で、一旦はクラシック路線に乗った馬の復活と言えそうです。今年は1月アケダクトの一般ステークス(ジャジル・ステークス)4着でスタートし、前走2月ローレルの一般ステークス(ジョン・B・キャンベル・ステークス)に勝ち、これでステークス連勝となりました。

次のG戦、第8レースのガゼル・ステークス Gazelle S (GⅡ、3歳牝、9ハロン)までに馬場はどんどん悪化し、遂には水が浮く muddy に。かつてはGⅠ戦だったレースも現在は降格してGⅡとなりましたが、オークスの前哨戦の一つであることに変りはありません。1頭が取り消して6頭立てとなり、去年11月末にドモワゼル・ステークス(GⅡ)を制しているルイス・ベイ Lewis Bay が8対5の1番人気。
先ず2番人気(9対5)のクレール・ド・リュヌ Claire de Lune が逃げましたが、3番手を進んだ本命ルイス・ベイが進出、第4コーナーでは外から逃げ馬を捉えると、ゴール前は鞍上が手綱を抑える余裕を持ったまま4番手追走の3番人気(7対2)ロイヤル・オブセッション Royal Obsession に1馬身半差を付けて堂々人気に応えました。3馬身の大差が付いて3着は2番手を追走した4番人気(5対1)のモー・ダムール Mo d’Amour 。
チャド・ブラウン厩舎、イラッド・オルティス騎乗のルイス・ベイは、上記ドモワゼル優勝のあと今年2月末にガルフストリーム・パークでダヴォナ・デール・ステークス(GⅡ)に出走し、キャスリン・ソフィア Cathryn Sophia に7馬身差を付けられて2着していました。ここで再び勝ちパターンを取り戻し、ケンタッキー・オークスで雪辱したいところでしょう。

続いても3歳戦で、第9レースのベイ・ショア・ステークス Bay Shore S (GⅢ、3歳、7ハロン)。muddy 馬場を嫌って2頭が取り消し6頭立て、前走ガルフストリームのデビュー戦を鮮やかに勝っていたユニファイド Unified が6対5の1番人気に推されていました。
好スタートからハナに立ったユニファイド、4番人気(10対1)のキング・クランツ King Kranz に絡まれながらも直線では振り切り、キング・クランツに3馬身差を付けて評判の高さを証明して見せました。8馬身差で4番手から伸びた3番人気(4対1)コックド・アンド・ローディッド Cocked and Loaded が3着。
ジェームス・ジャーキンス厩舎、ガゼルに続いてホセ・オルティス騎乗のユニファイドは新馬勝ちからいきなりGⅢに挑戦して2戦2勝。父はキャンディー・ライド Candy Ride と将来性も充分ですが、距離適性についてはこれからが試金石となりそうです。このまま短距離王者を目指すのか、それとも・・・。

そして愈々ケンタッキー・ダービーの100ポイント対象となるウッド・メモリアル・ステークス Wood Memorial S (GⅠ、3歳、9ハロン)。予定通り8頭が参戦し、ガッサム・ステークス(GⅢ)を含めて3戦無敗のシャガーフ Shagaf が9対5の1番人気。
3番人気(5対2)のマット・キング・コール Matt King Coal が逃げ、シャガーフは後方2番手からの追い込み策。2番手を追走していた2番人気(2対1)のアウトワーク Outwork が逃げ馬を外から捉えて直線に向かいましたが、内ラチ沿いに急襲してきたのは本命馬ではなく、最後方に置かれていた何と最低人気(81対1)で未勝利馬のトロジャン・ネイション Trojan Nation 。あわや大穴というスリリングなゴール前でしたが、何とかアウトワークがトロジャン・ネイションを頭差抑えての優勝。2馬身4分の1差で後方3番手から追い込んだ5番人気(10対1)のアドヴェンティスト Adventist が3着に入り、人気のシャガーフは初黒星、5着敗退に終わりました。
トッド・プレッチャー厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗のアウトワークは、これがステークス初勝利で4戦3勝。2歳時にはほぼ1年前の4月にキーンランドでデビュー勝ちしたのみで休養。今年2月にタンパ・ベイのアローワンス戦で2勝目を挙げ、前走3月のタンパ・ベイ・ダービー(GⅡ)で2着して注目された馬です。父アンクル・モー Uncle Mo がこのウッド・メモリアルで本命になりながら3着に敗退しただけに、同じオーナーのアウトワークは雪辱を果たし、一気にダービー制覇も、と大いなる野望が沸いてきたようです。一方、敗れたシャガーフ陣営も今回は泥んこ馬場が敗因は明確、これもダービーに向かうことは間違いありません。

土曜日の最後は第11レースのカーター・ハンデキャップ Carter H (GⅠ、4歳上、7ハロン)。ここも取り消しは無く8頭が参戦し、今期絶好調のサリュートス・アミーゴス Salutos Amigos が3対2の1番人気。カーター3連覇が掛かるダッズ・キャップス Dads Caps は7対1のジョイント4番人気留まっていました。
先手を取ったのは7番人気(13対1)のグリーン・グラット Green Gratto 、サリュートス・アミーゴスは泥馬場にも拘わらず最後方からレースを進めます。2番手を追走していたダッズ・キャップスが逃げ馬を捉え、インコースを守って先頭に立って3連覇目前と思われましたが、後方3番手を進んだ2番人気(4対1)のカルキュレイター Calculator と本命サリュートス・アミーゴスが並んでいくらか馬場の良い大外を通って一気に追い上げ、最後は大外のサリュートス・アミーゴスがカルキュレイターを頭差抑えて優勝。1馬身差でダッズ・キャップスは3着惜敗です。
デヴィッド・ジャコブソン厩舎、コーネリオ・ヴェラスケス騎乗の6歳せん馬サリュートス・アミーゴスは今期、カリフォルニアに遠征してパロス・ヴェルデス(GⅡ)とミッドナイト・リュート(GⅢ)が共に2着、前走ニューヨークに戻って3月12日のトム・フール・ハンデ(GⅢ)に勝っており、これでG戦2連勝でステークスも8勝目。念願だったG1戦のタイトルは初制覇となります。

 

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