混戦から大混戦へ
ヨーク競馬場のダンテ開催二日目、この日もG戦は二鞍で、注目はダービーの最終且つ最良のトライアルと言われるダンテ・ステークスですが、その前に、
二日目の馬場は good to firm 、所により good と更に回復。ミドルトン・ステークス Middleton S (GⅡ、4歳上牝、1マイル2ハロン88ヤード)は1頭が取り消して7頭が出走してきました。去年の終戦をブリティッシュ・チャンピオン・フィリーズ・アンド・メアーズの2着で締めた上がり馬ジャーニー Journey が5対4の1番人気。
最低人気(33対1)のバリーバッカ・クイーン Ballybacka Queen が逃げ、これを2番手でマークしたジャーニーが残り2ハロンで先頭。しかしここから展開は二転三転、結局は4番手を進んでいた3番人気(5対1)のビューティフル・ロマンス Beautiful Romance が抜け、先行していたジョイント4番人気(8対1)のクーラ Koora に1馬身4分の1差を付けて優勝。首差でジャーニーは3着でした。
これがG戦初勝利となるビューティフル・ロマンスはゴドルフィンの馬で、サイード・ビン・スロール厩舎、ジェームス・ドイル騎乗の4歳馬。去年の夏の終わりにウインザーでリステッド戦に勝ち、ヴェルメイユ賞に挑戦して5着。続くアスコットのブリティッシュ・チャンピオン・フィリーズ・アンド・メアーズでは、ジャーニーから2馬身差の3着でシーズンを締め括っていました。こちらもこれがシーズン・デビュー。
陣営によれば馬場がもう少し渋った方が良いと見ていたようですが、固目の馬場でも対応できそう。ロイヤル・アスコットではハードウィック・ステークスかプリンス・オブ・ウェールズ・ステークスに向かうとのことですが、どちらにしても追加登録が必要です。
そして、開催のタイトルにもなっているダンテ・ステークス Dante S (GⅡ、3歳、1マイル2ハロン88ヤード)。本命馬受難のレースで、最後に1番人気で勝ったのは2007年のオーソライズド Authorized 。デットーリにダービー初制覇をプレゼントした馬ですね。
デットーリは去年、ゴールデン・ホーン Golden Horn で二度目のダービー制覇を果たしましたが、そのゴールデン・ホーンもダンテに勝った時は3番人気。ダンテではビュイックが騎乗していました。
今年のクラシックは混戦ということで12頭が出走、前走サンダウンのクラシック・トライアルを2戦無敗で制した良血馬ミッドターム Midterm が5対4の1番人気でした。しかし前走で手綱を取ったライアン・ムーアはオブライエン厩舎のドーヴィル Deauville (13対2、3番人気)に乗り、今回はパット・スマーレンに乗り替わっての競馬です。
ブービー人気(50対1)のシー・オブ・フレイムズ Sea of Flames が逃げ、ミッドタームは最後方を進む2頭の中の1頭。3番手を進んでいたドーヴィルが残り2ハロンで抜け出してリードを広げに掛かりましたが、後方に待機していた4番人気(9対1)のウイングズ・オブ・デザイア Wings of Desire が鋭い瞬発力でドーヴィルを追い上げ、最後は首差交わしての差し切り勝ち。同じく後方から追い込んだ2番人気(13対2)のファウンデーション Foundation が1馬身半差で3着に入り、ミッドタームは前走程のガッツが見られず5着敗退。又しても本命馬は勝てませんでした。
勝ったウイング・オブ・デザイアは、去年のゴールデン・ホーンと同じジョン・ゴスデン師の管理馬で、何とフランキー・デットーリ騎乗。ゴスデン師は3着のファウンデーションも管理しており、1着・3着となりました。
デビューは今年4月のウインザー(10ハロン)で3着、10日後にウインザーのオールウェザー・コース(12ハロン)で初勝利を挙げたばかり。この1ヶ月で急成長してきた馬で、デットーリが選んだだけのことはあります。全兄にキングジョージ2着のイーグル・トップ Eagle Top がいる血統で、父はピヴォタル Pivotal 。
実はこの馬、2か月前のダービー登録でゴスデン師が取り消してしまっており、この勝利でダービーには再登録が必要。レース前の本命ミッドタームが敗れたことで、ウイングズ・オブ・デザイアのオッズは25対1から4対1に急上昇、ダービーの1番人気に上がってしまいました。
というのもゴスデン師、過去にダービーは2勝していますが、1997年のベニー・ザ・ディップ Benny the Dip も去年のゴールデン・ホーンも共にダンテ/ダービーのダブルを達成しての戴冠。しかも鞍上はデットーリですから、ダービーを勝つに相応しい条件が揃ったことになります。ダービー追加登録料は7万5千ポンドですから、ダンテ1着賞金の9万ポンドから支出すれば十分にペイします。それだけの価値はある選択でしょう。
増々混迷の度を深めている今年のダービーです。
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