欧州競馬界に激震

5月24日、フランスのシャンティー競馬場で伝統のGⅠ戦、イスパハン賞 Prix d’Ispahan (GⅠ、4歳上、1800メートル)が行われました。本来はロンシャンの1850メートル戦ですが、何度も紹介しているように今年はロンシャン競馬場が改修中のため、シャンティの1800メートルに変更。更に従来は先日行われたサン=タラリ賞と同じ日に行われていたレースですが、日程的にも変化がありました。
創設は1873年と古く、途中戦争などの影響で開催されなかった年もありますが、今年は139回目を数えることになります。

今年は heavy の馬場に9頭が出走。GⅠ馬も何頭か顔をそろえるハイ・レヴェルのメンバーとなり、去年の仏ダービー(GⅠ)からニエル賞(GⅢ)までG戦に3連勝し、凱旋門賞3着でシーズンを締め括ったニュー・ベイ New Bay が6対4の1番人気。先日ガネー賞でGⅠ初制覇を果たしたダリーヤン Dariyan が39対10の2番人気で続きます。
日本で話題になっていたのは去年12月に香港カップ(香港GⅠ)を制したエイシンヒカリ(海外では「A Shin Hikari」と表記)の挑戦で、その内容からレーシング・ポスト紙の評価ではメンバー中ニュー・ベイに続く第2位。74対10の4番人気を集めていました。

いつもはスタートから逃げるエイシンヒカリですが、今回は3番人気(42対10)で前走ミュゲ賞(GⅡ)に勝ったヴァダモス Vadamos との逃げ争い。2ハロン進んだ地点でヴァダモスがハナに立ち、エイシンヒカリは2番手に控えます。ニュー・ベイは中団の5番手辺りを追走し、ダリーヤンも中団。
残り2ハロンを迎えた辺りからエイシンヒカリがスパートすると、後は圧巻の独走劇。中団から漸くダリーヤンが2番手に押し上げたものの、エイシンヒカリは10馬身の大差でパリっ子たちの度肝を抜きました。1馬身4分の3差で後方3頭の中から6番人気(10対1)のシルヴァーウェイヴ Silverwave が3着に追い込み、ニュー・ベイは良い所なく6着敗退。

坂口正則師が管理し、武豊が騎乗したエイシンヒカリに付いては私が説明するまでもないでしょう。一昨年の3歳デビューから5連勝し、初めて挑んだ重賞チャレンジ・カップ(GⅢ)で9着敗退。
4歳になってからは武騎手とのコンビでエプソム・カップ、毎日王冠と1800メートルのG戦を含めて3連勝し、初のGⅠ挑戦となった秋の天皇賞では又も9着と大敗。2000メートルの距離を疑問視する意見もありましたが、12月には香港に遠征して2000メートルを克服すると同時にGⅠのタイトルを獲得したという5歳馬。

今回の海外遠征は㈱栄進堂の平井オーナーの強い意向で実現したもので、このあとはロイヤル・アスコットのプリンス・オブ・ウェールズ・ステークス(GⅠ)に向かう予定。坂口師は、すんなり逃げられなかったことに関しては余り心配しなかったようですが、馬場状態は懸念していた由。それも克服したエイシンヒカリ、各ブックメーカーは敏感に反応し、ファシネイティング・ロック Fascinating Rock 、ファウンド Found などの強豪を抑えて11対4、ブックメーカーによっては6対4のオッズを提示して目下の1番人気に上がりました。
それも其の筈で、今朝のレーシング・ポスト電子版には最近のGⅠ大差勝ちのランキングを掲載していて、エイシンヒカリの10馬身は9位に当たるとか。トップはウェル・アームド Well Armed のドバイ・ワールド・カップで記録した14馬身で、第2位はセプティマス Septimus が愛セントレジャーで付けた13馬身。そのあと11馬身という記録が6例並び、今回のエイシンヒカリは第9位となります。恐らく今回の内容は現時点での今年のベストに評価され、エイシンヒカリが世界一に上がることは間違いないでしょう。

それにしても驚くのは、日本馬が参戦することによって我がマスコミ界が早々と速報したこと。昨日の夜からネット競馬界は大変な騒ぎになっていたようです。日本の競馬レヴェルは最早世界でもトップ・クラスで、特に血統(サラブレッドの質)は世界一と断言しても良いでしょう。今回の勝利で調教技術も世界に伍して遜色は無いし、人にもよるでしょうがジョッキーもワールド・クラス。
今回の勝利を勇気に変え、次と次と日本馬が海外遠征に踏み切ることに期待しましょう。凱旋門賞だけが競馬ではないし、例えばロイヤル・アスコットに日本馬が大挙して登場すれば、欧州競馬界にとって脅威になることは間違いありません。彼の地に土足で踏み込むような非礼だけは禁物ですが、「おもてなし」の国からやってくる関係者にその心配はないでしょう。

プリンス・オブ・ウェールズ・ステークスは毎年ロイヤル開催の二日目、今年は6月15日に行われます。日本馬の海外遠征が日常茶飯事になれば、テレビで生中継され、このブログもお役目御免。早くその日が来ることを祈っています。

 

 

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