ムーアが逃げ切ったキングジョージ

7月23日のアスコット競馬場、既に枠順を紹介したように、キング・ジョージⅥ世・アンド・クィーン・エリザベス・ステークス King George Ⅵ and Queen Elizabeth S (GⅠ、3歳上、1マイル4ハロン)が行われました。馬場は good to firm 、ラウンド・コースでは散水も施されて所により good 。異常な暑さが続く英国では馬場状態を柔らかく保つために懸命の努力が行われているようです。
2日前の予想とは違って、最終的に13対8の1番人気に上がったのはオブライエン厩舎のハイランド・リール Highland Reel 。馬場が乾いたことも人気逆転の要因でしょうか。エリザベス女王のダートマウス Dartmouth は9対2、全体では4番人気でしたが然程の差はありません。

思い切って先行策を取ったのは、ライアン・ムーアの判断でハイランド・リール。結局は後続の追い上げを封じ、3ハロン地点から2番手に上がって前を追い続けた3番人気(4対1)で出走馬中唯一の3歳馬ウイングズ・オブ・ディザイア Wings of Desire (デットーリ騎乗)に1馬身む4分の1差を付ける鮮やかな逃げ切り勝ちでした。5番手で脚を矯めていたダートマウスは最後で追い上げるも、2馬身4分の3差で3着。
以下5番人気(14対1)のサー・アイザック・ニュートン Sir Isaac Newton 4着、2番人気(3対1)のイラプト Erupt が5着に入っています。

エイダン・オブライエン師にとってキングジョージは2001年のガリレオ Galileo 、2007年ディラン・トーマス Dylan Thomas 、2008年のデューク・オブ・マーマレード Duke of Marmalade に続く4勝目。ムーア騎手は2009年、サー・マイケル・スタウト厩舎のコンデュイット Conduit で制して以来2勝目となります。自身もキングジョージを制した大種牡馬ガリレオは、2011年のナサニエル Nathaniel に続く2頭目の親子制覇となりました。
去年アーリントンでセクレタリアート・ステークス、続いて香港ヴァーズを制したハイランド・リールは、海外遠征でも思う存分に実力を発揮できるタイプ。今期初勝利をGⅠ制覇で飾り、これからがハイランド・リールの季節と言えそうです。アメリカ、豪州、日本、香港などが視野に入っているとのこと。
それは3着のダートマウスも同じで、アメリカ、オーストラリア、そしてジャパン・カップ遠征の可能性も。女王は今回の3着にも大満足だったようで、愛馬と共に海外に出掛けることを楽しみにされているとか。府中競馬場に女王陛下をお迎えしてジャパン・カップが行われるなら、日本競馬界にとってスポーツとしての競馬をアピールできる絶好の機会になるでしょう。

さてこの日のアスコット、もう一鞍のG戦プリンセス・マーガレット・ステークス Princess Margaret S (GⅢ、2歳牝、6ハロン)も行われています。1頭が取り消して12頭立て。先月ヘイドックの新馬戦で鮮烈なデビューを果たしたフェア・イーヴァ Fair Eva が4対6の断然1番人気。
7番人気(25対1)のデインティー・ダンディー Dainty Dandy が逃げましたが、スタンド側の後方を悠然と進んだフェア・イーヴァ、馬なりのまま残り2ハロンで先頭に立つと、ムチを入れる事無く抜け出す圧勝。先行グループから抜けた3番人気(12対1)のキルマー Kilmah に4馬身差を付ける横綱相撲でした。4分の3馬身差で逃げたデインティー・インディーが3着。

ロジャー・チャールトン厩舎、フランキー・デットーリ騎乗のフェア・イーヴァは、名馬フランケル Frankel の初産駒の1頭で、フランケルに最初のG戦勝利を齎しました。父と同じハーリッド・アブダッラー氏の所有馬で、もちろん生産者でもあります。
この圧勝で早くも来年の1000ギニーは決まり、という評価。オッズは一気に4対1に上がり、順調に行けばクラシック制覇は約束されているでしょう。ヘイドックのデビュー戦は4馬身差、今回も同じ着差で合計8馬身差で無傷の2連勝となりました。デビュー戦で入着した馬たちもその後続々と勝馬となっており、フェア・イーヴァの強さは本物でしょう。

土曜日は、アスコットの他にヨーク競馬場でもヨーク・ステークス York S (GⅡ、3歳上、1マイル2ハロン88ヤード)が行われました。こちらも good to firm 、5頭が出走し、前走エクリプス・ステークスで3着したタイム・テスト Time Test が1対2の圧倒的1番人気。
本命馬の陣営はペースメーカーとしてカウンターメジャー Countermeasure (20対1、5番人気)を出走させて万全。余り離れず最後方を進んだタイム・テストが抜け出すと、同じく後方から伸びた4番人気(10対1)モンダイアリスト Mondialist との叩き合いを4分の3馬身制して人気に応えています。3馬身4分の1差でカウンターメジャーも3着に粘り切りました。

タイム・テストはアスコットで圧勝したフェア・イーヴァと同じロジャー・チャールトン厩舎で、ハーリッド・アブダッラー氏の持ち馬。こちらはパット・スマーレンが騎乗していました。今期はブリガディア・ジェラード・ステークス(GⅢ)に勝ってシーズンをスタートし、前走エクリブスは3着。
GⅠを取れる器であることは明らかで、来月同じヨークで行われるジャドモント・インターナショナルが絶好の舞台となりそう。オッズも4対1が出されました。キングジョージを回避したポストポーンド、オブライエン厩舎のザ・グルカ The Gurkha も予定しており、キングジョージ以上にレヴェルの高いGⅠ戦となりそうです。

 

 

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