イネイブル、圧巻のキングジョージ

昨日の英国競馬、アスコットとヨークで合計3鞍のG戦が行われましたが、今日はその中から最も遅く結果が入って来たキング・ジョージⅥ世・アンド・クィーン・エリザベス・ステークス King George Ⅵ and Queen Elizabeth S (GⅠ、3歳上、1マイル4ハロン)から行きましょう。何と言ってもこれがシーズン前半のハイライトですから。

天気予報も見事に的中してこの日は朝から雨、馬場は good to soft 、所によっては soft と重馬場でしたが、2日前に紹介した10頭がそのまま参戦してきました。重馬場は苦手とレース前から宣言していた前年の勝馬ハイランド・リール Highland Reel は、それてせも9対2の2番人気に留まっていました。
これを抑えて5対4の1番人気に支持されたのは、3歳牝馬ながら英愛オークスを連覇し、牡牝に関わらず今年の最強3歳馬と目されているイネイブル Enable 。3歳牝馬故に負担重量が8ストーン7ポンド(気に換算すれば54キロほど)であることも有利と見做されています。ハイランド・リールとは1ストーン(約7キロ)の差。

本命馬を管理するジョン・ゴスデン厩舎は、イネイブルの他に3番人気(11対2)のジャック・ホッブス Jack Hobbs 、ペースメーカーとして最低人気(100対1)のマーヴェリック・ウェイヴ Marverick Wave も出走させて援護は万全です。
陣営の作戦通り、マーヴェリック・ウェイヴがスタートから先手を取って強いペースでの逃げ。重馬場のハイペースなら紛れは生まれません。イネイブルもいつもより早め、2番手で機を窺い、ハイランド・リールは少しでも馬場の良い所と外目を通ってイネイブルをマーク。
しかし早くも馬場を苦にする様子が見えるハイランド・リールはペースに付いて行けず後退し、残り2ハロンでは既にイネイブルが先頭。後は後方から伸びる馬を待つばかりですが、漸く5番人気(9対1)のユリシーズ Ulysses が足を伸ばして本命馬を追ったものの、イネイブルは4馬身半差を付けての大楽勝。先行から一旦は後退していたオブライエン厩舎の4番人気(8対1)アイダホ Idaha が盛り返して4分の3馬身差の3着に入り、ハイランド・リールは更に4馬身離された4着に終わりました。

これでGⅠ戦3連勝、イネイブルは単に3歳のチャンピオンだけでなく、古馬も含めてクラシック距離(1マイル半)の頂点に立ちました。3歳牝馬がキングジョージを制したのは2014年のタグルーダ Taghrooda 以来、古くはポーニーズ Pawneese 、ダーリア Dahlia の快挙と並びました。
そのタグルーダもゴスデン師の管理馬で、ゴスデンはイネイブルの父ナサニエル Nathaniel も3歳馬として制しており、3頭全てが3歳での優勝となりました。騎乗したランフランコ・デットーリは、2004年にドワイアン Doyen で制して以来何と13年振りの勝利ですが、その前には1995年のラムタラ Lammtarra 、98年スウェイン Swain 、99年にもデイラミ Daylami で勝っており、今回が5勝目となります。
そのデットーリ、イネイブルで愛オークスに臨むために落馬で痛めた肩の治療を医者の診断を早めて克服し、今回は6日間で7ポンド(約3.5キロ)落とすという減量苦に耐えての美酒となります。正にプロ中のプロの仕事をやってのけたデットーリ、開口一番“今日の夕食が楽しみだ”。

イネイブルの今後は、順調ならヨークシャー・オークスに出走して短い休みを取り、凱旋門賞に直行する予定。適距離が1マイル半、馬場状態は良でも重でも対応できるとあって、今年の凱旋門賞はイネイブルで決まりでしょう。レース後のオッズは2対1にまで上がっています。

さて7月29日のアスコット競馬場、キングジョージの前にプリンセス・マーガレット・ステークス Princess Margaret S (GⅢ、2歳牝、6ハロン)も行われています。7頭が出走し、ここ2戦でトップクラスの馬を相手に2着を2度続けているナイアレティ Nyaleti が2対1の1番人気。
最低人気(25対1)レベル・アソールト Rebel Assault の逃げを2番手でマークしたナイアレティ、残り2ハロンで先頭に立つと、先行から追走する2番人気(9対4)のダンス・ディーヴァ Dance Diva に5馬身の大差を付ける圧勝でした。キングジョージのイネイブルとそっくりの内容。後方から追い込んだ6番人気(12対1)のミュージカル・アート Musical Art が1馬身4分の3差で3着に入っています。

勝ったナイアレティはマーク・ジョンストン厩舎、ライアン・ムーア騎乗。6月にソールズベリーの6ハロンでデビュー勝ちし、ロイヤル・アスコットのチェシャム・ステークス(リステッド戦)がセプテンバー September の2着、先のニューマーケットでもダッチェス・オブ・ケンブリッジ・ステークス(GⅡ)でクレンミー Clemmie の2着に食い込んだ馬。
敗れた2頭は何れもオブライエン厩舎の強力2歳牝馬ですから、ここでは断トツの実力を見せ付けました。1000ギニーに向けて20対1のオッズも出されています。

一方、ヨーク競馬場でもG戦が一鞍組まれており、ヨーク・ステークス York S (GⅡ、3歳上、1マイル2ハロン56ヤード)は good to soft の馬場に1頭が取り消して7頭立て。3歳時にはダービーにも出走したことのある5歳馬サクセス・デイズ Success Days が3対1の1番人気。
そのサクセス・デイズがスタートから飛ばし、後方から追い込む7番人気(12対1)モンダイアリスト Mondialist をハナ差凌いで見事人気に応えました。先行した2番人気(4対1)のハサル Hathal が1馬身4分の1差で3着。

ケン・コンドン厩舎、シェーン・フォリー騎乗のサクセス・デイズは、3歳時にバリーサックス・ステークス(GⅢ)とデリンスタウン・スタッド・ダービー・トライアル(GⅢ)に連勝して臨んだダービーで骨折して最下位(18着)。その年の11月にドイツで復帰し、去年は8月にロイヤル・ホイップ・ステークス(GⅢ)で久し振りに勝鞍を挙げました。
今期はトトソルズ・ゴールド・カップ(GⅠ)4着、前走インターナショナル・ステークス(GⅢ)2着を含め、4戦目にして初勝利。G戦は4勝目となります。
骨折した馬だけに、重馬場が好走の条件。ヨークのインターナショナルの可能性もありますが、8月のヨークが重馬場になる可能性は低いでしょう。従って狙いは10月のチャンピオン・ステークスか、その前の愛チャンピオンとなりそうです。

 

 

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