アメリカの3歳は低レヴェル?

7月29日、アメリカの夏競馬も本格的になってきました。昨日もサラトガとデル・マーで注目のG戦が行われています。

サラトガ競馬場からは4鞍のG戦、最初に行われたアムステルダム・ステークス Amsterdam S (GⅡ、3歳、6.5ハロン)は、去年は6ハロンで行われましたが、今年は若干の距離延長。fast の馬場に6頭が出走し、遅いデビューから2連勝中で負け無しのコール・フロント Coal Front が3対5の断然1番人気。
スタートから先手を取ったコール・フロント、最後方から追い込む4番人気(6対1)のエクサイテイションズ Excitations に1馬身半差を付けて逃げ切り、人気に応えました。3番手を進んだ5番人気(13対1)のシンギング・ブレット Singing Bullet が7馬身半差も離されての3着。
トッド・プレッチャー厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗のコール・フロントは、4月20日にキーンランドの未勝利戦でデビュー勝ち。続いて6月8日にはベルモントのアローワンス戦にも連勝し、これで無傷の3戦3勝としました。次走は8月26日に予定されているアレン・ジャーケンス・メモリアル(GⅠ)になる模様。プレッチャー/ヴェラスケスのコンビは、これがこの日4勝目と大当たりです。

続いても短距離戦ですが、3歳古馬混合のGⅠ戦となるアルフレッド・G・ヴァンダービルト・ハンデキャップ Alfred G. Vanderbilt H (GⅠ、3歳上、6ハロン)。出走すれば本命になる筈の去年の勝馬エー・ピー・インディアン A.P.Indian が取り消して7頭立てとなり、押し出されるようにアリスタイデス・ステークス(GⅢ)を含め3連勝中のリムジン・リベラル Limousine Liberal が8対5の1番人気。
レースは3番人気(5対2)のエル・ディール El Deal の逃げで始まりましたが、最初から最後までこの馬の独壇場、4番手を進んだ5番人気(11対1)のオウサム・バナー Awesome Banner に8馬身モノ大差を付ける圧巻の逃げ切り勝ちとなりました。人気のリムジン・リベラルは3番手に付けていましたが、頭差の3着に終わっています。
ホルヘ・ナヴァロ厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のエル・ディールは、これがG戦初勝利となる5歳馬。これまでレイクマン厩舎、ダンジェロ厩舎と転々とし、今年になってからナヴァロ師が購入したもの。新天地に移ってから馬が変わったようにスピードを発揮し、4月のハンデ戦(7馬身差)、前走6月モンマスの一般ステークス(デカスロン・ステークス)と連勝し、遂に3連勝でGⅠ馬に到達しました。これまでG戦は前厩舎で初体験した今年正月のミスター・プロスペクター・ステークス(GⅢ)4着だけでしたが、今やBCスプリントを目指す期待の快速馬と言えるでしょう。

サラトガの三つ目は、芝コースの長距離戦ボウリング・グリーン・ハンデキャップ Bowling Green H (芝GⅡ、4歳上、11ハロン)。firm の芝コースに7頭が出走し、前走いきなりマンハッタン・ステークス(芝GⅠ)を制したアセンド Ascend が9対5の1番人気。
先ずは5番人気(11対1)のへロー・ドン・フリオ Hello Don Julio が逃げ、淡々としたペース。第3コーナーの手前からレースが忙しくなり、先ず後方2番手に控えていた2番人気(5対2)のサドラーズ・ジョイ Sadler’s Joy が直線で先頭に立ちましたが、前半は最後方で待機していた最低人気(16対1)のハンター・オライリー Hunter O’Riley が大外から一気に追い込み、5番手から連れて伸びた3番人気(7対2)のビッガー・ピクチャー Bigger Picture に首差を付ける逆転劇。同じく首差でサドラーズ・ジョイが3着に入り、3番手を進んだアセンドは3馬身4分の1差で着敗退。後方から進めた3頭の争いという結果になりました。
ジェームス・トーナー厩舎、フロラン・ジェルー騎乗のハンター・オライリーは、これがステークスもG戦も初勝利となる4歳せん馬。前々走キーンランドで1マイル半の芝アローワンス戦に勝ち、ベルモント・ダービー(芝GⅠ)に挑戦するも5着。この時は10番手から追い込み届かずという内容でしたが、今回は後方追い込み策が見事に的中しました。

そしてサラトガの最後が、注目のジム・ダンディー・ステークス Jim Dandy S (GⅡ、3歳、9ハロン)。何故注目かと言えば、今年のダービー馬オールウェイズ・ドリーミング Always Dreaming とプリークネス勝馬のクラウド・コンピューティング Cloud Computing が前走プリークネス以来揃って参戦するからで、レース前から2頭の一騎打ちと予想されていました。ダービー馬がイーヴンの1番人気、ブリークス馬は6対5の2番人気で続き、3番人気は8対1と離れた評価。
予想通りオールウェイズ・ドリーミングが逃げ、クラウド・コンピューティングが2番手で追走し、ダービー馬を単騎逃げには持ち込ませない構え。実際に第4コーナー手前からクラシック馬2頭が馬体を接して直線に向きましたが、スタートして直ぐ内ラチ沿いにコースを変えて最後方を追走していた4番人気(8対1)のグッド・サマリタン Good Samaritan が大外から纏めて2強を捉えると、やはり後方2番手から伸びた最低人気(14対1)のジュゼッペ・ザ・グレイト Giuseppe the Great に4馬身4分の3差を付ける鮮やかな差し切り勝ち。半馬身差で何とかオールウェイズ・ドリーミングが3着に粘り、クラウド・コンピューティングは5着最下位に終わりました。
先週、チャンピオンのアロゲート Arrogate が大敗するショックを味わったアメリカ競馬ですが、今週もクラシック馬2頭が共倒れ。チャンピオンと呼ばれてきた馬たちの崩壊劇が始まったような印象です。勝った馬が強かったというより、今年のアメリカは3歳世代のレヴェルが低いのかもしれませんね。
この日が誕生日というウイリアム・モット厩舎、ジョエル・ロザリオ騎乗のグッド・サマリタンは、去年のサラトガでデビュー勝ちし、続くカナダのGⅡ戦(サマー・ステークス)を連勝して臨んだBCジュヴェナイル・ターフが3着だった馬。今期はチャーチルのアメリカン・ターフ(芝GⅡ)が2着、ベルモントのペナイン・リッジ・ステークス(芝GⅢ)も2着と続き、前走ベルモント・ダービーで4着。今回がダート・コース初体験で、クラシック馬を撃破したことになります。陣営は2強がやり合うことを予測し、末脚に賭けた由。初ダートを問題にしなかった以上、次はトラヴァース・ステークス、というのが自然の成り行きでしょう。

一方、デル・マー競馬場からはGⅠ戦のビング・クロスビー・ステークス Bing Crosby S (GⅠ、3歳上、6ハロン)一鞍。勝馬にはBCスプリントへの優先出走権が与えられるレースで、秋に向けてはサラトガのヴァンダービルト・ハンデを使った馬たちとの能力比較が話題になるでしょう。fast の馬場に2頭が取り消して9頭立て。G戦は未勝利ながら前走トゥルー・ノース・ステークス(GⅡ)で2着したロイ・エイチ Roy H が8対5の1番人気と言う不思議なオッズ。
スタートして間もなく、2番人気(9対5)のGⅠ馬ドレフォング Drefong がマイク・スミス騎手を放り出すようにして落馬しましたが、馬は問題なく先行する荒れたレース。4番人気(11対1)のセント・ジョー・ベイ St. Joe Bay が逃げましたが、4番手追走から内ラチ沿いに抜け出した3番人気(4対1)のランソム・ザ・ムーン Ransom the Moon が、2番手追走の本命ロイ・エイチに1馬身半差を付けて優勝。更に1馬身半差で3番手を進んだ5番人気(14対1)のモー・キャンディー Moe Candy が3着に入りましたが、放馬したドレフォングが3番手で入線しています。マイク・スミス騎手も馬も無事。
フィリップ・ダマト厩舎、フラヴィアン・プラット騎乗のランソム・ザ・ムーンは、サンタ・アニタの前々走コナ・ゴールド・カップ(GⅡ)をステークスもG戦も初挑戦で制し、前走サン・カルロス・ステークス(GⅡ)でも2着した5歳牡馬。当然ながら優先出走権を獲得したBCスプリントが秋の大目標になるでしょう。

 

 

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