アーリントンの芝フェスティヴァル

8月12日のアメリカ競馬のメインは、芝コースのGⅠ戦が3鞍も並ぶアーリントン競馬場の芝フェスト。英国ではシャーガー・カップに世界中の名ジョッキーが顔を揃えましたが、実はデットーリもムーアもアーリントンに遠征しており、トップクラスの競馬と言う意味で、世界の競馬ファンの目はアーリントンに集中していたのじゃないでしょうか。
昨日の土曜日はアーリントン以外にも3つの競馬場でG戦が組まれ、その総数は9鞍。結果が入って来た順に取り上げていきましょう。

最初はサラトガ競馬場の2鞍から。共に去年は嵐で延期された因縁のG戦ですが、今年は無事に開催。先ずアディロンダック・ステークス Adirondack S (GⅡ、2歳牝、6.5ハロン)は fast の馬場に8頭が参戦し、デビューから2連勝中のピュア・シルヴァー Pure Silver が8対5の1番人気。
スタートこそ少しもたついたピュア・シルヴァー、直ぐに先頭に立っての逃げ。第4コーナーの手前で3番人気(9対2)のリミテッド・ヴュー Limited View に外から並び掛けられましたが、直線では他馬をグイグイと引き離し、4番手から追い込む4番人気(9対2)のサザンプトン・ウェイ Southampton Way に9馬身半の大差を付ける逃げ切り勝ちで人気に応えました。6番手を進んだ7番人気(23対1)のウォール・オブ・コンパッション Wall of Compassion が1馬身差の3着。
トッド・プレッチャー厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗のピュア・シルヴァーは、6月のベルモントでデビュー勝ちし、続く前走ベルモントの一般ステークス(ライン・ブルック・ステークス)も連勝し、これで3戦3勝。次はスピナウェイ・ステークス(GⅠ)で2歳GⅠ線一番乗りを目指します。

サラトガのもう一鞍は、GⅠ戦のフォースターデイヴ・ステークス Fourstardave S (芝GⅠ、3歳上、8ハロン)。朝からの雨で馬場は yielding に軟化。1頭が取り消して6頭立てとなり、前走マンハッタン・ステークス(芝GⅠ)で2着したタイム・テスト Time Test が2対1の1番人気。
出走馬中唯一の牝馬で4番人気(5対1)のサッシー・リトル・リラ Sassy Little Lila が逃げ、これを2番手で追走していた5番人気(6対1)のバラー・ロックス Ballagh Rocks が捉えて直線で先頭に立ちましたが、3番手の外で追走していた3番人気(5対1)のワールド・アプルーヴァル World Approval が外から先頭に立つと、4番手の内から伸びる本命タイム・テストを2馬身4分の1差抑えての快勝。バラー・ロックスが1馬身差の3着に粘りました。
マーク・カッセ厩舎、マヌエル・フランコ騎乗のワールド・アプルーヴァルは、これがGⅠ戦2勝目となる5歳せん馬。去年7月にモンマス・パークでユナイテッド・ネイション・ステークスに勝ったのがGⅠ戦初勝利で、前走本命馬が2着だったマンハッタンでは5着に入っていました。その前、ピムリコのディキシー・ステークス(芝GⅡ)に勝っており、今期は4戦3勝と好調です。

次はモンマス・パーク競馬場のモンマス・オークス Monmouth Oaks (GⅢ、3歳牝、8.5ハロン)に行きましょう。fast の馬場に9頭立て。デビューから2連勝で臨んだ前走マザー・グース・ステークス(GⅡ)で4着したマイ・ミス・タピット My Miss Tapit が5対2の1番人気。
レースは3番人気(3対1)のオーヴァチュア Overture が逃げてペースが速くなり、前半7番手に控えていた4番人気(5対1)のテレサ・ジー Teresa Z が大外を回って3番手で直線に入ると、3番手を進んだ6番人気(20対1)のサイン・ウェイヴ Sine Wave に1馬身半差を付けて鮮やかな差し切り勝ち。逃げたオーヴァチュアが4分の3馬身差で3着に粘り、6番手で待機したマイ・ミス・タピットは5着に終わりました。
アンソニー・マルゴッタ厩舎、ニック・フアレズ騎乗のテレサー・ジーは、G戦初挑戦での初勝利。2歳時4戦目にタンパ・ベイで初勝利を挙げ、今期は前走ペン・ナショナル競馬場のアローワンス戦から2連勝。前々走デラウエア・パークの一般ステークス(ライト・ハーテッド・ステークス)がステークス初挑戦での3着でした。

そして愈々アーリントン・パーク競馬場の5鞍。全て芝戦というターフ祭りで、最初は3歳馬限定の芝GⅠ戦セクレタリアート・ステークス Secretariat S (芝GⅠ、3歳、10ハロン)。firm の馬場に6頭立てでしたが、ヨーロッパからの遠征馬が3頭と言う国際的な顔ぶれ。それでも地元のGⅠ馬オスカー・パフォーマンス Oscar Performance が3対2の1番人気。
レースは5番人気(11対1)ソニック・ブーム Sonic Boom の逃げで始まり、これを2番手でマークしたオスカー・パフォーマンスが第4コーナーで外から並び掛けると、直線は独走。後方2銀手から最後で追い込んだムーア騎乗で4番人気(7対1)のタジ・マハール Taj Mahal に2馬身4分の1差を付ける完勝でした。3番手を進んだデットーリ騎乗で3番人気(3対1)のアファンデム Afandem が1馬身半差の3着。なお、最下位で入線した2番人気(2対1)のパーミアン Permian がゴール入線後に骨折落馬してウイリアム・ビュイック騎手が投げ出されました。ジョッキーは無事でしたが、馬は安楽死処分となる悲劇も起きています。
ブライアン・リンチ厩舎、ホセ・オルティス騎乗のオスカー・パフォーマンスは、前走ベルモント・ダービーに続くGⅠ戦2連勝。去年のBCジュヴェナイル・ターフの覇者でもあり、GⅠ戦は3勝目、G戦そのものも5勝目となります。

次いではアメリカン・セントレジャー American St.Leger (芝GⅢ、3歳上、13.5ハロン)。ここは8頭が出走し、前走トライアルとなる同じアーリントンのスターズ・アンド・ストライプス・ステークス(芝GⅢ)を制したキーストンフォーヴィクトリー Keystoneforvictory が9対5の1番人気。
先ず6番人気(31対1)のクルーマン Crewman が逃げ、これを2番手で追走した4番人気(5対1)のアプリケイター Applicator が交わして先頭に立ちましたが、3番手に付けていた5番人気(5対1)のポステュレーション Postulation が捉えると、7番手から追い込む2番人気(2対1)のタグリーブ Taghleeb に2馬身4分の1差を付ける快勝でした。本命キーストンフォーヴィクトリーも6番手から追い上げましたが、1馬身半差及ばず3着まで。
エドワード・グレアム厩舎、ホルヘ・ヴァルガス騎乗のポステュレーションは、これがG戦初勝利となる5歳せん馬。2・3歳時はアイルランドで競馬し、その夏にベルモント・ダービーに遠征して6着以降はアメリカに転厩。アメリカでは7戦目となる前走デラウエア・パークの一般ステークス(ケープ・ヘンローペン・ステークス)でアメリカでの初勝利を挙げ、これでステークス2連勝となりました。

この日の芝GⅠ戦2鞍目は、牝馬のアーリントン・ミリオンに相当するビヴァリー・D・ステークス Beberly D. S (芝GⅠ、3歳上牝、9.5ハロン)。勝馬にはBCフィリー・アンド・メア・ターフへの優先出走権が与えられるレースで、10頭が参戦し、アルゼンチン時代から5連勝で前走モデスティー・ハンデ(芝GⅢ)を制したダナ・ブルーハ Dona Bruja が2対1の1番人気。
デットーリ騎乗の8番人気(19対1)ジペッサ Zipessa が逃げましたが、4番手を進んだ3番人気(5対1)のホークスモア Hawksmoor が前を捉えて先頭で直線。しかし最後は後続馬群が一気に差を詰めてゴチャつく激しいレースとなる中、前半8番手の後方に待機していた5番人気(6対1)のダシータ Dacita が抜け、際どい2頭の2着争いに半馬身差を付けての差し切り勝ち。写真判定の結果、2着は6番手から追い込んだ2番人気(3対1)のグラン・ジュテー Grand Jete と、7番手から追い上げた本命ダナ・ブルーハの同着。特に最内で前が塞がり、外に持ち出して猛追したグラン・ジュテーは、不利が無ければ単独2着はあったという惜しい内容ではありました。
勝ったダシータはチャド・ブラウン厩舎、イラッド・オルティス騎乗のチリ産6歳馬。去年7月にダイアナ・ステークス(芝GⅠ)に勝って以来の勝ち星で、二つ目のGⅠ制覇となります。前走ニューヨーク・ステークス(芝GⅡ)では6着に敗れていましたが、今期は3戦目にしての初勝利がGⅠ戦となりました。

愈々メイン・レースとなるのが、アーリントン・ミリオン Arlington Million (芝GⅠ、3歳上、10ハロン)。もちろん勝馬にBCターフへの優先出走権が与えられ、1頭が取り消して12頭立てとなる国際的に拮抗したメンバー。去年のベルモント・ダービーを制し、続くアーリントン・ミリオンでも3着したオブライエン/ムーアのドーヴィル Deauville が今年こそ、と9対5で1番人気。
10番人気(56対1)の伏兵オーク・ブルック Oak Brook が逃げて直線でも意外な粘り腰を発揮しましたが、2番手でマークしていた2番人気(9対2)のビーチ・パトロール Beach Patrol が第4コーナーでこれを外から捉えて先頭。しかし4番手の内で我慢していたドーヴィルがコーナーワークの利を生かして内ラチ沿いに一旦は先頭に立って場内を沸かせましたが、再び外から伸びたビーチ・パトロールが、最後で8番手から追い込む11番人気(73対1)のファンシフル・エンジェル Fanciful Angel に半馬身差を付けて優勝。接戦の首差でドーヴィルは今年も3着惜敗に終わりました。一昨年の勝馬ザ・ピッツァ・マン The Pizza Man も参戦していましたが、7番人気(11対1)で12着最下位と惨敗。
ダシータに続いてチャド・ブラウン厩舎、ジョエル・ロザリオ騎乗のビーチ・パトロールは、去年の開催でセクレタリアート・ステークスを制していた4歳馬。セクレタリアートの後は6連敗中でしたが、その内5レースは全てGⅠ戦でのもの。前走ユナイテッド・ネーションは3着、その前のマンハッタンは4着していました。

アーリントン最後のG戦も芝のレースで、パッカー・アップ・ステークス Pucker Up S (芝GⅢ、3歳牝、9ハロン)。12頭と多頭数が揃い、前走モンマス競馬場の芝一般ステークスを勝って来たリップスティック・シティー Lipstick City が3対1の1番人気。
最低人気(94対1)のロイヤルティー・プリンセス Royalty Princess が逃げましたが、直線に入ると後続集団が一気に襲い掛かってレースは一変。6番手から伸びた7番人気(12対1)のフォールト Fault が、5番手を進んだ2番人気(3対1)のジャーニー・ホーム Journey Home に首差で優勝。7番手から追い込んだ4番人気(5対1)のラヴリー・ベルナデッタ Lovely Bernadette が2馬身4分の3差で3着に入り、10番手から末脚に賭けたリップスティック・シティーは8着敗退に終わりました。
ミシェル・ラヴェル厩舎、ミゲル・メナ騎乗のフォールトは、これがG戦初挑戦での初勝利。前走インディアナの一般ステークス(タウィー・ステークス)がステークスへの初挑戦で、そこでは2着でした。

昨日の最後は、デル・マー競馬場で行われたベスト・パル・ステークス Best Pal S (GⅡ、2歳、6.5ハロン)。fast の馬場に8頭の若駒が集い、前走2戦目となるサンタ・アニタで2着に11馬身差を付ける圧勝で初勝利を飾ったセレンゲティー Serengeti が6対5の1番人気。
レースは6番人気(30対1)のアン・オカラ・テン An Ocala Ten が逃げましたが、2番手でマークしていた2番人気(3対2)のラン・アウェイ Run Away が第4コーナーでこれを捉えると、最後方から追い込む5番人気(25対1)のディア・デ・バゴ Dia de Pago に3馬身半差を付ける楽勝。6番手から伸びた3番人気(6対1)のフリートウッド Fleetwood が2馬身半差の3着に入り、4番手を進んだセレンゲティーは6着に終わって期待を裏切りました。
サイモン・キャラガン厩舎、フラヴィアン・プラット騎乗のラン・アウェイは、終わって見ればこれが3戦3勝となる無敗馬で、5月にサンタ・アニタでデビュー勝ち。続いて7月にはサンタ・アニタのリステッド戦サンタ・アニタ・ジュヴェナイル・ステークスにも勝っており、デル・マーの一番星となりました。

 

 

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