フランスのエスプリ
スコティッシュ室内管の独墺作品を聴いた翌日のプロム、思い切り方向転換してフランス音楽の精髄を楽しみました。
プロムスではほぼ2年おきに登場している名指揮者ロトが、主兵のレ・シエクルスを率いて以下のプログラム。
8月16日 ≪Prom 42≫
サン=サーンス/歌劇「黄色の王女」序曲
ドリーブ/バレエ音楽「ラクメ」
サン=サーンス/ピアノ協奏曲第5番
~休憩~
フランク/交響詩「魔神」
ラロ/「ナムウナ」組曲第1番
ラロ/「ナムウナ」組曲第2番
サン=サーンス/歌劇「サムソンとデリラ」バッカナール
レ・シエクルス Les Siècles
指揮/フランソワ=クサヴィエ・ロト François‐Xavier Roth
ピアノ/セドリック・ティベルギアン Cédric Tiberghien
彼等は単にフランス音楽を並べただけではなく、パリにおけるオリエンタリズムというテーマに絞っているのが聴き所。前半の3曲は夫々日本、インド、エジプトに因んだ作品たちです。
最初の「黄色の王女」序曲は以前にミュンシュがBSOと録音していました。スコアの入手は難しいようですが、ペトルッチで簡単にダウンロードできます。
次のドリーブは同名の歌劇(番号付きオペラ)の中で演奏されるバレエ音楽で、第2幕の8番 Airs de Dance という楽曲。Airs de Dance 、Terena 、Rektah 、Persian 、Coda の5部からなり、第4・5部は本来は合唱が加わりますが、この日はオーケストラのみで演奏していました。
これもヴォーカル・スコアがペトルッチで見ることが出来ます。
ピアノ協奏曲第5番では、現代のスタインウェイ最新モデルなどはもちろん使いません。ティベルギアンがこの日のために選んだのは、1899年製のベヒシュタインだそうな。正に作曲当時のピリオド楽器との相性は抜群です。
アンコールは、ドビュッシーの前奏曲集第2巻の第3曲「ビーニョの門」
後半の最初はフランクの「交響詩」となっていますが、実質はヴィクトル・ユーゴーの詩に基づくピアノ協奏曲。滅多に演奏されませんが、素晴らしい楽想と見事なオーケストレーションに圧倒されました。
この後の2作品は夫々古代ギリシャとイスラエルがテーマとなっている舞台作品。やはりオリエンタリズムがテーマ。
これに先立ってロトのインタヴューが放送されますが、ピリオド楽器についての解説も真に判り易い英語。正にフランスのクラリテを象徴しているよう。
ラロ作品は二つある組曲が全部演奏されるのではなく、その抜粋。実際に演奏されたのは4曲で、①第1組曲の第1曲「プレリュード」 ②第2組曲の第1曲「マロカニアン舞曲」 ③第1組曲の第4曲「市場の行進とお祭り」 ④第1組曲の第3曲「主題と変奏」の順でした。
これがプロムス初演だそうで、客席は第1曲目から興奮状態。パソコンで聴いていても作品の独創性に驚いてしまいます。何故かナムウナは二つの組曲の合本スコアが手元にあって、たとえ4曲でも聴いたのは初めて。こんな素晴らしい音楽があるとは今まで知りませんでしたね。
最後のサンサーンスも圧巻。
アンコールはアメリカのヒット曲で、Daft Punk というグループの「Get Lucky」。この日のために特別にアレンジされたものだそうです。
プロムスは最初の放送から30日間は何時でも聴けるので、絶対に聴くべし。
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