8月最終週のアメリカ競馬は、サラトガのGⅠ祭り

8月26日は8月最後の土曜日、アメリカ本土にハリケーンが上陸しましたが、G戦が行われた3つの競馬場に影響がなく、全ての日程が順調に消化されています。
この日は何と言ってもニューヨーク州、サラトガ競馬場のG戦7鞍が注目で、その内6鞍がGⅠ戦。11月初めのBCに向かう馬にとっては本番前2走目ということで、各馬の仕上げが気になります。

そのサラトガ、レース順に行くと最初はパーソナル・エンサイン・ステークス Personal Ensign S (GⅠ、3歳上牝、9ハロン)。勝馬にはBCディスタッフへの優先出走権が与えられます。馬場は fast 、1頭が取り消して4頭立て。馬券は全く面白味がありませんが、チャンピオン古馬牝馬のソングバード Songbird が登場して2対5の断然1番人気。
例によってソングバードがハナに立っての逃げ作戦ですが、今回は最後方で待機した2番人気(2対1)のフォーエヴァー・アンブライドルド Forever Unbridled が第4コーナー手前で2番手に上がり、内ラチ沿いを走る大本命に外から迫り、気付かれないような走りでソングバードからやや馬体を離して追い込むと、最後は首差で捉える逆転劇です。3番手を進んだ4番人気(13対1)のエスケンフォーマネー Eskenformoney が4馬身半差の3着。ソングバードは去年のBCに続き、生涯2度目の敗戦となりました。
ダラス・スチュアート厩舎、ジョエル・ロザリオ騎乗のフォレヴァー・アンブライドルドは、去年のこのレースは3着で、その年のBCディスタッフも3着でした。今期はアップル・ブロッサム・ステークス、ベルデイム・ステークスに続いてGⅠ戦は3勝目。前走6月のチャーチル・ダウンズでもフルール・ド・リ・ハンデ(GⅡ)に勝ち、G戦2連勝です。次走は9月30日のベルデイムになる予定だそうです。

続いてバレリーナ・ステークス Ballerina S (GⅠ、3歳上牝、7ハロン)は、勝馬にBCフィリー・アンド・メア・スプリントへの優先出走権が与えられる一戦。7頭が出走し、目下4連勝中、今期もGⅠ戦2勝を含めて3戦無敗のポールアズシルヴァーライニング Paulassilverlining が2対1で1番人気。
レースは5番人気(5対1)のバイ・ザ・ムーン By the Moon が逃げ、ポールアズシルヴァーライニングは4番手から。ペースをスローに落としたバイ・ザ・ムーン、内ラチ沿いギリギリを粘り、2番手追走から外を追い上げる4番人気(5対1)のハイウェイ・スター Highway Star を頭差抑えて逃げ切ってしまいました。6番手から伸びた3番人気(7対2)のカリーナ・ミア Carina Mia が1馬身差の3着に入り、ポールアズシルヴァーライニングはスローペースに嵌って5着と期待を裏切り、連勝記録も4で止まっています。
ミシェル・ネヴィン厩舎、ラジーヴ・マラー騎乗のバイ・ザ・ムーンは、2歳時に制したフリゼッテ・ステークスに続いて二つ目のGⅠ制覇。去年のバレリースは2着、そしてBCフィリー・アンド・メア・スプリントは5着でしたが、今期はヴァグランシー・ハンデ(GⅢ)とベッド・オー・ロージズ・ステークス(GⅢ)に連勝し、前走オノラブル・ミス・ステークス(GⅡ)はポールアズシルヴァーライニングの3着。ここで雪辱を果たし、今年こそBCフィリー・アンド・メア・スプリント制覇を目指します。

この日三つ目のGⅠ戦H・アレン・ジャーケンス・メモリアル・ステークス H. Allen Jerkens Memorial S (GⅠ、3歳、7ハロン)は、去年までキングズ・ビショップ・ステークス King’s Bishop S として知られていたレース。名スプリンター、キングズ・ビショップを調教した故H・アレン・ジャーケンスに因んで改名されました。9頭が出走し、前々走ドワイヤー・ステークス(GⅢ)を制したプラクティカル・ジョーク Practical Joke が2対1の1番人気。
逃げたのは4番人気(6対1)のタカフル Takaful 、これを5番手辺りで追走していたプラクティカル・ジョークが捉えると、逃げ馬に1馬身4分の1差を付けて見事人気に応えました。前半7番手から追い込んだ2番人気(同じ2対1)のアメリカン・アンセム American Anthem が1馬身4分の3差で3着。
チャド・ブラウン厩舎、ジョエル・ロザリオ騎乗のプラクティカル・ジョークは、2歳時にホープフル・ステークス(GⅠ)とシャンペン・ステークス(GⅠ)を連勝した馬で、これがGⅠ戦3勝目。今期はダービー5着のあと上記ドワイヤーを制し、前走ハスケル・インヴィテーショナル(GⅠ)では3着でした。ムラ馬の多い今年の3歳牡馬、最も堅実なのがプラクティカル・ジョークかも知れませんね。BCでは短距離ではなく、コーナーを二度回るダート・マイルを目指すのだそうです。

続くフォアゴ・ステークス Forego S (GⅠ、3歳上、7ハロン)は、勝馬にBCスプリントへの優先出走権が付与されるトライアルで、10頭が揃い、去年の当開催でキングズ・ビショップを制し、そのままBCスプリントにも連勝してチャンピオン・スプリンターに選ばれたドレフォング Drefong がイーヴンの1番人気。
大外10番枠発走も何のその、スタートから先頭に立ったドレフォングが、8番手から追い込む4番人気(12対1)のオウサム・スルー Awesome Slew に4馬身の大差を付ける圧勝でBCスプリントに王手を掛けました。最後方から伸びた9番人気(44対1)のトムズ・レディー Tom’s Ready が1馬身半差の3着。
ボブ・バファート厩舎、マイク・スミス騎乗のドレフォングはデビュー戦こそ5着だったものの、そのあと5連勝でチャンピオンにまで上り詰めた馬。4歳の今期初戦ビング・クロスビー・ステークス(GⅠ)はスタート直後に落馬して競馬をしていませんでしたので、今回が実質シーズン初戦。BC連覇で4つ目のGⅠ戦奪取を目指します。

この日最初の芝コースは、ソード・ダンサー・ステークス Sword Dancer S (芝GⅠ、3歳上、12ハロン)。こちらも勝馬にはBCターフへの優先出走権が与えられ、firm の馬場に7頭立て。フランスとアイルランドから各1頭が参戦し、去年のダービー3着、愛ダービー2着で前走キングジョージは3着のアイダホ Idaho が7対5の1番人気。もちろんオブライエン/ムーアのコンビです。
7番人気(31対1)のフランク・カンヴァセーション Frank Coversation が逃げましたが、2番手に付けたアイダホが向正面で早くも先頭。しかしペースが速かったか先行馬は総崩れの展開となり、7番手で待機していた4番人気(7対1)のサドラーズ・ジョイ Sadler’s Joy が大外を追い込み、5番手から伸びた2番人気(2対1)のマネー・マルチプライヤー Money Multiplier に半馬身差での差し切り勝ち。4番手を進んだ5番人気(7対1)のビッガー・ピクチャー Bigger Picture がハナ差の3着に食い込み、アイダホは6着惨敗に終わりました。
トーマス・アルベルトラーニ厩舎、ジュリアン・ルパルー騎乗のサドラーズ・ジョイは、今期2戦目にパン・アメリカン・ステークス(芝GⅡ)でG戦初勝利を挙げた4歳馬。そのあとマンノ・ウォー・ステークス(芝GⅠ)、マンハッタン・ステークス(芝GⅠ)、ボウリング・グリーン・ステークス(芝GⅡ)と全て3着に食い込み、ここで念願のGⅠ戦初制覇を果たしました。もちろんBCターフで頂点を狙います。

連続GⅠ戦の最後は、真夏のダービーとも呼ばれるトラヴァース・ステークス Travers S (GⅠ、3歳、10ハロン)。今年は団栗の背比べ状態の牡馬クラシック世代、三冠夫々の勝馬を含む12頭が参戦してきましたが、7対2の1番人気に支持されたのは三冠馬以外のグッド・サマリタン Good Samaritan 。前走ジム・ダンディー・ステークス(GⅡ)の勝馬です。
逃げたのは4番人気(6対1)のウエスト・コースト West Coast で、人気のグッド・サマリタンは最後方から末脚に賭けます。しかし今年の3歳馬の低レヴェルを象徴するかのように、本命馬もクラシック馬も一向に馬券に絡む様子はなく、そのままウエスト・コーストが3番手追走の9番人気(24対1)ガンナヴェーラ Gunnevera に3馬身4分の1差を付けて逃げ切ってしまいました。2番手でマークしていた2番人気(5対1)のアイラップ Irap が2馬身4分の1差で3着に入り、グッド・サマリタンは追い上げたものの5着まで。2・3着の進路について審議が行われましたが、入線通りで確定しています。
その他ケンタッキー・ダービー馬のオールウェイズ・ドリーミング Always Dreaming (5番人気、6対1)は2番手に付ける場面もありながら9着、プリークネスのクラウド・コンピューティング Cloud Computing (7番人気、10対1)も3番手から後退して8着、更にベルモントを制したタプリット Tapwrit (3番人気、6対1)は5番手を進んで4着と、夫々の凡走を繰り返しています。
ボブ・バファート厩舎、マイク・スミス騎乗のウエスト・コーストは三冠レースには無縁で来た馬で、前走ロス・アラミトス・ダービー(GⅢ)に勝ったのに続きG戦2連勝でGⅠ戦初制覇。これで4連勝となり、夏の終わりの時点でクラシック世代のチャンピオン牡馬に着きました。このあと何処まで続くかは、もちろん判りません。母がBCジュヴェナイル・フィリーズに勝ったケアレッシング Caressing ということで、血統的な背景は十分と言えそうです。

サラトガの最後は、GⅡのボールストン・スパ・ステークス Ballston Spa S (芝GⅡ、3歳上牝、8.5ハロン)。1頭が取り消して5頭立てとなり、ここはGⅠ戦5勝の実力馬レディー・イライ Lady Eli が3対5の圧倒的1番人気。
3番人気(9対1)ディッキンソン Dickinson の逃げを4番手で追走したレディー・イライ、持ったままで第4コーナーで逃げ馬に並び掛けると、そのまま1馬身半差を余裕を持って突き放し、横綱相撲の貫禄です。最後方から4番人気(9対1)のロカ・ロホ Roca Rojo が追い込んで首差の3着。
チャド・ブラウン厩舎、イラッド・オルティス騎乗のレディー・イライは、これで3連勝。今期はゲイムリー・ステークス、ダイアナ・ステークスとGⅠ戦に2連勝しており、この日のGⅠ戦6鞍に勝る内容でサラトガG戦フェスティヴァルを締め括りました。もちろんBCフィリー・アンド・メア・ターフのアメリカ代表は間違いないでしょう。残念ながらBCの後に同馬はセリに掛けられることになっており、彼女の走りを見られるのはあと僅かです。

さて次はモンマス・パーク競馬場に向かいましょう。フィリップ・H・イズリン・ステークス Philip H. Iselin S (GⅢ、3歳上、9ハロン)は、fast の馬場に1頭が取り消して僅か4頭立て。去年の4月にキーンランドでベン・アリ・ステークス(GⅢ)に勝ち、今期は同レースで2着だったものの前奏インディアナで一般ステークスに勝ったイーグル Eagle が3対2の1番人気。
しかしレースは荒れる小頭数の典型、3番人気(5対2)コンクェスト・ビッグ・イー Conquest Big E の逃げを3番手で追走していた最低人気(4対1)のジャスト・コール・ケニー Just Call Kenny が捉え、最後方から漸く進出してきた本命馬に4馬身差を付ける番狂わせとなりました。2番手でマークしていた2番人気(9対5)のミスター・ジョーダン Mr. Jordan が4分の3馬身差で3着。
パトリック・マクバーニー厩舎、エディー・カストロが騎乗したジャスト・コール・ケニーは、これがG戦初勝利となる6歳牡馬。今期はサルヴァトール・マイル(GⅢ)2着、前走モンマス・カップ(GⅢ)3着を経てのモンマス遠征でした。

土曜日の最後は、デル・マー競馬場のパット・オブライエン・ステークス Pat O’Brien S (GⅡ、3歳上、7ハロン)。このレースもBC対象で、勝馬にはダート・マイルへの優先出走権が与えられます。ast の馬場に1頭が取り消して10頭立て。GⅡ戦で2度2着し、前走ビング・クロスビー・ステークス(GⅠ、ドレフォングが落馬したレース)でも3着と好走したモー・キャンディー Moe Candy が3対1の1番人気。
そのモー・キャンディーがスタートから飛ばして逃げましたが、前半6番手から4番手へと進出してきた4番人気(9対2)のジャイアント・エクスペクテイションズ Giant Expectations が直線で抜け出し、3番手を進んだ5番人気(7対1)のカルキュレイター Calculator に1馬身半差を付けて優勝。5番手から伸びる僅差2番人気(3対1)のサイレント・バードSilent Bird が2馬身4分の3差で3着に入りました。
ピーター・ユートロン厩舎、ゲーリー・スティーヴンス騎乗のジャイアント・エクスペクテイションズは、これがステークスもG戦も初出走となる4歳牡馬で、7戦目で漸く未勝利を脱すると直ぐに2連勝。前走7月19日にデル・マーのアローワンス戦で2着してここに臨んだ典型的な上がり馬です。

 

 

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