アイルランドのチャンピオン開催

イギリスのレポートが一段落したので、次は土曜日のアイルランドです。この週末、アイルランドは土曜にレバーズタウン、日曜にカラーとG戦だけで10鞍。内半分はGⅠ戦で、オブライエン厩舎が今期のGⅠ戦勝利数を何処まで伸ばすか、ライアン・ムーアが何勝するかが話題の一つでもありました。
ところが初日の昨日、陣営の思惑はそう期待通りにはいかなかったようで、多くのサプライズが生まれています。ここはレース順に取り上げていきましょう。

この日のレパーズタウン競馬場の馬場は good to yielding 、所により good 。最初のチャンピオンズ・ジュヴェナイル・ステークス Champions Juvenile S (GⅢ、2歳、1マイル)は度々レース名が変わって安定しませんが、今年は10頭が出走してオブライエン厩舎は3頭出し。キャリアの浅い馬ばかりで比較が出来ず、やはりライアン・ムーアが選んだ1戦1勝のデラノ・ルーズヴェルト Delano Roosevelt か11対10の1番人気に支持されていました。
逃げたのは7番人気(33対1)のマッティーモルス・ガガ Mattymolls Gaga という馬で、人気のデラノ・ルーズヴェルトは後方2番手から。2番手に付けた4番人気(11対2)のネルソン Nelson が前を捉えると、中団から伸びる5番人気(10対1)のキュー・ガーデンズ Kew Gardens に3馬身の大差を付ける楽勝です。本命のデラノ・ルーズヴェルトも後方から追い込みましたが、4分の3差及ばず3着まで。終わって見ればエイダン・オブライエン厩舎のワン・ツー・スリーでした。

勝ったネルソンはドナック・オブライエンの騎乗。7月にレバーズタウンでデビューして6着、8月初旬のカラーでは2着となり、前走同じレバーズタウンの1マイルで初勝利を挙げ、2連勝でG戦初勝利となりました。父はフランケル Frankel 、オブライエン厩舎のフラン決産駒と言うことで、スターの素質十分と言えそうです。ダービーのオッズも、レース前の33対1から20対1に上がりました。オブライエン師は同馬をレーシング・ポスト・トロフィー・タイプと評しています。上位3頭は何れも将来性のある馬で、結果にも大満足の様子。

続くエンタープライズ・ステークス Enterprise S (GⅢ、3歳上、1マイル4ハロン)は7頭立て。ここはオブライエン軍団には手が出ない感じで、愛オークス3着で前走もGⅢに勝ったエジーラ Eziyra が9対10の断然1番人気。
オブライエン/ムーアでも3番人気(9対2)のスパニッシュ・ステップス Spanish Steps が逃げて本命馬に挑戦しましたが、4番手で満を持していたエジーラが難無く抜け出すと、最後方から追い込む5番人気(14対1)のエクゼンプラー Exemplar に4分の3差を付けて見事人気に応えました。3番手を進んだ6番人気(16対1)のグラマラス・アプローチ Glamorous Approach が短頭差で3着。

デルモット・ウェルド厩舎、パット・スマーレン騎乗のエジーラは、前走コークのギヴ・サンクス・ステークス(GⅢ)に続いてG戦2連勝。ここは牡馬相手の快勝、改めて愛オークス馬イネイブル Enable の強さが証明された形です。アスコットのチャンピオンズ・デイに組まれているフィリー・アンド・メア(GⅠ)が次なる目標で、凱旋門ウィークのロワイヤリュー賞との選択肢となりそうです。

この日三つ目のG戦が、古馬牝馬のマイル・チャンピオン決定戦たるマトロン・ステークス Matron S (GⅠ、3歳上牝、1マイル)。2頭の取り消しがあって10頭立てとなりましたが、ここはGⅠ戦4連勝中の3歳女傑ウインター Winter がイーヴンの1番人気。もちろん4頭出しオブライエン厩舎でムーアが選択した大本命です。
オブライエン厩舎のペースメーカーを務める4番人気(13対2)のローリー・ポリー Roly Poly が逃げ、ウインターは3番手。残り1ハロンでウインターが先頭に立って楽勝、と見えましたが、食い下がったのが2番手に付けていた同厩の7番人気(20対1)のハイドランジア Hydrangea で、最後は僚友2頭の叩き合いとなり、ハイドランジアがウインターを頭差抑えるサプライズとなりました。中団から伸びた3番人気(6対1)のパースエイシヴ Persuasive が4分の3差で3着に入りましたが、結局はオブライエン厩舎のワン・ツー・フィニッシュ。

ウェイン・ローダンが騎乗したハイドランジア、実は共に今期初戦だった1000ギニー・トライアル(GⅢ)でウインターを破ったのもこの馬でした。その後は1000ギニー10着、愛1000ギニー3着、コロネーション・ステークス3着、ナッソー・ステークス4着と、ウインターのGⅠ戦4連勝の影でいつも後塵を拝してきましたが、遂にここでの逆転劇。
オブライエン師は、ウインターの調整過程が必ずしも順調ではなかったことを認め、今回はその差が出たのではないか、とのこと。2頭はいつも調教で一緒に走っていたパートナーでもあり、漸くGⅠ戦初タイトルでシーズンの借りを返したと言えそうですね。ハイドランジアはオペラ賞に、ウインターは凱旋門賞に向かうことが検討されています。

二つのGⅠ戦に挟まれたのが、ブーメラン・ステークス Booerang S (GⅡ、3歳上、1マイル)。7頭が出走し、やはりオブライエン/ムーアのサー・ジョン・ラヴリー Sir John Lavery が11対8の1番人気。コークのリステッド戦を勝ち上がったばかりのこの馬にとって、この人気はややキツイようにも思われますが・・・。
同じオブライエン厩舎で6番人気(20対1)のホワイトクリフスオブドーヴァー Whitecliffsofdover がペースメーカーを務めましたが、5番手から追い込んで勝利を掴んだのは、3番人気(100対30)のスードア Suedois でした。半馬身差で6番手から伸びた最低人気(25対1)のトゥルー・ヴァラー True Valour が2着国入り、2番手で粘った4番人気(12対1)のサイケデリック・ファンク Psychedelic Funk が頭差3着とここは大荒れです。人気のサー・ジョン・ラヴリーも良く追い込んだものの4着まで。

デヴィッド・オメーラ厩舎、ダニエル・タドホープが騎乗したスードアは、目下のところ13連敗中だった6歳せん馬。勝鞍は2年前の夏にモトリー賞(GⅢ)に勝って以来の事でした。13連敗とは言え、GⅠ戦に挑戦したのは7レースもあり、主に6ハロンが主体。1マイル線は今回が未だ2戦目と言う人気の盲点を突かれた印象です。前々走レノックス・ステークス(GⅡ)、前走シティー・オブ・ヨーク・ステークス(GⅢ)共に3着からの巻き返しとなりました。

チャンピオン・デイの最後は、もちろんアイリッシュ・チャンピオン・ステークス Irish Champion S (GⅠ、3歳上、1マイル2ハロン)。去年のこのレースは史上最高のメンバーが揃い、2着だったファウンド Found が次に凱旋門賞を制したのですから、見逃せない一戦でしょう。今年は10頭が参戦し、恐らく凱旋門賞には無関係の3歳ギニー二冠馬チャーチル Churchill が8対11の1番人気。前走ヨークのインターナショナル2着で、10ハロンへの目途が立ったとの評価です。
2番人気(3対1)に支持されたデットーリ騎乗のエミネント Eminent が逃げ、一時は後続に3馬身差を付ける思い切った作戦。しかし徐々に差は詰まり、3番手に付けたチャーチルは内で前が開かず苦しい展開。中団を進んだ4番人気(10対1)のポエツ・ワード Poet’s Word がエミネントを捉えて勝ったのはこの馬、と思われた瞬間、最後方から外を回って一気に伸びたのが6番人気(25対1)の伏兵デコレイテッド・ナイト Decorated Knight 、ポエツ・ワードに半馬身差を付ける逆転劇となりました。エミネントが1馬身4分の3差の3着に粘り、チャーチルは不利もあって7着敗退。

勝ったデコレイテッド・ナイトは、ロジャー・チャールトン厩舎、アンドレア・アッゼニ騎乗の5歳馬で、今期は春のカラーでトトソルズ・ゴールド・カップを制したれっきとしたGⅠ馬で、これが二つ目のGⅠ戦タイトル。何れもアイルランドで、この地は縁起の良い国と言うことでしょう。
年初にはドバイ・ワールド・カップで6着、アイルランドでGⅠ馬になった後はプリンス・オブ・ウェールズ2着、エクリプス6着、インターナショナル5着と運にも見放された印象のレースが続いていました。アスコットのチャンピオン・ステークスのオッズも40対1から10対1に急上昇。恐らくアスコットが同馬のラスト・ランになるのでは、と考えられているようでした。

 

 

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