オブライエン師、今期GⅠ戦を23勝に伸ばす

10月一杯で平場シーズンを終える英国競馬、残す所大一番は来週のニューマーケット、再来週のアスコットのみとなりましたが、10月7日の土曜日にはそのニューマーケットとアスコットで仲良くG戦が行われました。
イギリスを代表する二つの競馬場で同時にG戦が行われるのは恐らく10月第1週のこの日だけでしょうが、先ずはニューマーケットを先に取り上げましょう。

ニューマーケット競馬場の馬場は、この時期にしては回復して good 。行われたG戦はGⅠただ1鞍で、サン・チャリオット・ステークス Sun Chariot S (GⅠ、3歳上牝、1マイル)には13頭が出走してきました。調整が遅れてシーズン前半を棒に振ったものの、今期初戦ドーヴィルのロッシルド賞(GⅠ)で5着、前走レパーズタウンのマトロン・ステークス(GⅠ)3着と調子を上げてきたゴスデン厩舎のパースエイシヴ Persuasive が9対4の1番人気。先週の凱旋門賞を制して絶好調のデットーリ騎乗と鞍上も万全です。
好スタートを決めたのは2番人気(4対1)のローリー・ポリー Roly Poly 、先手を取ると直ぐにコースをスタンド側に変え、馬場の中央は12番人気(66対1)のドーン・オブ・ホープ Dawn Of Hope に任せて一旦は2番手に控えます。しかし残り1ハロンで再び先頭に立ったローリー・ポリー、先行から逃げ馬を追うパースエイシヴを1馬身4分の1差寄せ付けず、事実上の逃げ切り勝ちでした。中団から伸びた8番人気(20対1)のナスラ Nathra が同じく1馬身4分の1差で3着。
こうじんを排したため

ローリー・ポリーは、言うまでも無くエイダン・オブライエン厩舎、ライアン・ムーア騎乗の3歳馬で、フォルマス・ステークス、ロッシルド賞に続いて今期GⅠ戦3勝目。前走マトロンでは6着に敗れてパースエイシヴの後塵を拝したため人気は譲っていましたが、ここは乾いた馬場を味方につけて雪辱を果たしています。オブライエン/ムーアにとってこのレースはアリス・スプリングス Alice Springs に続く連覇。夫々にとっても3勝目となりました。
ところでオブライエン師は今期、これが23勝目となるGⅠ戦制覇。これまで1シーズンに制したGⅠ戦最多勝は2003年に故ロバート・フランケル師が達成した25勝ですが、オブライエン師はこれにあと2勝と迫りました。ローリー・ポリーは来月の第1土曜日にデル・マー競馬場で行われるBCフィリー・アンド・メア・ターフを目指しますが、そのオッズはレース前の14対1から8対1に上がりました。そこでフランケル師の偉業に並べば、正に絵になるシーンとなるでしょう。
これに関して師は、“もちろん実現することに期待はしているが、あくまで馬ファースト”と持論を曲げていません。ご存知のように、クールモア軍団で先ず決定権があるのはラッド達なのです。

2・3着を占めたゴスデン師は、やはり馬場。もう少し雨が降って重馬場になれば逆転は可能だったとコメントしています。3着馬に騎乗したジミー・フォーチュン騎手は、これが引退レース。8番人気の馬を3着に持って来たのですから、これ以上はない最後の騎乗だったと言えるでしょう。本人も感無量。

一方のアスコット競馬場、こちらは good to soft と柔らかい馬場でG戦は2鞍。先に行われたカンバーランド・ロッジ・ステークス Cumberland Lodge S (GⅢ、3歳上、1マイル4ハロン)は9頭立てとなり、フランスからアンドレ・ファーブル師が送り込んだヴァルドガイスト Waldgeist が4対7の断然1番人気。今年の仏ダービー2着、愛ダービー4着馬で、これがカラー競馬場以来となる約100日振りの実戦です。
3番人気(8対1)のデインヒル・コディアック Danehill Kodiac が逃げ、ヴァルドガイストは6番手から。しかし逃げ馬が大きなリードを取ったこともあって、ヴァルドガイストの追い込みは一歩及ばず、大本命に首差でデインヒル・コディアックが逃げ切ってしまいました。2番手を追走していた2番人気(5対1)のシークレット・ナンバー Secret Number が1馬身4分の3差の3着。

リチャード・ハノン厩舎、シーン・レヴィー騎乗のデインヒル・コディアックは、調整が遅れて今期前半は使えなかった4歳馬。シーズン初戦となったニューマーケットのハンデ戦に勝ち、続くセプテンバー・ステークス(GⅢ)が4着、前走ニューバリーのハンデ戦でも2着と、徐々に調子を上げてのG戦初制覇です。今期は全て1マイル半の距離に出走し、典型的な中・長距離タイプ。来年も現役に留まり、先ずはコロネーション・カップを目標にするとのことでした。

昨日の最後は、短距離のベングー・ステークス Bengough S (GⅢ、3歳上、6ハロン)。10頭が出走し、レヴェルの高い3歳勢を代表してコモンウェルス・カップ(GⅠ)3着のブルー・ポイント Blue Point がイーヴンの1番人気。
スタートから飛び出したブルー・ポイント、そのままスピードに乗り、最後方から追い込む並んだ4番人気(9対1)のプロジェクション Projection に半馬身差を付ける逃げ切り勝ちで堂々人気に応えました。同じ4番人気のマジカル・メモリー Magical Memory が3馬身4分の1差の3着。

ゴドルフィンが所有するブルー・ポイントは、チャーリー・アップルビー厩舎で、鞍上は8月にアーリントンで落馬負傷して以来の復帰戦となるウイリアム・ビュイック騎乗。ビュイックに復帰後初勝利をプレゼントしました。
今期初戦5月に同じアスコットでパヴィリオン・ステークス(GⅢ)に勝ち、コモンウェルスに続いてはヘイドック・スプリント・カップ(GⅠ)でも着。G戦は2歳時のジムクラック・ステークス(GⅡ)を加えて3勝目となります。2週後のアスコットで行われるチャンピオンズ・スプリントのオッズは10対1に上がりましたが、本来は良馬場を得意とする同馬、馬場が重ければ回避するようです。何しろハリー・エンジェル Harry Angel が固い本命ですから、得意の馬場でない限りは勝ち目はなさそう。冬はドバイで過ごし、来年夏の捲土重来を目指します。

 

 

 

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