2017ブリーダーズ・カップ初日

11月3日と4日はアメリカ競馬の祭典、ブリーダーズ・カップです。今年の舞台はカリフォルニアのデル・マー競馬場。アメリカのコースの中でも小回りに属し、ヨーロッパからの遠征馬には不利かもしれません。
今年も日本からの遠征馬が無いという異常な状況で、我がマスコミもブリーダーズ・カップの「ブ」の字も報道していません。BCというニュースもチラッと見ましたが、大井のJBCだけという情けない状態と言わざるを得ません。

ということで、この項はBCとアケダクトの一鞍を取り上げます。本来なら先に行われたアケダクトから始める所でしょうが、ここは注目のデル・マー競馬場からレース順にレポートしていきましょう。
最初はマラソン・ステークス Marathon S (GⅡ、3歳上、14ハロン)。一時期はBCの一つに組み込まれていましたが、今は前座を務める長距離戦に過ぎません。fast の馬場に8頭が出走し、去年の2着馬で前走パシフィック・クラシック(GⅠ)で5着したハード・エーシズ Hard Aces が9対5の1番人気。
最低人気(24対1)のインフォービダッド Infobedad がスローペースで逃げ、ハード・エーシズは前半6番手に控えて後半勝負の構え。逃げ馬が直線でも粘る所に2番手でマークしていた2番人気(2対1)のデスティン Destin が外から襲い掛かり、インフォービダッドは外に寄れながらも抵抗。しかし最後はデスティンがインフォービダッドを1馬身4分の1差突き放して優勝し、第3コーナーで3番手に上がったものの、そのあとの末脚を欠いたハード・エーシズは4馬身4分の3差離された3着に終わりました。
トッド・プレッチャー厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗のデスティンは、去年サム・F・デーヴィス・ステークス(GⅢ)とタンパ・ベイ・ダービー(GⅡ)に連勝し、ケンタッキー・ダービーは6着。続いてベルモント・ステークスはハナ差の2着に惜敗したステイヤーで、今期はアローワンス戦で3着・1着し、前走ジョッキー・クラブ・ゴールド・カップ(GⅠ)では5着に終わっていました。全兄のクリエイティヴ・コース Creative Cause もサンタ・アニタ・ダービー2着、プリークネス・ステークス3着した馬で、BCから外れたとは言いながらシリーズのGⅡ戦に勝って不思議ではない血統と言えるでしょう。

そして次のブリーダーズ・カップ・ジュヴェナイル・フィリーズ・ターフ Breeders’ Cup Juvenile Fillies Turf (芝GⅠ、2歳牝、8ハロン)からが今年のBCシリーズ。firm の芝コースにフルゲートの14頭が出走(2頭が除外)し、エイダン・オブライエン厩舎が送り込んだGⅠ2勝馬ハッピリー Happily が2対1の1番人気。
英国からゴスデン厩舎が遠征、デットーリ騎乗の9番人気(34対1)ジュリエット・キャピュレット Juliet Capulet が果敢に逃げましたが、8番手で待機していた2番人気(3対1)のラッシング・フォール Rushing Fall が追い込み、同じく9番手から伸びた6番人気(15対1)のベスト・パフォーマンス Best Performance に4分の3馬身差を付けて優勝。前半は最後方に付けけていた3番人気(5対1)でオブライエン厩舎の副将格、ディープ産駒のセプテンバー September が1馬身差の3着に食い込みました。ハッピリーはスタートこそ悪くなかったものの、その後の行き脚がつかず後方3番手からの競馬。直線では内から抜けようとしたものの前が塞がって行き場を失い、最後は鞍上ムーアも追わずに14着大敗に終わっています。
チャド・ブラウン厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のラッシング・フォールは、前走キーンランドのジャスミン・ステークス(芝GⅢ)の勝馬で、無傷の3戦3勝で2歳牝馬の芝チャンピオンに輝きました。管理するブラウン師は、このレース何と4勝目。

続くブリーダーズ・カップ・ダート・マイル Breeders’ Cup Dirt Mile (GⅠ、3歳上、8ハロン)は、fast の馬場に10頭立て。メトロポリタン・マイル(GⅠ)を含めて3連勝中のモー・スピリット Mor Spirit が、5月のメトロポリタン以来の休み明けながら2対1の1番人気。
2番人気(5対2)のシャープ・アズテカ Sharp Azteca が逃げましたが、5番手を進んだ7番人気(14対1)の伏兵バトル・オブ・ミッドウェイ Battle of Midway が第4コーナーでこれを外から捉えると、粘るシャープ・アズテカに半馬身差を付ける逆転劇。6番手から追い込んだ6番人気(14対1)のオウサム・スルー Awesome Slew が4馬身4分の1差の3着に入り、人気のモー・スピリットは3番手追走もバテ、8着大敗に終わっています。
ジェリー・ホーレンドルファー厩舎、フラヴィアン・プラット騎乗のバトル・オブ・ミッドウェイは、今年のサンタ・アニタ・ダービー2着、ケンタッキー・ダービー3着馬で、6月にアファームド・ステークス(GⅢ)に勝って以来二つ目のG戦勝利。ハスケル・インヴィテーショナル6着、デル・マーのリステッド戦(シェアード・ビリーフ・ステークス)優勝、オクラホマ・ダービー(GⅢ)2着からの挑戦で古馬を一蹴し、ダートのマイル王を手にしました。母リゴレッタ Rigoletta も2歳時にオーク・リーフ・ステークスを制したGⅠ馬です。

この日の3鞍目も、ヨーロッパから有力馬が挙って参戦したブリーダーズ・カップ・ジュヴェナイル・ターフ Breeders’ Cup Juvenile Turf (芝GⅠ、2歳牡せん、8ハロン)。2頭が除外となってフルゲートの14頭立て。ここもオブライエン厩舎のメンデルスゾーン Mendelssohn が9対2の1番人気に支持されていました。先輩ボビー・フランケルのシーズンGⅠ戦最多勝を塗り替えたオブライエン厩舎には、アメリカで更なる記録更新に期待が掛かっているようです。
これも英国からの挑戦馬、11番人気(20対1)でジムクラック・ステークス(GⅡ)勝馬のサンズ・オブ・マリ Sands of Mari が逃げて先頭で直線に向きましたが、スタートから積極的に3番手の内に付けた本命メンデルスゾーン、内ラチ沿いを通る逃げ馬を外から一気に交わすと、後方2番手から外を回って追い込む8番人気(12対1)のアンテイムド・ドメイン Untamed Domain に1馬身差を付けて見事人気に応えました。6番手を進んだ5番人気(9対1)のヴォーティング・コントロール Voting Control が半馬身差の3着。
エイダン・オブライエン厩舎、ライアン・ムーア騎乗のメンデルスゾーンは、これがG戦初勝利ながら、前走デューハースト・ステークスの2着馬。オブライエン師にシーズン27勝目のGⅠ戦タイトルをプレゼントしました。二つ前のジュヴェナイル・フィリーズ・ターフではハッピリーに騎乗して直線前が詰まって惨敗した経験を活かし、速めの先行策で小回りコースを克服した辺り、流石に名手ムーアです。何よりメンデルスゾーンは、BC3勝の名牝ビホールダー Beholder の半弟。血統的なアメリカ競馬適性を考慮して遠征に踏み切った陣営も立派です。

BC初日の最後は、最強牝馬決定戦のブリーダーズ・カップ・ディスタッフ Breeders’ Cup Distaff (GⅠ、3歳上牝、9ハロン)。3歳馬5頭、古馬3頭の精鋭が揃った8頭立てで、アラバマ→ベルデイムとGⅠ戦2連勝中の3歳馬イレイト Elate が2対1の1番人気。
6番人気(23対1)のシャンペン・ルーム Champagne Room が1番枠を利して逃げましたが、前半6番手に控えていた3番人気(7対2)の5歳馬フォレヴァー・アンブライドルド Forever Unbridled が第4コーナーで外から先頭に立つと、最後方から外を回って追い込む4番人気(9対2)のケンタッキー・オークス馬エイベル・タスマン Abel Tasman に半馬身差を付けて優勝。2番手でマークしていた5番人気(5対1)のパラダイス・ウッズ Paradise Woods が3馬身差の3着に入り、イレイトは更に1馬身差の4着に終わりました。2番人気(3対1)に支持された5歳馬ステラー・ウインド Stellar Wind は8着最下位と惨敗。
ダラス・スチュアート厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗のフォレヴァー・アンブライドルドは、去年のBCディスタッフは3着。去年はBCでシーズンを終え、今期は6月のフルール・ド・リ・ハンデ(GⅡ)に勝って始動し、8月にはパーソナル・エンサイン・ステークス(GⅠ)と連勝。これで今期は3戦全勝、4つ目のGⅠ戦制覇で牝馬チャンピオンに座りました。

デル・マーは、最後にBCシリーズには含まれないセナター・ケン・マッディー・ステークス Senator Ken Maddy S (芝GⅢ、3歳上牝、5ハロン)が行われました。BCがサンタ・アニタで開催される時には下り坂の6.5ハロンですが、デル・マーでは最短距離の5ハロンとなります。1頭が取り消して10頭立て。ステークスそのものが初挑戦ながら、ここ2戦のアローワンス戦で続けて2着している1勝馬のヴィガー Vigor が3対1の僅差で1番人気。
激しい先頭争いから3番人気(4対1)のソー・スウィートイットイズ So Sweetitiz が逃げましたが、5番手追走から外を回ったヴィガーが一気に先頭で直線。前半4番手の内を進んだ2番人気(3対1)のベルヴォア・ベイ Belvoir Bay が内ラチ沿いにスルスルと差し返し、最後は本命馬との叩き合いを1馬身4分の1差制して差し切りました。6番手を進んだ5番人気(8対1)のインスタント・リフレックス Instant Reflex が2馬身4分の1差で3着。
ピーター・ミラー厩舎、フラヴィアン・プラット騎乗のベルヴォア・ベイは、去年8月にトーリー・パインズ・ステークス(GⅢ)を制して以来となるG戦2勝目の4歳馬。元は英国で走っていた馬で、今期はこれがG戦初挑戦でもありました。

最後に取り上げるアケダクト競馬場のテンプテッド・ステークス Tempted S (GⅢ、2歳牝、8ハロン)は、fast の馬場に6頭立て。前走2戦目でベルモントの未勝利戦を3馬身4分の1差で勝ったナヴァホ Navajo が2対5の断然1番人気。
1番枠を利して2番人気(5対2)のデイジー Daisy が飛び出し、ナヴァホは4番手追走。第4コーナーで2番手に付けていた3番人気(9対1)のオールドファッションド・スタイル Oldfashioned Style が外から逃げ馬に並び掛けて先頭に立ちましたが、それも一刻、内から再び伸びたデイジーがそのままオールドファッションド・スタイルを突き放し、4馬身4分の3差を付けて事実上の逃げ切り勝ちです。3番手を進んだ4番人気(17対1)のスイート・キャンディー・ダンス Sweet Candy Dance が5馬身半差の3着に入り、人気のナヴァホは更に2馬身差の4着に終わりました。
ジョン・サーヴィス厩舎、ケンドリック・カームーシュ騎乗のデイジーは、10月9日にパークスの新馬戦を8馬身差で圧勝し、これで2戦2勝。初挑戦でG戦を制しました。

 

 

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