ウィーン国立歌劇場公演「オテロ」

2月のウィーン国立歌劇場ライブストリーミング3連発、第3弾は現地1月28・31日、2月3・7日の4回公演として行われたヴェルディ「オテロ」の最終日の模様でした。
日本では8日から10日までの3日間放映されましたが、私は九州に出掛けていて、帰宅して何とか10日に観戦。感想を書いている現在は既に放映終了となっています。悪しからず。

実はオテロ、昨シーズン6月にもライブ中継されたものと同じ舞台で、今回は指揮者から歌手まで殆どが入れ替わっての公演。演出については前回のレポートを参考にして下さい。
今回紹介されたキャスト等は以下の通り。指揮者は当初予告されていたミッコ・フランクからダーリントンに替わりました。

オテロ/ステファン・グールド Stephan Gould
イヤーゴ/カルロス・アルヴァレス Carlos Alvarez
デスデーモナ/クラシミラ・ストヤノヴァ Krassimira Stoyanova
カッシオ/シャホウ・ジンシュ Jinxu Xiahou
ロデリーゴ/レオナルド・ナヴァーロ Leonardo Navarro
ロドヴィーコ/ライアン・スピード・グリーン Ryan Speedo Green
モンターノ/クレメンス・ウンターライナー Clemens Unterreiner
エミーリア/ボンジヴェ・ナカニ Bongiwe Nakani
使者/アレジャンドロ・ピツァーロ=エンリケ Alejandro Pizarro-Enriquez
ビアンカ/カタリーナ・ビラハート Katharina Billerhart
指揮/ジョナサン・ダーリントン Jonathan Darlington
演出/エイドリアン・ノーブル Adrian Noble
舞台美術及び衣裳/ディック・バード Dick Bird
舞台効果/ベイジル・トゥイスト Basil Twist
照明/ジャン・カルマン Jean Kalman
殺陣/マルコム・ランソン Malcolm Ranson
演出助手/ジョアンヌ・ピアース Joanne Pearce

去年6月のキャストは、指揮がチョン・ミュンフン、オテロにアレクサンドルス・アントネンコ、デスデーモナはオルガ・ベスメルトナ、イヤーゴがヴラジスラフ・スリムスキーという面々でした。カッシオとロデリーゴは今回も同じキャストです。
前回は気が付きませんでしたが、今回はビアンカの名前がクレジットされていました。ビアンカって誰? と思われるでしょうが、カッシオが心を寄せている女性で、全くの黙役。恐らく女優さんでしょうか。イヤーゴがオテロに聞かせるためにカッシオの話を引き出すときに出てくる名前で、その人物を冒頭、やはりイヤーゴがカッシオを酔い潰れさせる様子を心配気に見守る女性として演技させているわけ。前回は見逃しましたが、かようにオペラとは見る度に細かいことに気付くという実例でしょう。

光と火を巧みに利用し、シンプルでありながら適度にリアルな舞台。名前の通り高貴な印象が残るノーブル演出は、物語の背景なども頭に入れて鑑賞すれば、より理解が増すと思われます。同じノーブルが演出した「ヘンゼルとグレーテル」でも、ロンドンの家庭で見る幻燈の物語として描かれていたことと共通するコンセプトでしょうか。

指揮のダーリントンは、去年9月の「ドン・カルロ」も振っていたヴェテラン。今回のオテロを任されたグールドはアメリカのテナーで、オテロは新国立劇場でも歌っていましたから日本でもお馴染み。ワーグナーやシュトラウスを得意とするヘルデン・テノールです。
デスデーモナのストヤノヴァはブルガリアのソプラノで、ウィーンでは宮廷歌手にも選ばれています。またイヤーゴのアルヴァレスはスペインのバリトンで、イアーゴはロイヤル・オペラで歌って喝采を博していました。
この他脇役も含めて極めてインターナショナルな陣容。主役の3人は如何にもオペラ歌手という風貌と声量で、充実した「オテロ」を満喫しました。

カーテンコールの途中でマイヤー総裁が登場、カルロス・アルヴァレスに宮廷歌手の称号が贈呈されます。これに応えるアルヴァレス、ドイツ語は話せないので、と断って英語でのスピーチ。英語なので辛うじて内容を理解できましたが、25年前のウィーン・デビューは「セヴィリアの理髪師」のフィガロ役。舞台下手まで歩いて舞台裏の一節「ラーララ、ララララー」と歌って見せてくれました。
オッタヴァ・テレビが配信を開始してから私が目撃した宮廷歌手選出のセレモニーは、トスカでのピョートル・ベチャラ、ローエングリンでのリンダ・ワトソンに続く3例目。比較的頻繁に、かなりの歌手が選ばれるのだな、という実感です。

2月のライブストリーミング、次回は2月15日公演の「エレクトラ」です。

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